6話 報告
僕がこの世界に来た翌朝、騎士団の詰所から僕とソフィアちゃんが乗った馬車が出た。(馬と言ってもあの角の生えた変な生き物だけれど。)
「ソフィアちゃん、これから行く街はどんなところなの?」
「あぁ、ハイドレンジアは我がレイニア領で二番目に大きな街で、優秀な傭兵多く輩出している傭兵の街だ。
それも理由があってな、あの辺りには瘴気の発生源が多くあって、その分傭兵が必要になったのだ。」
はえー。この世界で初めて会ったアイザックとルーナもそこの人だろうか?
「そうだろうな。例の小屋は位置的にはハイドレンジアよりもパドルの方が近いが、我々の到着が遅れたのは、ハイドレンジアの傭兵の仕事が早いからだろう。」
そう言ってソフィアちゃんはレイニアの領民を誇らしげに語るが、自分の騎士団の仕事が遅いのは良いのだろうか、、。
「遅いとは心外だ!王国騎士団が出動するのは手続が必要なのだ。
それでもあの速度で到着したのだ。我々レイニア伯爵領管轄隊も十分優秀と言えよう。」
そうなのか。軽率な発言だったな。
「悪い。ソフィアちゃん。撤回するよ。」
「うむ!分かれば良いのだ。」
爽やかだなぁ。
そんな話をしながら、馬車で街道を進んでゆく。
昨日ソフィアちゃんの後ろに乗った馬とは種類が違うらしく、あの馬よりずっと歩みが遅い。長い旅になりそうだ。
ヨト遺跡には何があるのだろう。
ーーーー
「あぁあーん?異世界人を騎士団に取られたぁ?」
「「ひいぃ!」」
俺とルーナは2人してマヌケな声を出す。
「ボスぅ、聞いてくれよ。マク、マク、マクなんとかが関わっててェ、それでぇ、」
「ルーナ。説明してくれ。」
ボスが俺の話を聞いてくれねぇ!ルーナ、頼んだぞ。
お前の説明次第で今後の報酬が変わる。
「アイザックがバカですみません。」
「あぁ?誰がバカだ?コラァ!」
「開かずの小屋の大規模魔術調査の依頼を受けてから、私の飛行魔術で直行しました。」
コイツ!無視しやがった!
「アイザック!うるせぇ。で、ルーナ。それで?」
「はい、そこで異世界人を発見しました。あの黒髪と特徴的な服、間違いなく異世界人でした。」
「異世界人の固有魔術は分かるか?」
「詳しいことは分かりませんが、どうやっても傷一つ付かなかった開かずの小屋に大穴を開けた威力を見ると、未知の破壊力です。」
「騎士団に取られた理由は?」
「はい、マクドリマチが現れました。」
「はぁ、それは仕方ない。神出鬼没の魔女か。厄介な奴が関わってやがる。」
はっ!チャンスだ!ここで仕方ないことをアピールして、報酬を!
「そうだ!ボスぅ!仕方なかったんだ。気づいたら騎士団はヨロイザを連れて遠くに行っちまっててよぉ。」
「アイザック!私が説明するって!
私たちはマクドリマチに何らか魔術を使われて、しばらく意識を失っていました。その間に、騎士団に取られました。」
「そうか、災難だったな。アイザック、安心しろ。
報酬は予定の二割払おう。」
「はぁ!?二割かよぉ。仕方なかったんだこら、半分くらいはくれよぉ。」
これじゃルーナが頑張って無理して二人分飛んだのが無駄じゃねえか。
「アイザック!元の値段は異世界人を連れて来れたらでしょ?
連れて来れなかったのに二割もくれんだからありがたいじゃない!
すみませんボス。相方がバカで。」
「俺はバカじゃねえ!」
ルーナの奴、今日はたくさんバカって言いやがる。
「ルーナ。お前楽しそうだな。」
あ?ボス何言ってやがる?バカな奴と組まされるルーナが何で楽しそうなんだ?
「ええ。楽しいですよ。」
「はぁー、仕方ねぇ、異世界人には異世界人だ。」
「はっ!まさか、勇者コウタロウを?」
コウタロウ?俺あいつ嫌いなんだよな。かっこよくて、強くて、優しくて。
あいつがいると、ルーナがあいつに取られちまう気がしてモヤモヤすんだよ。
「そうだルーナ。もうすぐコウタロウが帰ってくる。
お前らはコウタロウと組んで例の異世界人を追ってもらう。」
うげえ。コウタロウといっしょに仕事するのか。
「アイザック!嫌そうな顔しない!異世界人を傭兵団に入れられたら報酬がたんまり貰えるんだから!」
「おう、ルーナ。お前は俺の相棒だよな?」
「は?何よ急に。そうだけど。」
うん。きっと大丈夫だ。コウタロウはいい奴だし、ヨロイザもきっと俺たちの傭兵団に入ってくれる。