51:方針固め、まずは道を決めてからですわ
人生三周目(前世含めると四周目)にして、悪の存在が顕になった。
リリィとの結婚エンドのために、復讐のために、彼らは根絶しなければならない。
彼らは魔王軍というらしい。魔王軍、かつて古から存在した魔王の配下とその幹部たちで構成される軍隊。総勢100万を超え、世界の各地を恐怖に陥れた。
しかし、魔王は数十年前に冒険者グループ『絶』に敗北し、その終止符を打たれたという。
結果、その手下たちはゆっくりと絶滅段階に向かっているそうだが、ある北欧の地方では、幹部の一人が未だその名を馳せているとか。
「正直、文献が少なすぎるんだよねえ……」
魔王軍って歴史に何千年も名を刻んでいるのに、重要な情報が一向に見つからない。どれもおとぎ話やオカルト本の中でしかその名は語られていない。
「これじゃあ、残虐のグリンニッドにも勝てないよ……」
グリンニッド、普段は魔法科のグリニッド先生として、姿を顰めているが、実は彼の正体は悪魔だ。実験とか、勇者のとか言っていた気がするが、彼らの最終的な目的はただ一つと推測される。
多くの魂を奪い、魔王を復活させる。
どういう経緯であれ、これ自体は変わりないはずだ。しかし……。
「ボクが仮にミドガルド学校に転校したところで、悲劇は変わらないと言っていた。しかし、このまま行っても魔力制御のままならないボクではお陀仏。どうしたものかねえ……」
まさにダブルバインド、二律背反の関係だ。
「どうされましたか?」
「ああ、リリィ……――実は、魔王のお話に興味があってさ、その周辺情報を知れたらなあって思っているんだ」
「まあ、珍しいですね。それでしたら私も覚えていますし、一つ暗唱しましょうか?」
「いや、おとぎ話の方じゃなくて……」
「そうですか……」
リリィは少し残念そうな顔をした。
「――それでしたら、一番魔王のことについて詳しい方にお話を聞きませんか?」
意味のわからない提案をする。
「――いやいやそもそもの文献が古いし、口伝者なんてもういないんじゃない?」
「いえ、この世で最も魔王にお詳しい方を私は知っています。オーウェンス様もよく知っておられますよ」
「は?」
ボクの身の周りに詳しい人? リリィは……違うだろうし、ミリカだってこの世界ではまだボクの存在すら知らないはずだ。
「お忘れになられたのですか? この世の中は唐突の冒険者グループ『絶』によって平定されました。まだ各国の内政は不安定ですが……それでも、オーウェンス様の周りで一番、最も魔王に詳しい方がいます」
「まさか…………」
「そう、そのまさかですよ」
リリィは微笑んだ。
「――『絶』の一員、『絶生』のロールランド様です」
「――なに魔王のことが知りたい?」
ボクは早急にお父様のもとへと向かった。
「はい。お父様はかつて『絶生』としてその名を轟かせたと聞きましたので、一度伺えればなと」
「――むぅ……オーウェンスには伝えないようにしていたのに……一体誰が漏らしたのか……」
付き添いのリリィの肩が揺れた。
「――まあ良い、知ってしまったからには話さなければな」
そうだ。まずは様式美として、こう始めるとしようか。
こんな話を聞いたことあるだろうか、と。
お父様は少しカッコつけて話し始めた。
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次回は明日0:00の予定です。(前後します)




