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3話 騎士

4月8日

「あれ、間久鳥先輩まだ来てないの?いつも1番に朝練来るのに。」

「な。風邪かな?」

「副部長〜代わりに仕切れよ〜」

「うるさ。、、はい!みんなー注目ー!未経験の一年もいるから、パートごとに基本から教えたげてー!余った子は自主練でーー、、、」

 この日以降、間久鳥先輩は学校に来ていない。

 行方不明だそうだ。親御さんは警察に失踪届を出したらしい。

 僕に何が出来るだろうか。

 僕はショックで、先輩を探すために学校を休みたくなるが、先輩から任された吹奏楽部副部長の役職を、部長と言う形で果たさなければならないと、変なところで責任感を持っていた。

 先輩が大切にしていたコミュニティである、吹奏楽部を僕が守りたかった。

 これも、またいつか先輩に会えた時にカッコつけたかったからだろう。自分のためだ。カッコ悪い。

 これも言い訳で、毎日朝から学校に行くと言う日常を崩したくなかっただけかもしれない。

 先輩に会いたい。情けない。


ーーーー


「鎧坂。何がなんだかわからないと思うけど、説明してあげる。ここは地球じゃないの。」

「間久鳥先輩?!」

 思わぬ再会に僕は涙目で驚く。

「誰だお前!ヨロイザの知り合いか?!」

 アイザックが剣を構えて凄む。

「あなた何者?ヨロイザは私たちと話しているのだけど?」

 ルーナも杖を構えて臨戦体制だ。

 なぜ二人はこんなに緊迫しているんだ?怖くなってきた。

 そんな二人に間久鳥先輩が手をかざした。

【止まれ 】

 間久鳥先輩が変な発音でそう言うと、アイザックとルーナが石になったように動きが止まった。

 よく見ると身につけている服は動いている。二人の身体だけが止まったように見える。

「先輩?!二人に何をしたんですか?!」

「鎧坂と二人だけで話したかったから、ちょっと静かにしてもらうだけー。大丈夫だよー。」

 いつもの間久鳥先輩の口調に戻った。一気に緊迫感が無くなるな。やばい。先輩がいる。うれしい。

 「あんまり時間が無いから手短に言うね。一気に言うから覚えてね。」

 真剣な口調に戻ってしまった。寂しい。


「ここは鎧坂の知っている世界とは違う世界で、異世界なんだよ。

 鎧坂はこの世界でやるべき事がある。

 ごめんだけど、元の世界に帰る方法はわからない。

 鎧坂には特別な力が備わってる。この小屋の入り口を吹き飛ばしたビームがそれだよ。

 鎧坂にはこの力を使いこなしてもらうからね。

 それで、この後紺色の鎧を着た騎士団がここに来る。

 そしたらその騎士団について行って。

 そこで停止してる二人は信用できない。

 騎士団の中のソフィアちゃんって言う紫の眼の女の子は信用できる。

 鎧坂はそのソフィアちゃんと一緒にこのグランルイジュ王国北端にある、ヨト遺跡に向かって。」


「ごめんねー。ここまでみたい。ルーナとアイザックはしばらく止まったままだから大丈夫だよー。それじゃ!またねー。」

 行ってしまう。ずっと会いたかった間久鳥先輩が。もう会えないと思っていた間久鳥先輩が。

「待って先輩!」

「ん?どしたー?」

 間久鳥先輩の身体がバチバチと光って薄くなっていく。

「ずっと好きでした!」

 そう言うと同時に間久鳥先輩は消えた。伝わっただろうか。

 気づけば統率の取れた馬の足音がバカラバカラと聞こえてきた。きっと間久鳥先輩の言っていた騎士団だろう。

 臨戦体制で固まっているルーナとアイザックに目をやる。

 この二人は信用できないと間久鳥先輩は言った。アイザックはバカだけどいい奴だし、ルーナはしっかり者で、二人とも悪い奴じゃ無さそうなのに。

 しかし先輩が信用できないと言うなら信用できないのだろう。紺色の騎士団のソフィアちゃんについて行こう。

 そんな事を考えていると、紺色の派手な鎧を身につけた騎士団がやってきた。

 6人の騎士が二本の小さな角の生えた見た事ない生き物に乗ってやってきた。

 先頭にいる騎士が生き物から降りて、鉄仮面を持ち上げて顔を見せた。

 紫色の眼をしている。きっとこの人がソフィアちゃんなのだろうが、ソフィアちゃんと言うよりソフィアさんと言った感じだ。

「ヨロイザカユウスケ殿ですね?グランルイジュ王国騎士団レイニア伯爵領管轄隊、隊長のソフィア・ドラゴ・レイニアと申します。

 あなたの事はマチ様から申しつかっております。

 マチ様からはどれ程話を聞いていますか?」

 硬い口調でソフィアさんは問いかける。

「ええと、間久鳥先輩からは、あなたと共にグランルイジュ北端にあるヨト遺跡?に向かえと。それとそこで固まっている二人は信用できないと言われました。」

「そうですか、、、あの人も無理を仰る。」

 ソフィアさんはどこか嬉しそうに呟く。

「そこの二人は見たところ自由傭兵でしょうか。マチ様が信用できないと仰るならそうなのでしょう。

 詳しい話は一度私の屋敷に戻ってから話しましょう。ユウスケ殿、馬には乗れますか?」

「馬?これが?」

 この二本角の動物のことだろうか?僕の知ってる馬とは似ても似つかない。

「その様子だと乗った事はなさそうですね。私の後ろに乗ってください。」

 ソフィアさんがそう言うと、ずっと黙っていた騎士たちの中で、一番背の高い騎士が割って入ってきた。

「隊長。初対面の相手を後ろに乗せると言うのは流石に貴族令嬢のする事では無いのでは?」

「ハリソン。構わない。今の私は騎士だ。それにユウスケ殿の事は我らの恩人であるマチ様から任されている。」

「、、、出過ぎた真似を。申し訳ありません。」

 ハリソンと呼ばれた背の高い騎士は少し不服そうに引き下がった。

 マチ様が恩人?ソフィアさんは間久鳥先輩に助けられたのだろうか?

「では行きましょう。ユウスケ殿、後ろに乗ってください。しっかり捕まっていてくださいね。」

 ソフィアに引っ張り上げてもらい、馬とされる生き物に乗せてもらった。

 馬が走り出すと、遠い背後から「やられたー!」と言うアイザックの大声が聞こえた。馬速い。

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