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プロローグ

 時は現代、場は地球、しかし中身は異なる世界。

 この世界ではとあるコンテンツ古来より市井の者たちの娯楽として人気を博していた。

 そのコンテンツとはダンジョン探索配信。原理は不明であるが世界のどこかにあるダンジョン――アビスホールを探索している姿を時に新聞、時にテレビ、時にインターネットの動画サイトといった様々な媒体で発信し、ダンジョン探索の手に汗握る様子は人々を熱狂の渦に巻き込んでいた。

 また、ダンジョンから持ち帰られた様々な物質はこの世界の発展にも大きく寄与し、その利権を巡り世界各国が血眼になってダンジョン――アビスホールの場所の特定しようとするも、発見はおろかその痕跡すら見つけることが出来ずにいた……

 故にダンジョン探索者の数イコールその国の国力とまで言われるほどダンジョン探索者は貴重な人材で人々から羨望の眼差しを受ける憧れの職業となっていた。が、しかし、今作の主人公虎穴探(コケツサグル)は少々他の者たちとは異なる価値観を有していた。

 勿論、探自身、ダンジョン探索の有益性やダンジョン探索者の破格な年収を理解している。しかしダンジョン探索には常に命の危険がついて回る。当たり前のことではあるが命とは一人一つしかないかけがえのないものである。それ故に探は命を賭けて莫大な利益を得る探索者という人種が理解出来なかった。


「だから探、お前もダンジョン探索者募集フォームに登録しようぜ!!」

「だから俺は遠慮するって言ってるだろ」

「何でだよ、このチャンスを逃したら次の機会はいつ来るか分からないんだぜ」


 探は今、自身の通う学校の教室で友人である加藤と共に将来のことについて話していた。


「だから俺は将来公務員になって細く長くをモットーに生きて行くんだよ。ダンジョン探索者なんてそれとは真逆の生き方じゃねーか」

「なんだよそれ、ツマンネーな」


 加藤は自身の価値観とは真逆の価値観を持つ探に容赦の無い言葉を放つ。


「つまんなくて結構だ」


 しかし、そんな加藤の言葉など、探にとっては慣れたもの。いつものように無感情に切り返してみせる。


「でもお前スマホにダンジョン探索配信専用のアプリ入れてんじゃん」

「それはそれ、これはこれ、ダンジョン探索を見て楽しむ分には問題ねーんだよ」

「なんだよそれ……って隙あり!!」


 加藤は探の持っていたスマートフォンを奪って何やら操作し始める。


「ちょ!お前何やってんだよ!!」


 スマートフォンを奪われた探は、スマートフォンを取り戻そうとするが、加藤は探のスマートフォンを操作しながら探の手をヒラリヒラリと見事に躱す。


「おいおい探君、今時スマホのロックをもかけてないなんてあり得ないよ」

「うるせぇいいから早く返せ!」

「ちょっと待てって、ここをこーして……ほい、完了!!」


 加藤がそう言うと同時、探はようやく自身のスマートフォンを取り返し、画面を見る。すると


「おい!何勝手にダンジョン探索者の募集フォームに応募してんだよ!!」

「そんなに怒んなよ、どうせ当選なんかしやしないって」

「万が一ってことがあるだろうが――もういい!!帰る!!」

「あ、おい!探!!」


 探がカバンを肩にかけ、怒りをあらわにしながら教室を出たその時であった。探のスマートフォンから聞き覚えのない通知音が鳴り響く。


「おい、まさか」


 探の脳裏に嫌な予感がよぎり、恐る恐る自身のスマートフォンの画面を確認すると、


『おめでとうございます。この度貴方は栄誉あるダンジョン探索者に選ばれました』


と表示されていた。


「何でだよ!!いくらなんでもタイミングが良すぎるだろうが!!」


と探は再び怒りをあらわにする。


「――クソ!!加藤のやつに一言言ってやらねぇと気が済まねぇ」


 探はそう言うと教室へ戻るため振り返り、再び歩みだす。がそんな時間は探に残されてはいなかった。


「お、おい」


 探の足元に魔方陣が浮かび上がり、


「まさか――」


 次の瞬間、探は学校の廊下からいなくなっていた。

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