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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

ある病弱少女が鬼と契約して小説を書き殴る話

作者: のんちゃ
掲載日:2024/10/05

時は大正。幸薄病弱少女と女鬼が出逢う。

しかし。少女は……物書き、だったのだ。

時代モノ、というか、ほんのり怪奇モノ風味。僅かばかりのガールズラブ?いや無いかな?

時は大正。


やんごとなき家の、広い、お屋敷。

淑やかな笑い声がするお屋敷から、か細い渡り廊下を通じた、離れ。



その、離れに。

ひとりきりの少女が、横たわっていた。



少女の印象は。ひとことで言えば、色白い。



長い黒髪は真っ直ぐ伸びているが、手入れをすることもなく、ぱさりと乾いている。



色白なのは、碌にここ、離れから出ないから。

色白というよりも、青白い。唇も赤みがなく白く。


生活には困らないし、放って置かれているが。ずっと、部屋で寝込んでいて。碌に動けない。


そんな彼女に。

近ごろ。少女雑誌への投稿で、「書く喜び」を見つけた。



そんな、ある夜のこと。満月の遠い、夜だった。


女の鬼が、やってきた。



ひとりでに開いた、襖から。ふっと入ってきた、黒い影。


少女に比べれば、その姿は、陰の気の色艶を纏った、大人の女だ。その、女鬼を。



……ひと目見て、ぞくっとした。

艶のある黒髪。真っ白い木綿の布を姉さん被りして隠し。

こめかみの上あたりから、両側それぞれ、2本の白い角。

しっとりとした、濃い紫の着物。

唇に、赤い紅。ぱちりと開く目は、見る者を惹きつける、妖艶な笑み。




「………あんた」

女鬼が、その、紅の唇を開く。



「あんたの、寿命。……このままだと。あと、4、5年だよ?」



か細い声で、少女が答える。

「………そう、なの?」


「……ええ」




布団に寝たままの少女の顔を覗き込み。女鬼が言う。


「そうねえ。あんたが一番大切にしてる、もの。そうねぇ……。そうだ。

書く、喜び。

…それと引き換えなら、長寿にしてやるよ」



微笑んでいた唇は、にいっと。

大きく歪んで、笑って。








「え、いらない」


「え」




結構、すっぱり、はっきり。

妖しい世界に引っ張り込まれそうな気配は、あっさり霧散した。



女鬼が少女に突っ込みだす。

心なしか、さっきより少女の声に、張りが出てきた。



「なんでよ。長寿、要らないの?」

「書く楽しみのないまま、生きる長寿なんて、要らないわ」

「はあ、」

「書くことは、今の私の、生きる意味なの。寧ろ……」



儚く脆い人形のようだった少女が、何かに抗うように、起き上がる。



「寧ろ、長寿の寿命と引き換えに、4〜5年、思う存分、書かせて」



青白い顔の、少女のその、目だけは。

……その目だけは、ぎらぎらと輝いて。




「それなら、鬼にでも何でも、この魂、くれてやる」



少女は、女鬼に言い切った。








眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をして女鬼が問う。

「…いいのかい?」


目を細めた女鬼に。少女が捲し立てた。



「だって。家族なんて、親なんて。同じ敷地にいながら、もう7年も会ってない。

そりゃ、最初は。褒められたい、とか、ありましたよ。これだけやって、認めてもらいたい、とか。甘えたい、とか。

でも。もう、7年も経つと。

もういっそ。このままずっと、構わないでくれ、その方が、邪魔されなくていいやーって感じで」



「…はあ」



「昔こそ、可愛がってくれた、ばあやとかいたけど!死んじゃったし!

後は、ころころ変わる御用聞きくらいで!

どうせ、関わる親しい人なんて、いないから!!」




力が出ないなりの体で。何処から出てくるんだそんな言葉という勢いで、散々、言い連ねた少女は。腹の底から湧き出でる声で、言い放つ。



「………私は!物語が!書きたいの!!!」








結局、約束は相なったようで。



幾つかの夜が巡ると。




ぎらぎらとした目で、ひたすらに書き殴る少女の姿があった。



「いいっ!すっごくいい!!さいっこう!!」



てっきり色気のある叫びかと思いきや、何のことはない。原稿用紙に、筆先を走らせている、ただ、それだけの事である。



「ああ、書きたい言葉が、台詞が、物語が!!次々と降ってくるっ!!この感じ!たまらないっ!!!」



いっそ、気持ちがいいくらい、勢いよく書き殴っている。



「書く手が追いつかないっ!でも、たっのしい!!筆先が紙を駆ける、この感じっ!

ああ、焦ったい!この頭から、話が溢れてしまう前に、書き写したいのにっ!!速さが!紙が!足りないっ!!!」




で。資料集めやら、原稿用紙が足りなくなって買いに走るやら、使いっ走りさせられる、女鬼。



「……まったく、鬼使い荒いわ。どっちが鬼なんだか」

はははと笑い。



……本当に死ぬのかな、こいつ。



あまりにも活き活きとした勢いに。呆れてため息を吐きつつ、それでも、楽しそうに眺める女鬼。





……こんなに輝きを放つ、魂は。


女鬼の紅い唇の端が、にい。と上がる。




……さぞや、美味しいのだろうねぇ。

小説になろう、初投稿です。

読んでいただき、ありがとうございました!

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