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4話 親愛

「やられたぁーーー!」

「アイザック!うるさい!」

「何が起きた!ヨロイザが消えた!きっと騎士団に持って行かれたんだ。追うぞルーナ!」

「バカ!騎士団に調教された馬に走って追いつけるわけないでしょ?」

「ルーナなら飛んで追いつけるだろ?」

「バカ!飛ぶのにも魔力が必要だし、飛んで疲弊した状態で騎士複数人と戦えるわけないでしょう!バカ!」

「バカって言い過ぎだろ!」

「バカにバカって言って何が悪いのよ!バカ!バカアイザック!」

「んだと?コラァ、、、あーー。いや、落ち着こう。悪いルーナ。確かに俺は考えるのが苦手だ。今から何をすれば良い?」

「うん。ごめんアイザック。とりあえず。引き上げるわよ。ボスに失敗の報告をする。」

「うえーー。どやされる。やだなぁ。」

「しょーがないでしょ。マクドリマチが関わってたんだから。」


ーーーー


 一時間ほど馬で移動すると、壁に囲まれた大きな街が見えてきた。

「美しい街でしょう。あれが、レイニア中央都市パドルです。」

 門をくぐると、活気のある街並みの奥に、大きな庭付きの屋敷がある。

「あの屋敷が私の家です。今日は裏口の王国騎士団の詰所から入ります。」

 そう言われて、煌びやかな屋敷にそぐわない無骨な建物の中の応接室のような部屋に案内された。

 ソフィアさんは頭を覆う仮面を脱いで、僕に腰掛けるよう促した。

 すごい。小屋で仮面を脱いだ時は混乱していて分からなかったけれど、かなり顔が整っている。

 ちょっとドキドキする。いやいや。僕には間久鳥先輩がいるじゃないか。

 間久鳥先輩に比べたらこんなの道端の石ころだ。比べるまでもない。

 ともかく。ソフィアさんは話し始めた。

「では、まずは私のことを話しましょう。」


「改めまして、私はソフィア・ドラゴ・レイニアと申します。

 レイニア伯爵家の次女であり、グランルイジュ王国騎士団レイニア伯爵領管轄隊隊長です。

 しかし、これからユウスケ殿と共にヨト遺跡に向かいますので、隊長の座は一時的に副隊長であるハリソンに任せることになるでしょう。

 マチ様からの恩義に関しても話さなければなりません。

 当時私が12才だったころ、災害と等しい龍が我らが領地を襲った際、マチ様が私に力を与えてくださいました。

 私はマチ様から、一時的に自身の思考速度、身体能力、身体速度を格段に上げる魔術を賜りました。


「こんなところでしょうか。では、次にユウスケ殿のことをお聞かせ願います。」

 そう促されて、僕は僕のことを話す。

「はい。僕は鎧坂雄介といいます。

 ええと。一般家庭の鎧坂家の長男です。

 間久鳥先輩、、あなたの言う真千様と同じ世界から来ました。

 間久鳥先輩は同じ吹奏楽部の部長で、僕は副隊長でした。

 はい?あぁ、吹奏楽部とは管楽器と打楽器を扱う楽団のようなコミュニティです。

 気付いたらこの世界のあの小屋にいました。

 まだ何かは分からないのですが、僕はこの世界でやるべきことがあります。

 間久鳥先輩から託された使命です。

 僕には破壊光線を打つ力があるはずです。間久鳥先輩からその力を使いこなすように言われています。」

 そこまで話したところで、部屋の隅に異常が発生した。

 バチバチと大きな音と光を放つ人影が現れた。

「間久鳥先輩?!間久鳥先輩ですよね?!」

「なに?!その光がマチ様だと言うのですか?!」

 あの小屋で見た光と全く同じ光が収まると、制服を着た間久鳥先輩が現れた。

「何?!ドクター?!どこここ?え?あれー?鎧坂?鎧坂だー!」

 かわいい。やったー!間久鳥先輩に会えたー!

「マチ様!お久しぶりです。」

 ソフィアさんが心底嬉しそうに駆け寄る。

「うぇ?!えっと、どちら様ですかー?」

 そんな間久鳥先輩の反応にソフィアさんは愕然とする。

「そんなぁ!私です!ソフィアです!災害龍リヴェフォースを打ち倒す際、加速の魔術を賜ったソフィア・レイニアです!」

「えぇーと?りゔぇ?ごめんなさい。わかんないです。」

「そんなあぁっ!あぁ、我が創造主よ!何てことだぁ!」

 ソフィアさんが白目を剥いて膝から頽れた。何この人。こわぁ。

「ええぇー?!ごめんなさいー!大丈夫ですかー?鎧坂ーどうしようー!」

そうだ!間久鳥に好きだと言ったことが伝わったか聞かなくては!そして返事を聞かなくては!

「間久鳥先輩。そんなことよりも、」

「そんなこと?!気絶してるよ?!」

「はい!そんなことよりも、あの時の返事を聞かせてください!」

 やばい。勢いで聞いたけど、ドキドキしてきた。

「ええーっと?あの時ってどの時ー?」

「あの小屋で別れ際に聞いたことです!」

「んんー?ごめんー、わかんないや。」

 、、、どうやら聞こえなかったらしい。恥ずかしい。

「いえ、、、分からないならいいんです。」

 僕はガクンと項垂れる。顔が熱い。情け無い。もう一度好きだと言えばいいだけのに。

「なにー?そう言われると気になるよー?」

 間久鳥先輩が明るい声色で聞いてくる。かわいい。くそぅ。声が出ない!

「マチ様ァ!」

 うわぁ!びっくりした!ソフィアさんが勢いよく起き上がった。

「マチ様ァ!このソフィアァ!マチ様に忘れられようと、マチ様から受けた恩!一生涯忘れません!」

「んんー?ありがとう?」

 間久鳥先輩が困惑して受け入れる。

 なんて度量のある人だ。懐が深い。かっこいい。かわいい。

 そんなやりとりをしていると、間久鳥先輩の身体が光り始める。

「うわぁ!また光ったー。戻るのかなー?」

 あぁ!間久鳥先輩が行ってしまう。もう一度好きだと伝えなければ!

「間久鳥せんp」

「マチ様ァ!お慕いしておりますァ!」

 ソフィアさんが猛々しく叫ぶ。先を越されてしまった。なんだこいつ。

「ありがとうねー?ソフィアさーん。鎧坂ー。またねー。」

 手を振りながら強い光と共に間久鳥先輩が消えてしまった。

「行ってしまわれた。」

 行ってしまわれた。じゃねーよ。おいソフィアちゃん。お前のせいで間久鳥先輩に好きだっていい損ねたじゃねーか。

「ユウスケ殿。」

「んだよ。ソフィアちゃん」

「はい?ソフィア、ちゃん?」

 やべ。

「すいません!はい!なんでしょうか!ソフィアさん!」

 なんてことだ。心の中で毒を吐いたことがバレてしまう。

「ソフィアちゃんでいいですよ。ヨト遺跡まで、これから長い道のりになります。お互い気を張るのも良くないでしょう。

 私もユウスケくんと呼ばせて頂いてもよろしですか?いや、よろしいかな?」

 急に距離を詰めてきた。まぁ、間久鳥先輩を愛する同士だ。仲良くやっていきたい。

「はい、ではソフィアちゃん。これからよろしく。」

 そう言って僕は右手を差し出す。

「おぉ!握手だな?マチ様と交わしたことがある!親愛と信頼の証である、マチ様の世界の挨拶だろう!」

 ソフィアちゃんはそう言って僕手をガッと掴んだ。その後アメリカンコメディよろしくガッガと手を組み換え、拳を複雑にぶつけた。

 間久鳥先輩、、何を教えてるんだ。

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