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48:惨劇

遅れてすみません。

 事態は数時間前に戻る。


 その日は特別なんというわけでもなく、普段通りの日常があった。


 朝があって、おはようと飛び交い、笑いも絶えない普段通りの生活があった。


 しかし、それは魔法科の授業によって消し去った。


 グリニッド先生の面白くも、内容としてはつまらない授業を聞き流している中、突然。


 謎の黒装束の集団がやってきたのだ。


 教室は大混乱。先生が指示を飛ばすも、その声は騒動によってかき消される。


 やがて、その謎の集団にボクらは蹂躙され、男も女も、あまつさえ子どもも関係なかった。


 最後に聞いたのは、リリィの声だった。


 ボクが集団と戦闘している中、背後にいる敵に気付かず――――リリィはボクを庇って死んだ。


 なぜ! なぜ! どうしてボクらが――――ッ!! 


 ボクは頭が真っ白になった。


 ――気づけば、その集団はボクが皆殺しにしていたらしい。


 あたりは血まみれ。フェーリもユリウスもクライムも……そしてリリィも! 


 みんな死んでしまった。


「ああ……リリィ……どうして…………」


 昨日あんなに楽しくボクと暮らしていたじゃないか。やっと君と結婚できると、思っていたのに……。


 それでも時間は残酷だ。温かったはずのリリィの体温は次第に失われていく。止まらない涙も、乾きを求める。


「もう……どうすれば……」


 やっとこ子まで来れたと思っていたのに! 


 どうしてどうしてなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ――――ッ! 


「――ボクは、死ねなかったんだ」


 リリィがいない世の中に意味はない。リリィと共に生きれない夜は明けなくていい。


 なら――――ッ! 


「死ねない。死ねよ……ッ!」


 この世界でボクは一回死んでいる。それはボクに律せと機能があるじゃないかと踏んだからだ。


 ――だが。


 その確証はどこにある? 温情での一回かもしれないじゃないか。前はできたからといって、今できるという理由にはならない。


「そうか……じゃあ、死にに行けばいいのか…………」


 絶望の表情を抱え、重たい足取りで敵陣へ向かう。


 今できること、それは復讐だ。できるだけ多くのものを殺して! ……リリィの元にいこう。


「――スライムソード展開、五巴。破滅刻印魔法『黙示』。……魔剣『アポカリプス』」


 捨て身の技で全身全霊を叩き込む。


 もうボクの魔力はない。もしこの技がきれたら、ボクはなす術なく即刻死に向かうだろう。


 けれどそれでいい。これで苦しみから解放されるのだから……――。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 ボクの魔剣は地を削り、空を刻み、異次元の境地で敵を葬り去る。


 誰彼かまわない。お前ら全員、皆殺し(・・・)だ。


 敵の反撃を顧みず、ただただ攻撃を繰り出す。


 それは流線型の如く舞い、敵を殴殺していた。


「――くッ。撤退だ。撤退ぃーーーっ!」


「させるかあああ!!」


 逃す? そんなこと誰が許すものか。ボクの未来を、リリィを、死んでまで手に入れたリリィとの幸せの日々を返せ――ッ! 



 ――刹那、ボクの心臓は何かによって貫かれた。



「やれやれ。手がかかると思っていたらこれですか。全く、これだから黒髪の忌み子は」


 背後の存在にボクは信じられなかった。


 ありえない。なぜこのひとが? どうして! ボクの邪魔をするんだ――っ!?!?


「グリニ……ドぉおおおっ!!!!」


「おおこわいこわい。いつもの仮面が剥がれているぞ? お嬢ちゃん」


「――どうして……お前が!!」


 リリィを、みんなを殺したんだっ!?!


「いやあ全ての根源は君なんだよ?」


「…………は?」


「そんなにしに急がないでくれ。まずは話を聞いてからでどうだい?」


 スカした笑みを浮かべながらグリニッドは続ける。


「本当は君のいない場所でやりたかったんだ。君がいると、どうしても邪魔になるからね」


「ならば……っ!」


「――だが、それは君が学園を去らなかったからこう(・・)なった。君を魔力暴走の疑いで王都の方に依頼したかったんだけどね。測定結果や君のお父様の意向でそうならなかったのだよ」


「――っ!?!?」


 ありえない、ボクがミドガルド学園に転校しなかったから? 


「まあでも、こうして魔力制御のままならない君なんて恐るるたらず。計画はそのまま続行。君がいなかったらもう一ヶ月早かったんじゃない?」


「一ヶ月…………まさか!」


 新春大会の時に、すでに起きていた? 


「幸い、王都では新春大会があった。学園長もちょうどその頃はここにはいない。つまり実験がやり放題ってわけさ」


「そんな…………」


 一回目の時にすでに起きていた? ボクが現を抜かしている間に? 


 ボクが魔力制御を怠って、学園に戻らなかったから? 


「――最後にひとつ、実験ってなんだ」


「――ああ……そうだなあ……死にゆく君の冥土の土産話としてはちょうどいいか」


 グリニッドはいやらしく舌をなめた。

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投稿頻度が落ちる日もありますが、2022年中には100話到達します!!

次回は20:00の予定です。(前後します)

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