サキ視点 4話
毎日クタクタになるまで働いている。
もう何日・・いいえ何十日彼の声を聞いてないのだろう。
メールを送っても「送信先を確認してください・・」と送ることさえ出来ない。
意を決してかつての友人に連絡したところ
「母親が亡くなって、引っ越した。」
ということであった。
彼の家が母子家庭ということは知っている。そんなに裕福ではないことも・・
なぜ・・彼が一番辛いときに側にいることが出来なかったのだろう・・
私は何か間違えたのだろうか・・きっとそうであろう。
彼とは付き合うことができた。恋人になったのだ。それ以上望むものなどない。
しかし、私は彼との絆を信じられず・・より強くしようと芸能界に入った。
その結果彼を失ったのだ。
皮肉としかいいようがない。
それからは何も手につかなくなった。芝居も歌も・・そんな私の態度に、最初は事務所も寛大だった。
しかし、私に復帰の目処がたたないと知るや自宅待機を命ぜられた。解雇にしなかったのは会社の体面だろう。
そこから2年ほどは彼を探し回った。両親も私が芸能界を辞めた理由が分かったのか、彼を探すことには大反対で自由にお金を使えない私は、自分の足で探し回るしかなかった。
毎日探した。雨の日も雪の日も・・・しかし、そんな簡単に見つかるはずもなく、時間だけが過ぎていった。
ある日両親から
「お前の思いは分かった。一つ条件がある」
両親からの提案は一つだけ「芸能界の復帰すること」であった。
それさえすれば、ヒロアキの捜索は探偵を雇って探してくれる。
私はその条件を飲んだ。
約2年ぶりの復帰。
そんな私を温かく迎えるほど甘い世界ではない。
新しい力の台頭。
登龍門といえる役をこなし、その後不可解な行動から芸能界を去って行った私は
「プッツン女優」
と言われた。
仕事でのバラエティーしかり、たまにでるドラマでも濡れ場役・・・
しかし、歯を食いしばって頑張った。 両親との約束もそうだったが
私がメディアに出ることでヒロアキが見てくれるかもしれない。
そう信じて・・
しかし、私の精神は限界を迎えていた。仕事では愛想笑いを浮かべ、頭の緩いキャラを演じ、お笑い芸人にいじられ・・ドラマではヒロアキ以外の人間と体を密着させ、時には口付けを交わし、テレビに出るために「枕営業」も行った。
下品なスポンサーに体中を弄られて・・・
そんな中、私がクスリに手を出したのは至極当然だったと思う。
そのクスリの成果は素晴らしかった。 そのクスリを飲めば、ヒロアキに会えるのだ。
実際は腹の出た、変態スポンサー等だったが、私の目にはヒロアキが映る。
その時間だけ、偽りの相手の情交ではあったが至福の時間でもあった。
1日1回が気がつけば1時間に1回になり、収録中でも服用した。
どんどん言動がおかしくなっていった。
そしてある日、警察がきた。しかし、私にはヒロアキに見えたのである。私はその刑事に抱きつき涙ながらに「やっと帰って来てくれたんだね」と叫んだようだ・・
裁判は1日で終わった。常習とはいえ、単純な所持と服用だけである。
執行猶予がついたが、そのまま入院となった。
そして退院の日、迎えに来てくれたのは母親だけであった。
私の姿を見た母が「これからはゆっくりしましょう」と泣きながら言ってくれたのは嬉しかった。
家ではゆっくり過ごすことが出来た。
噂なんか熱しやすく冷めやすい。芸能人のクスリなんてたいして珍しくもなく、平穏に過ごすことができた。
家でゆっくり考える。
・・ヒロアキは何をしているのか・・
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退院して1ヶ月がたったある日、父親から1冊のファイルを渡された。
「お前も落ちついてきたから、これを見せても大丈夫だろう」
そこにはヒロアキの近況が書かれていた。
写真のヒロアキは、私が知っているヒロアキよりも大人っぽくなっていた。
報告書によると、高校を中退したヒロアキは住み込みで働きながら夜学を出て、現在は弁護士になっているとの事であった。
頑張り屋のヒロアキらしい・・・私は純粋にそう思ったが、次の一文をみて凍りついた
**年に***と結婚し、現在は一児の父である。
それに気づいたのか
「彼も結婚している。直ぐにとは言えないが、お前も気持ちを整理して・・・・」
父が何か言っているが聞こえない。
カレガケッコンシテイル・・ワタシイガイトノノコヲモウケテイル・・
それからは何も手につかない日々が続いた。 両親も気持ちを察してくれたのか何も言わない。
ある日、決意を決めた私は、ヒロアキが住んでいる家に向かった。
カバンの中に包丁を忍ばせて・・・・・
ころころ30でございます。・ある終わり・投稿させていただきました。
遅くなってしまい、もし「この作品の続きを待っていた方」が居ましたら、謝罪させていただきます。 (この後書きも正座しながら書いています。)
言い訳ですが、仕事のほうで色々ありPCに向かう暇がありませんでした。
これからは、少しづづですが更新していきたいと思います(何ヶ月も空けるということは絶対にしません。)
作品についてですが、長くなりましたので2回に分けます。(次で終わりです。)