41:バックアップ機能は持ち合わせていますか?
【前日に内容構成しているので、一部改変があるかもしれません】
そして話は戻って、オーウェンスが失格宣告された時に戻る。
「――え?」
今師匠なんて言った? ボクが失格? はは、そんなバナナ。
なにを根拠にそんなことを。
ボクが負けるわけなんてない、実際ボクの勝ちは目に見えている。
「――周りをよく見ろ。お前さんがやったことがわかるじゃろう」
「――…………」
静かに周りを見渡す……師匠が友てくれたからか、実害自体は少ない。
――だが。
観客の顔はどうだ。ボクを見るその顔は怯えと畏怖が混じっていた、
圧倒的な強さを目の前にして起こるその現象。
――ボクは顧みずに引き起こしてしまったのだ。
「……やっとわかったか?」
ボクは静かに頷いた。
「では、この場を去るとしようか」
「……はい」
――そうして、ボクの新春大会が突然終わった。
ボクはやさぐれた。
しばらく学校はお休みをもらい、部屋に篭り切り、なにをするというわけでもなく、1日をただただ惰性するだけだった。
そんなボクを見かねてか、最初はリリィやマリィなど学校の友達など声をかけてもらっていたが、次第にそう言ったことは少なくなっていった。
ボクは部屋の隅っこで、俯き、考える。
なにがいけなかったのか。力を考えずに、使ったから? いや違う。あれはフェーリの本気に応えようとしただけだ。
否、だが。あの時ボクが一瞬でも考えれば、少しは違ったのかもしれない。
――そんな後悔は今となってはもう遅いが。
暗くなればなるほど、昏がりに浸れば浸るほど、嫌なことを関係なことまで思い出してしまう。
あの時、そもそもミリカの提案を聞かなかったことにするとか、色々手立てはあったはずだと、どうしようもない哀しさに駆られる。
そしてあの日以来、ボクは恐怖の対象となった。
あるものは恐れ、あるものは讃え、また大多数は逃げ隠れる。
リリィやお父様などは「そんなことはない」と否定するが、それは嘘であることが彼らの顔でわかっていた。
どれだけ言っても強すぎる存在は恐れられるもの。それは変わらない。
古今東西、どの英雄も、最後はハッピーエンドとはなれない。
そんなものはおとぎ話だけの話だ。
――もはや、学校にも、お家にさえも、ボクを味方してくれる人はいない。
そうして、一人暗闇に落ちる。
――――――。
――――。
――。
「――オーウェンス……オーウェンス様!」
やけに綺麗な声がする。誰だろう。
目をふと開けてみれば、とても綺麗な金髪美少女がいた。
年はボクと同じくらいか、しかしそれとは全くの正反対で、暴力的なまでの巨峰がそそり立っていた。
「――り…………だれですか?」
「はい?」
その女の子は可愛らしく小首を傾げた。
「オーウェンス様はいつもおかしいと思っていましたが、今日は一段とひどいです」
「あはは……」
彼女はアグネス=リリィ。ボクの専属メイドらしい。
今日は聖マルクス学園の入学式らしい。
――らしい、と。曖昧な言葉で尽くすのは、ボクには全く記憶がないからだ。
なぜ自分にはここにいるのか、自分はオーウェンスというらしいが本当なのか。
クーデリカ家の一人娘らしいのだが、そもそもクーデリカ家とはなんなのか。
もはやわからないことだらけだった。
「――……?」
ボクは自室にあるゼリー上の何かに疑問を覚えた。
「なんだろう……」
「これですか? ――まあ! スライムです! 小さいですけど、魔獣ですからすぐに衛兵に伝えましょう!」
「――いや待って」
この感覚、何か覚えている。
――この柔らかく、ひんやりとして、丸みを帯びているが実際は定型を持たないこのフォルム。
そしてクーデリカ家、聖マルクス学園、入学式……最後に、リリィという懐かしい響き。
――――。
――っ!
――――全てが繋がった。
「ボク、一回死んだんだ…………」
なるほど、どうやらこのゲームはリセットモードつきらしい。
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