49:惨劇 ep.1.1
「オーウェンスくん。君は魔力暴走の真実について知っているかい?」
「真実……? 幼少期に魔力量等級や適性が高いものに起こりやすい病気じゃないのか?」
「そう。だが、この話には裏がある。そうだなあ……例えば、オーウェンス=クーデリカ。君は普通の人より魔力量も適性も高い。これはなぜだと思うかね?」
「お父様の血筋じゃないのか?」
「グッジョブ。――と言いたいところだが、実は違う。確かに遺伝で魔法人生は決まっていると言ってもいい。しかし、君の場合は別だ。オーウェンス=クーデリカ。黒髪黒目、そして目に宿す《五菱》の紋様……っ! それは、突如として現れる英雄の証だ」
「英雄……? ボクは女だ」
ボクは身長に言葉を選びながら話を聞く。
「別に英雄じゃなくてもいい。英雄、英傑、勇者、ヒーロー……名前はどうでもいいんだ。魔力暴走の現れる人間、すなわち人より魔力量の高い者は、なんらかの英雄をミニ宿しているんだ。――我々、魔王軍はそれらを根絶やしにするため、この身を潜み、魔王様の復活を試みている」
「――だが、それでは魔力暴走を起きたもののみを殺せばいいじゃないのか?」
リリィガ殺サレル必要ハナイダロウ?
「死んだ魂は魔王様の復活に使われる。魔力暴走の予兆があるものはこちらで回収、および我々の実験に使われる」
「ということは……」
「――そう、君は殺されないし我々についていってもらう。歯向かうなら……わかっているよね?」
「――そのまさかだとしたら?」
ボクは空いた胸を無理やり塞ぎ、気を奮い立たせる。
「殺すのは惜しいが、脅威となるものは排除させてもらおう……っ!」
グリニッドの体は人の身をやめ、悪魔のような形相に変える。
「――私は魔王軍幹部、残虐のグランニッド。クーデリカ=オーウェンス。お前を殺す」
「――っやあああ!!」
オーウェンスの攻撃はグランニッドの防御によって弾かれる。それもそうだ。相手の身長はオーウェンスの何倍もある。魔力量も魔力効率も桁違いだ。
対してオーウェンスは胸を撃ち抜かれ、すでに満身創痍……正直動けていること自体が奇跡だった。
「驚いたよ。胸を撃ち抜かれてなお、ここまで動けるとは」
「お褒めの言葉どーも。それより、いいの? このままだとボク勝っちゃうよ?」
「ふざけたことを言う。君が、私に、勝てる? 笑わせるな。そこまで死にたいなら、見せてやろう。人間が超えられない絶対的な壁を――っ!」
刹那、グランニッドの魔力は増大する。その迫力に吸い寄せられ、彼中心に渦を描く。
「闇魔法……『ダークフレイム』」
その言葉と同時に、漆黒の炎がオーウェンスを襲う。
闇魔法、人間が唯一使えない魔法で、その身を悪魔に宿さなければ使えない絶対禁忌……っ!
使えば強力な力を得る代わりに、身は人間をやめ悪魔として自我を失う。
「――ちぃっ!」
オーウェンスはなんとかそれを受け止める。――が、それだけだった。
か、返せない……だと?
これはボクの今までの中でも最大出力だぞ? ありえない。闇魔法はここまで違うというのか……?
「オーウェンス、君はよく頑張った。さあ降伏しろ。生かさず殺さず、楽しんであげよう」
「だ、れ、がっ! ロリコン野郎のいうことなんて聞くかよっ!」
「…………そうか、残念だ」
さようなら、オーウェンス=クーデリカ。
その言葉を最後に、ボクは気を失った。
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投稿頻度が落ちる日もありますが、2022年中には100話到達します!!
次回は22:00の予定です。(前後します)




