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ヒロアキ視点 3話(終わり)

告別式が終わり、ある程度落ち着くと直ぐに「現実」という事実が目の前に迫ってきた。


まずは学校である。収入のない僕には学費は払えない。となれば当然に退学しなければならなくなる。


コウイチさんが「高校の学費だけは」と申し出てくれたが、そても断った。家も出なくてはならない。


家賃も払えないからだ。しかし、この問題は直ぐに片付いた。


住み込みでの仕事が見つかったからである。仕事は印刷業で、それまでバイトもしたことのない僕にとってはとてもきついものだった。


しかし社長は苦労人らしく、仕事には厳しかったが優しく接してくれ夜学にも通わしてくれた。


僕は自分の力で生きていきたっかたが「ばかやろう、高校くらい行っとかないと内でも使えねえんだよ。だから昼間は内を手伝って夜は学校に行け」と言ってくれたのである。その申し出は素直に受けた。


その後の人生は順調だった。夜間高校を卒業した後、奨学金を受けながら夜間大学も卒業し司法試験にも合格した。


印刷業の仕事は出来なくなったが、今では弁護士見習いとしてコウイチさんの側で働いている。


そして結婚もした。相手は社長の一人娘である。


年は一つ下だが、職場を手伝いながら少しづづ仲良くなり、司法試験のときには本当に世話になった。


彼女との結婚式の日、社長が「お前なんか拾わなけりゃ良かった」


と泣きながら言っていたが、きっと照れ隠しだろう・・



 それと・・サキとの関係だが、もう連絡はとっていない・・


結局あれから何回か連絡したが、繋がらなかった。


学校を退学する時、サキから連絡があり、近況を伝えようとしたが


「ヒロアキ。やっとチャンスが巡ってきたよ」


現場からの電話であろうか、周囲が騒がしい。


「今回の役がうまく出来れば、先が開けるよ・・」


等と言っていたが、後半の方は雑音で聞こえなかった。僕は


母さんがなくなったこと。学校を辞めること。家を出ること。携帯も解約すること。


等を伝えたが


「あっごめん。もう戻らないと。ヒロアキの言いたいことは分かったから・・・」


と言って電話が切れた。


 全て終わった、と思った。


元からつりあわない存在。ましてこれから芸能界で進んでいく彼女に僕なんかは必要ない。


僕は勝手に諦めた。



・・・・


その後のサキの活躍は目覚しかった。ドラマの主役を演じきった彼女は、一躍時の人となりテレビに出ない日はないほどであった。


しかし、しばらくして彼女は消えた。テレビに出なくなったのである。テレビだけではなく他のメディアにも・・・


いくら有名とはいえ、いつまでも出てこない彼女を待つほど芸能界は甘くなかった。


それから二年ほどして何度かテレビには出ていたが、かつてのオーラは感じられなかった。


そんな中、彼女は逮捕されたのである。原因はクスリであった。この時ばかりは「かつての大物アイドルが・・」


と芸能ニュースを賑わしたが、それも直ぐに消えた。



その後も順調な人生であった。子供も生まれ妻にも文句はない。


そんなある日・・・


「ここで臨時ニュースです。かつてのアイドル風間サキさんが飛降り自殺をしました。場所は・・・」


場所は僕たちが通っていた学校であった。


「サキさんといえば突然失踪したり、クスリによる逮捕等話題性には欠かなかった人ですが。ここ数年は・・・」


一体彼女に何があったのだろう。自分の夢を叶え、幸せだった彼女に・・・彼女の周りには支えてくれる人がいなかったのか・・


自分が勝手に諦めたのが悪かったのか・・・いつの間にか僕は泣いていた・・・


「あら、この人死んじゃったんだ。昔ファンだったのになーって何泣いてるのよ。あなたもファンだったの」


妻は知らない。昔僕たちが付き合っていたなんて・・・言っても信じないだろう。


彼女は幸せではなかったのか?彼女の夢が破れたとき、支えられる存在として僕は残るべきだったのか?それは分からない。


でも僕は今の幸せを手放せない。だから・・


「そうだよ。夜学行きながら曲とか聞いていたんだ。」


と答えるしか出来なかった。

 ヒロアキ視点。終了です。次はサキ視点です。

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