表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/68

5:突然のお呼びですか?

「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜〜」」



 最近、クーデリカ家では、扇風機前での宇宙人ヴォイスが流行っている(?)


 お父様に見つかった時は流石に肝が冷えたけど、今では扇風機の虜だ。



 曰く、「オーウェンス……私はやってくれると信じてたよ……ッ! 君は私の誇りだ!」



 ――えーと。要約すると、「今まで暑くてどうにもならなかったのが、改善された。感謝してるよ」らしい(byお母様)。


 これを理解するお母様すげえな。



 今では、クーデリカ家には扇風機が並びに並んでいる。


 最近、さらなる涼を求めて(ボクへのリリィのお株も上げるため)、風鈴も作ってみた。


 ガラス工業は幸い、この世界にもあったので、業者さんに頼んだのだ。


 流石にボクでも、数千度の炎出したり、ガラスを作るのもまだできない。


 ――いずれはできるようになるよ? いいとこまではいったんだけど。


 流石に怖すぎてか、「オーウェンス様は炎属性を使ってはいけません!」ってリリィにお灸を添えられてしまった。くそう、陰ながら鍛えるしかないか。


 とにかく、その風鈴も我が家では好評だ。来客者にも褒められる褒められる。




「オーウェンス様」


 リリィがボクの部屋のドアをノックした。


「ん。リリィ。入っていいよ」


「失礼します」


「それで、どうかした?」


「当主様がお呼びです。早く来るように、だそうです。――では、失礼しました」


 この時、ボクはなぜかドアの音がいつもより鈍く重く感じられた。




 ドアの前で緊張整えて、ドアを叩こうしたするけど、また深呼吸して5分。


 このルーチンを繰り返している。


「何しているんだ。早く入りなさい」


「ひゃ、ひゃい! し、失礼します」


 変な声でちゃったよ……。


「オーウェンス……君は私の自慢の娘だよ……」


 お父様は窓を眺めながらいった。


「えっと……ありがとうございます」


「ところで」


 ボクは背筋をビクッとさせた。


「――あの魔石のアイデアは、オーウェンス、お前が考えたのか?」


「い、いえ。あれはアックス様が……」


「そうか、アックスはオーウェンスがって言ってたのだが……」


 アックスぅうううううう〜〜〜〜〜っっっ!?!?!? 


 あいつ、裏切りやがったな!? あとでぜっったいに丸焼きにしてやるかな。


 ボクはアックスの丸焼きを喰らうまで想像し、溜飲を下げた。


「実は……私が、考え、ました……」


 あ〜〜ボクの人生を終わったよ〜〜〜〜! 異端審問魔女狩り裁判死刑ありがとうございまし……――――。


「素晴らしい!」


「……ほえ?」


「素晴らしい! さすが我が娘だ! 本当に、本当に、素晴らしい! かねてより、君のことはアグネスから聞いているが、それ以上だ!」


「えっと……お父様?」


「――は! すまん、つい興奮してしまった……」


「あはは……」


 とりあえず……危機は逃れたのか? 


「――んっん。とにかく。あの扇風機というものは是非商標登録しないか?」


「えっと。お父様、確認させて欲しいのですが」


「なんだ」


「私は殺されるわけではありませんよね? 異端審問魔女狩り裁判死刑とか、ありませんよね?」


「なぜ娘にそんなことをしなければならないのだ。それで、オーウェンス。どうするんだ?」


「ひとつ、お聞きしたいのですが。どうして、こんなものを?」


「売れるからだ」


「…………」


 至極当然の顔で言われた……。


 もう……頭痛い…………。


「お父様! 別に娘の自由工作にそこまでしなくてもいいのですよ!?」


「何を言っているんだ。これはミリテムの危機を救うのかもしれないぞ?」


「――へ?」


 ちょっと待って。話がつかめないよ。


 この扇風機が? ミリテムの危機を救う? ハハハ、そんなバナナ。


「ミリテム、というより、この国を救うかもしれないな……」


「はあ……」


 もうどうにでもなれ。


「ひとつ、講義しよう。魔獣を狩ったとき、大概ドロップするのはなんだ?」


「魔石……ですが」


「そうだ。よく勉強しているな。では、その魔石の問題点は?」


「ええと……魔石はいわゆる魔力の塊。その魔力に釣られた魔獣がまたやってくる、ということですか」


「もう一歩、だな。重要なのはその先なんだ」


「ええと……その魔石の処理に困る……ですか?」


「そうだ。やはり頭がよくキレるな。まるで10歳にはとても見えない」


「お褒めの言葉感謝します」


「それで、我が国では、埋めていたのだが……」


「それも限界があるということですね」


「うむ。今までは、埋立処理が主流なのだが、深く掘らなければ魔物が集まってくる上、昨今では魔獣の数が異常発生していてね」


 ああ、なるほど。だから、魔石なんていう高価なものがポンポン買えるのか。


 そもそも供給過多で、インフレしていると。



「その問題を解決したのが、オーウェンス、お前だ! いやあ、本当に頭が上がらないよ。国王なんかさ、『この議題は其方に任せよう』とか丸投げするし、俺は行政担当だっての! ほんと、首の皮一枚繋がったよ。あはははは、あはは……」



 お父様はボクを持ち上げて、抱き抱えてくるくると回った。


「お、お父様。目が回りますぅ……」



「む、済まない」


 はあ、はあ、はあ……意外とお茶目だな……お父様も。


 ――うおえっぷ。

 失敬。


「――つ、つまり。私の魔石、特に使い捨て魔石の製品利用は画期的と」


「そうだ。私でも、全然思いつかなかったのだ。オーウェンスは誇っていいぞ」


「もったいなきお言葉です」


「それで、商標化の件なのだが」


「父上にお任せしますわ」


 ボクは純度100パーセントの営業スマイルで流した。


「いやしかし……」


「父上にお任せしますわ」


「そういうわけにはいかないのだよ……この件は、すでに商会に提出していてね……複雑な構造や機能はオーウェンスしか知らないのだ」


「……っ!」


 この感じ、前世でも覚えてるぞ。

 頼んでもない、事業リーダーやらされて、幾度となく失敗と責任を負わされ、その尻拭いを強要される……これは…………


「ブラック企業だあ〜〜〜!!」


「オーウェンス!?」


 ボクはお父様の部屋を飛び出した。

今回も前後編です(予定)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ