プロローグ①
どうもこんにちは。銀杏です。今回が初投稿になります。そのため、読みにくい、矛盾、誤字脱字などがあると思います。ご了承してください。
僕の名前は佐藤湊。どこにでもいる高校生2年生。男だ。名前から容姿、家庭環境、スペックまで普通。きっと道ですれ違っても誰も気にも留めないんだろうな。
どんな人生を送りたいかって?
うーん… 今のままの普通の人生でいいかな。
きっと大学生になっても大人になっても老いてもこのままなのだろう。そのほうが慣れてるし、それがいい。
また代り映えのないけど幸せな1日が始まる。
「ふわ~ぁ」
ベッドから身を起こす。11月3日。体がだるい。昨日の遅くまで某有名RPGをやっていた影響だろうか。それとも今日が月曜日だからだろうか。
多分どっちもだな。さあ学校に行こう。
顔を洗って、制服に着替えて、カバンを準備する。充電済みのタブレットも忘れずに。授業中に暇になる。授業中に関係ないことをしたくなるのは学生の性だからね。
さぁ、朝ご飯を食べよう。
「おはよう、湊」
母さんだ。いつもと変わり映えのない優しい声色だ。うちの母親はいわゆる子離れができていない。一人っ子だったからかずっと僕にあまい。悪い気はしないけど。おはようと返事をして食卓に着く。
「今日は仕事が休みだからな。学校に行く湊をゆっくり眺められるな。」
はぁ、父さんだ。月曜日が休みなんて羨ましい。うちの父親は昔、よく僕と遊んでくれた。
いわゆるイクメンである。よく母さんの尻の下に敷かれてるけど。
はいはいと父さんを軽くうけ流し、朝食をたいらげる。おいしい。
正直なところ、年頃の男子の中では両親との仲はいいほうだと思う。別に親にべたべたくっつかれても、なんとも思わない。
この話を友人にすると「マザコンかつファザコン」と言われた。心外だね
朝食を済ませ、朝のルーティーンを終わらせて時計を見る。いい時間だ。学校に行こう。
「いってきまーす」
「「いってらっしゃーい」」
父さんと母さんの元気な声が聞こえた。この時の声をもっとよく聞いていればな。
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電車を乗り換え、学校についた。
「おはよう、佐藤」
のんびりとした挨拶が聞こえてくる。
こいつは、僕の親友の今村だ。幼いころから、よく一緒にチャンバラやゲームをしたもんだ。今でも仲良く、よくこいつと、小学校以来の友達も誘いカラオケに行ったりもする。
見るからに体育会系な見た目をしているが、ゲームも、アニメも大好きないわゆるオタク仲間というやつでもある。もちろん、僕も漫画、アニメ、ゲーム、ラノベ。すべて大好きだ。
「おはよう」
返事をして席に着く。
担任が教室に入ってきた。うちの担任は体育教師だ。あだ名はゴリマッチョ。
こんなあだ名だが、生徒の悩みには真摯に答える、やさしいゴリマッチョである。
特別何もない1日が始まる。
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「やっぱり化学は面白くないな」
何の気なしにつぶやく。化学の先生には悪いが、5時間目の化学はだるい。
「そうだなぁ~」
気の抜けた返事が返ってきた。今村だ。
「おい、お前、この間の化学のテスト危なかっただろ。しっかり勉強しな」
そう、この今村という男、前回の化学のテストで大分危ない成績を取ったのだ。
そんなことを言ってると不意に教室のドアが開いた。
「佐藤いるか~」
体育教師らしい太い声が響く。担任だ。何の用だろう。特に何かをやらかしたわけではないが、不意に呼び出されると身が引き締まる。
家にいるとき、親に学校から連絡が来た時と同じ感覚。
「はーい」
担任のほうを見て返事をして気づいた。先生、少し震えてる……?
「ちょっと来てもらえるか」
担任の後をついていく。少し速足だな。ついていくのに苦労する。
担任に連れられて、職員室のなかへ入っていった。
「座ってくれ」
担任の席の前に置かれたパイプ椅子に座る。そして職員室の中を見回して思った。
おかしい。静かだ。静かすぎる。全員おしだまり、僕から目をそらしている。なんで…
そんな中、担任が口を開いた。
「佐藤、落ち着いて聞いてくれるか…… ご両親に不幸があった」
は?
おい……冗談言うなよ。そんなわけないだろ。今朝家を出たときは元気だったんだぞ。
「嘘だ」
自然と口からこぼれ出てきた。血の気が引いているのがわかる。立とうとするも、足元がふらつく。
「落ち着いてくれ…… 申し訳ないが、嘘じゃない」
息が荒い。視界が圧迫されている。担任の言葉が頭の中でぐるぐると回って……
そうこうしているうちに担任が詳細を語りだした。
「ご両親は最寄りの駅の前の交差点での交通事故に巻き込まれた――」
信じられない。信じたくない。目の前のこいつは何を言っている。周囲の音がうるさい。耳鳴りがひどい。
黙れ。黙ってくれ。
「病院に運ばれたが、そのまま死亡ガッ」
気づくと目の前の男のあごを下から打ち上げていた。容赦ないアッパーカットが担任の顎をとらえていた。
火事場の馬鹿力というものであろうか。まさか自分がこんなに力が強いなんて思いもしなかった。
周りが何か言っている。雑音としか聞こえないが。
誰かに取り押さえられる前に職員室から飛び出した。
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気が付くと駅のホームにいた。両親が亡くなった交差点の前の駅だ。どうやってきたのだろうか。ただ、自分が汗だくなのを見ると走ってきたのだろう。
ホームの電光掲示板を見つめる。あと数分で電車が来る。
『その時』を待っていると不意に声をかけられた。
「すいません。その……大丈夫ですか?」
目の前にはとても美しい女性がいた。まるで絵画から出てきたような女性だが、おそらく日本人だろう。黒髪だし。ただ、目だけは透き通るような青色だった。
普段、こんな美人に話しかけられたら『彼女いない歴=年齢』の僕はドキドキしてしまうんだろうが、今はしない。そもそも自分の心臓が脈打っているのかどうかすらも怪しい。
答える気もないので黙っていると、驚くことを言ってきた。
「いえ、回りくどい言い方はやめましょう。飛び込むのはやめなさい。」
驚いた。いや、当然か。
いまの自分の姿を見たら誰だってそう思うだろう。
目から大量の涙を流し、髪は乱れ放題。走って駅に来たせいで異様なほどに汗をかいている。おまけに、ついさっき担任を殴ったときに拳の骨が折れているのだろう。痛みはないが、手ははれ上がっていた。
こんな姿を見ると誰でも異常だと思うだろう。
「な…んで」
声にならない声が出た。僕がしゃべると、彼女はほっとしたような表情を浮かべ言った。
「心のよりどころにしていた両親がいなくなり、つらいのでしょう。とてもつらい時だと思います。ただ、命を投げ出すのはやめなさい。あなたがいなくなったら親友である彼をはじめ、悲しむものが大勢います。だから飛び込むのはやめるのです。」
……なんだこいつ。なぜ両親が死んだことを知っている? 僕はこの目の前の女のことは知らない。僕の関係者でもないのになぜ止める? なぜ友人のことを知っている? 疑問が止まらない。
いや、どうでもいいな。電車の影はすぐそこまで迫っている。線路に向き直った。女の焦った顔が目の端に映る。
……今だ。
線路に背を向けると、後ろ向きに全力で跳んだ。驚愕に染まった表情をしている女と目があう。
小さく嗤った
「父さん、母さん、今そっちへ行くよ。」
視界が闇へと落ちた。