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44:安堵の学園生活、ですか?

【前日に内容構成しているので、一部改変があるかもしれません】

「ふんふ〜ん♪」


 最近、ボクは気分がいい。


 学園生活も晴れて三ヶ月が経とうとしていた。


 前世(一周目)の知識を利用して、魔法理論も含めて全成績オールS。紛うことなき学年一位である。ちょーきもちい。


 それだけでない。


 アックスのおかげで、魔法適性は全部B、魔力等級は初段に抑えられている。


 ……実際のところは、前世の記録だが、全魔法適正S、魔力等級は真皆伝1類相当なんだけどね。


 まあ、10歳でオールB、初段は高すぎるが、『絶生』ロールランドの娘なら問題ないだろうと言う……いやお父様の信頼厚すぎじゃね? 


 聞けば聞くほど、お父様(筋骨隆々禿頭)の真の実力が疑われる。


 順風満帆な学園生活……よし、そろそろ本筋に入ろう。


「――この5年間でリリィを落とさないとね」



「リリィ」


「なんでしょう、オーウェンス様」


 まずは好意を伝えるところからだ。


「リリィ……あのね、ボク…………」


 ――あれ? 


 言葉が出ない。


 おっかしいなあ。前はあんなに好きって言えたのに……――ん。言ってたっけ? 


 思い返しても、あんまり言っていない気がする。


 最初の出会いはほんと口から出たって感じだし。


「――オーウェンス様?」


 リリィ不思議そうな顔をする。


「――え、えーっとね……その……す!」


 よし、言え。言うんだ!


「――すごく、いい天気だね」


「……? ――はい。本日は快晴で、お洗濯物もよく乾きます」


 ボクの馬鹿ーーーーっ! なんだよ天気の話って!? ボクはあれか? 


 チキンなのか?? 


 くそう、この30年間(サバ読み)まともに人と会話したことがなかったからか!? 


 前世の愚行が悔やまられる。


「――そ、そうだ! お茶淹れてよ!」


「さっき淹れましたよ」


「…………」


 あれれー? おかしいぞ? どうして普段通り、リリィと会話が続かないんだ? 


 思い出せ。いつもの会話風景を……


 ――――そこには胸を揉まれて恥ずかしがるリリィや、マッサージでイケナイ声を出すリリィや、その他エトセトラ……。


「――ボクは煩悩まみれかよっ!!」


「オーウェンス様!?」


 ボクは机に頭をぶつけた。


「――ああ、気にしないでリリィ……今までリリィに対するセクハラで自己嫌悪に浸っているだけだから…………」


「…………確かにオーウェンス様は少し、いやかなり変ですが……」


 言い直す必要があった? 


「お布団は散らかしてベッドで眠れないし、たまに私へのセクハラも酷いですが……」


「あはは……」


「それでも、私は嫌と思ったことありませんよ? ……胸を揉まれるのはちょっと……」


 リリィは恥ずかしそうにした。


「――よしリリィ。結婚しよう」


「…………へ?」


「え?」


 リリィは驚いていた。同時にボクも驚いた。


 え、今ボクなんて言った? 


 結婚? 確かに最終的なゴールはそこだけど、まずはお付き合いからってリリィも……


「――えっと……オーウェンス様? 私、最近耳が悪くなりまして……失礼ですが、もう一度伺ってもよろしいですか?」


 ええい。ここで引いたら女が廃るってもんよ! 


「結婚しよう。そしてまずは付き合ってくれ」


 ボクはリリィの両肩を掴んだ。


「――え? け、けけけけ結婚ですか!?!? もしかしてオーウェンス様って私のこと……」


「――うん大好きだよ」


 即答した。


「……そ、そうですか……ですがそれはお友達として好き……ではないのですか?」


「ううん。ボクはリリィを一人の異性として好き。結婚は急だと思うから、まずは仲のいい友達として、付き合ってほしい」


「――へ、へえ……オーウェンス様が私を……」


 なんとか平静を保とうと、髪をいじっていた。


「……リリィはボクのこと、嫌い?」


「き、嫌いとか、そういうわけではありませんが……」


「じゃあ、好き?」


「すっ! すすす好きな方、だと思います、が……――ハッ! 私は一体何を!?」


「あのね、リリィ。いきなりすぐに付き合ってほしいとかそう言うのじゃないの。まずはお友達として始めて見ない?」


「――――す、少し! 時間をください!!」


 リリィはその場を猛スピードで去った。

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