5:突然のお呼びですか?
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜〜」」
最近、クーデリカ家では、扇風機前での宇宙人ヴォイスが流行っている(?)
お父様に見つかった時は流石に肝が冷えたけど、今では扇風機の虜だ。
曰く、「オーウェンス……私はやってくれると信じてたよ……ッ! 君は私の誇りだ!」
――えーと。要約すると、「今まで暑くてどうにもならなかったのが、改善された。感謝してるよ」らしい(byお母様)。
これを理解するお母様すげえな。
今では、クーデリカ家には扇風機が並びに並んでいる。
最近、さらなる涼を求めて(ボクへのリリィのお株も上げるため)、風鈴も作ってみた。
ガラス工業は幸い、この世界にもあったので、業者さんに頼んだのだ。
流石にボクでも、数千度の炎出したり、ガラスを作るのもまだできない。
――いずれはできるようになるよ? いいとこまではいったんだけど。
流石に怖すぎてか、「オーウェンス様は炎属性を使ってはいけません!」ってリリィにお灸を添えられてしまった。くそう、陰ながら鍛えるしかないか。
とにかく、その風鈴も我が家では好評だ。来客者にも褒められる褒められる。
「オーウェンス様」
リリィがボクの部屋のドアをノックした。
「ん。リリィ。入っていいよ」
「失礼します」
「それで、どうかした?」
「当主様がお呼びです。早く来るように、だそうです。――では、失礼しました」
この時、ボクはなぜかドアの音がいつもより鈍く重く感じられた。
ドアの前で緊張整えて、ドアを叩こうしたするけど、また深呼吸して5分。
このルーチンを繰り返している。
「何しているんだ。早く入りなさい」
「ひゃ、ひゃい! し、失礼します」
変な声でちゃったよ……。
「オーウェンス……君は私の自慢の娘だよ……」
お父様は窓を眺めながらいった。
「えっと……ありがとうございます」
「ところで」
ボクは背筋をビクッとさせた。
「――あの魔石のアイデアは、オーウェンス、お前が考えたのか?」
「い、いえ。あれはアックス様が……」
「そうか、アックスはオーウェンスがって言ってたのだが……」
アックスぅうううううう〜〜〜〜〜っっっ!?!?!?
あいつ、裏切りやがったな!? あとでぜっったいに丸焼きにしてやるかな。
ボクはアックスの丸焼きを喰らうまで想像し、溜飲を下げた。
「実は……私が、考え、ました……」
あ〜〜ボクの人生を終わったよ〜〜〜〜! 異端審問魔女狩り裁判死刑ありがとうございまし……――――。
「素晴らしい!」
「……ほえ?」
「素晴らしい! さすが我が娘だ! 本当に、本当に、素晴らしい! かねてより、君のことはアグネスから聞いているが、それ以上だ!」
「えっと……お父様?」
「――は! すまん、つい興奮してしまった……」
「あはは……」
とりあえず……危機は逃れたのか?
「――んっん。とにかく。あの扇風機というものは是非商標登録しないか?」
「えっと。お父様、確認させて欲しいのですが」
「なんだ」
「私は殺されるわけではありませんよね? 異端審問魔女狩り裁判死刑とか、ありませんよね?」
「なぜ娘にそんなことをしなければならないのだ。それで、オーウェンス。どうするんだ?」
「ひとつ、お聞きしたいのですが。どうして、こんなものを?」
「売れるからだ」
「…………」
至極当然の顔で言われた……。
もう……頭痛い…………。
「お父様! 別に娘の自由工作にそこまでしなくてもいいのですよ!?」
「何を言っているんだ。これはミリテムの危機を救うのかもしれないぞ?」
「――へ?」
ちょっと待って。話がつかめないよ。
この扇風機が? ミリテムの危機を救う? ハハハ、そんなバナナ。
「ミリテム、というより、この国を救うかもしれないな……」
「はあ……」
もうどうにでもなれ。
「ひとつ、講義しよう。魔獣を狩ったとき、大概ドロップするのはなんだ?」
「魔石……ですが」
「そうだ。よく勉強しているな。では、その魔石の問題点は?」
「ええと……魔石はいわゆる魔力の塊。その魔力に釣られた魔獣がまたやってくる、ということですか」
「もう一歩、だな。重要なのはその先なんだ」
「ええと……その魔石の処理に困る……ですか?」
「そうだ。やはり頭がよくキレるな。まるで10歳にはとても見えない」
「お褒めの言葉感謝します」
「それで、我が国では、埋めていたのだが……」
「それも限界があるということですね」
「うむ。今までは、埋立処理が主流なのだが、深く掘らなければ魔物が集まってくる上、昨今では魔獣の数が異常発生していてね」
ああ、なるほど。だから、魔石なんていう高価なものがポンポン買えるのか。
そもそも供給過多で、インフレしていると。
「その問題を解決したのが、オーウェンス、お前だ! いやあ、本当に頭が上がらないよ。国王なんかさ、『この議題は其方に任せよう』とか丸投げするし、俺は行政担当だっての! ほんと、首の皮一枚繋がったよ。あはははは、あはは……」
お父様はボクを持ち上げて、抱き抱えてくるくると回った。
「お、お父様。目が回りますぅ……」
「む、済まない」
はあ、はあ、はあ……意外とお茶目だな……お父様も。
――うおえっぷ。
失敬。
「――つ、つまり。私の魔石、特に使い捨て魔石の製品利用は画期的と」
「そうだ。私でも、全然思いつかなかったのだ。オーウェンスは誇っていいぞ」
「もったいなきお言葉です」
「それで、商標化の件なのだが」
「父上にお任せしますわ」
ボクは純度100パーセントの営業スマイルで流した。
「いやしかし……」
「父上にお任せしますわ」
「そういうわけにはいかないのだよ……この件は、すでに商会に提出していてね……複雑な構造や機能はオーウェンスしか知らないのだ」
「……っ!」
この感じ、前世でも覚えてるぞ。
頼んでもない、事業リーダーやらされて、幾度となく失敗と責任を負わされ、その尻拭いを強要される……これは…………
「ブラック企業だあ〜〜〜!!」
「オーウェンス!?」
ボクはお父様の部屋を飛び出した。
今回も前後編です(予定)