3話:優しい先生とアツアツの魔力
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次の日、カーテンの間からさす光で目が覚めた。
昨日は楽しみすぎて全然寝れなかった… なんてことはなく、普通にぐっすり眠れました。
今日の午後からうちに尋ねてくるらしい。
先生が来たらウィンベリー家がどれくらい世間に認知されてるのか聞いてみないとな…
よし! 先生が来る前にこの部屋を片付けておこう!
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ふう、結構ちゃんと片付いたな。というかこの部屋、おもちゃ、クローゼット、ベッド、そして小さな机しかないな… 勉強ができるような机、無くない? ということは、授業を受けるのはこの部屋ではないということかな?
僕が部屋を片づけた意味がなくなったな。
… まぁ…… 前から片づけようと思ってたし。別にいいよね。
はぁ、ちゃんと考えて物事を進めないとな。
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そろそろ12時を回る。というか、今思ったけどこの世界でも1日は24時間なんだな。
1週間は7日。1年は……わからない。
前世の記憶がある僕にはやりやすいことこの上ないから、すごくありがたいけど。
そろそろ先生が来る時間だ。先生は母さんとフィーナと迎えに行くことになっている。
変な先生だと心配だからってことらしいけど、心配しすぎだよね。
「ロール様、奥様、先生が来られたようですよ」
フィーナが来たことを知らせてくれた。
「ありがとう、フィーナ。じゃあ、ロール、出ましょう。」
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二人とともに玄関先に向かうと、そこには長身のシュッとしたタイプのイケメンがたっていた。
… すっげーイケメンだなぁ。こんな人が家庭教師になるなんて恐縮だ…
「こんにちは、ノエル先生。ようこそおいでくださいました。今回は私の息子に基本的な学問を教えていただくために連絡させていただきました。」
普段の母さんはもっと、こう、へにゃってしてるからシャキッとした母さんを見るのは初めてだ。
先生は優しそうな高身長イケメン。なぜか悔しいけどもてるだろうな、この先生。
「あぁ、お気遣いありがとうございます。ウィンベリー家の家庭教師なんて私の身に余る栄光ですよ。都立クラウトゥン魔法学校から来ました、准教授のノエルと申します。仕事内容については、こちらで把握しております。今日から1週間のうち3日の授業を受けていただきます。そちらが、ローレンス君? かわいらしいお子さんですね。」
急に名前を呼ばれて少しびっくりしちゃったけど、僕が照れて隠れる意味ないよな…
あと、フィーナ、母さん、かわいらしい息子って言われて、照れるのやめてくれないかな?
「どうもローレンスです。よろしくお願いします、先生。」
ペコっと挨拶をする。
「礼儀正しい子ですね。このくらいの年齢の子はよく家庭教師の仕事で接する機会があるのですが、ここまで落ち着いてる子はなかなかいませんよ?」
そうでしょう、そうでしょう。随分と大人でしょう。そりゃあ転生者ですから。
「それでは、先生。こちらの部屋でお願いします。」
フィーナが部屋に案内する。大きめの机と2つの椅子、そして小さな本棚がある落ち着いた部屋だった。
「ええ、それでは、精一杯頑張らせていただきます。」
部屋に2人きりになった。最初の授業は何をするんだろう。というか、この人、魔法学校の先生とか言ってたくない? もしそうなら超ラッキーなんだけど。
「改めて自己紹介しましょうか。ローレンス君だよね。私は都立クラウトゥン魔法学校准教授の、ノエルです。これから長い付き合いになると思いますが、よろしくお願いします。」
「ローレンス・ウィンベリーです。ほとんど何も知らないのでよろしくお願いします。」
すると、先生は少し驚いた表情をした後、にこっと笑った。
「ええ、きちんと1から教えていきますね。早速授業に入りたいのですが、まずテストをさせていただきます。」
テスト? マジか。この世界のことにも、魔法のことも全く知らないんだけど。やばいな。
「フフッ、そんな顔をしなくても大丈夫ですよ。テストといっても簡単なものです。肩の力を抜いて受けてください。」
まぁ自信ないけど頑張るか。多分、全くできなくても怒られないだろうし。
「わかりました。頑張ります。」
そうして渡されたものは、子供だましともいえるようなテストだった。
『スライムが10ぴきいました。 スライムは5ひきあつまると、1つになって大きくなります。さてなんびきの大きいスライムがいますか』
なんというか… なめられてるよな。こんなん誰でもわかるわ!簡単すぎてちょっとフリーズしたけど、すらすらと解いていく。この世界での文字は書けないと思っていたけど、『僕』の魂が入る前の僕が練習していたんだろうな。ありがたいことだ。
よし、終わった。まあまず間違えることはないだろう。
「先生、終わりました。」
見直しをきちんと終わらせた答案を先生に渡す。
「! あぁ、ありがとう。早いね。じゃあもう採点するから待っててね。」
さっきは見ていなかった部屋にある本棚をのぞいてみた。いろんな学問の入門編があるね。
この後何冊か部屋に持ち帰って寝る前に読んでみよう。
「終わったよ。すごいね! 満点だ! 君より年上で全く解けないような子もいたんだけどね。自分で勉強してたのかな? 」
まずいな。正直みんなこれぐらいできると思っていたんだけど… よくよく考えると、保育園児が割り算を解くなんてびっくりするだろうな… じゃあここはうまい返しをしないと。
「うん。パパとママがお店をしてるから、真似で勉強したの。」
フフン、とっさの返しでは結構いい返しだったんではないだろうか。
「そうなんだ、すごいね。基本的な科目の入門編はもうできてるけど、何が勉強したいとかあるかな?」
きた! 今僕が勉強したいのは、この世界の情勢と、魔法。これを科目に直すと…
「歴史と、魔法です。」
魔法学校の先生から魔法を学べるなんてめったにない機会だからね。
「なるほど~ でも、いきなり魔法の練習は難しいから、歴史から勉強しようか。」
うむむ。魔法の練習は今すぐにはできないのか。
「じゃあ、魔法の勉強のために何か準備することはありますか。」
ただこのまま引き下がるわけにはいかない。いまから準備をしとかないと。
「そうですね、今日は歴史の授業をするには時間がないし… じゃあ、ローレンス君。魔力ってわかりますか?」
なるほど。魔法があるならそれの源になる魔力か何かがあると思っていたけど本当にあるんだな。でも、その本質についてはよくわからないな。
「ごめんなさい。わかりません」
「大丈夫ですよ。じゃあちょっと目を閉じてください。今から魔力を感じてもらいます」
教えてくれるんですか!やったー!じゃあ、目を閉じて…
「よし、いいですね。次に、息を大きく吸いこみます」
なるほど、息を大きく吸う。
「そしたら、おなかのあたりに温かいものができるでしょう? それが魔力ですよ」
おなかの…あたりに……温かいもの………あった! でもだんだん熱くなって…
「熱い!」
とっさに目を開けると、おなかのあたりで感じられていた魔力が霧散した。
「フフ、それは力を入れすぎですね。もうちょっと力を抜いてするといいと思いますよ。ちなみに、その温かいものを自分のイメージに混ぜると魔法となります。」
そういうと先生は机の上のろうそくに指で火をともした。
「さっき教えた動作を繰り返すと、魔力の量が増えていきます。この練習によって魔力に触れる機会を増やすことで魔力の扱いにも長けてきますし、魔力の量も微量ずつですが増えていきます。もちろん、限界はありますがね」
じゃあこれから毎晩この練習をしよう! 強さに直結するトレーニングなんてサイコー!
「ありがとうございます、先生!」
「いいえ、大丈夫ですよ。じゃあ次の授業は歴史の授業にしましょう。練習もほどほどにしておきましょうね。」
そういうと、先生は母さんたちに挨拶して帰っていった。いい話を聞いた。まだ魔法は使えないけど、基本的なトレーニングなら始められる! がんばろう!
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その日の夜、たった1回のトレーニングで疲れ切り、すぐに眠ってしまったのはまた別のお話。
書くのが楽しくてどうしても1話が長くなりがちなんですよねぇ…






