40:栄光と、終焉を。
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新春大会も終わりも近づき、第5級リーグの結果は以下のようになった。
リーグ優勝:フェーリ=ヨルン
準優勝:マリィ=ネーゼ
第3位:ユリウス=ネーゼ
第4位:クライム=カルバン
結果は、フェーリの一人勝ち。修行の成果もあってか、『魔力の揺らぎ』をついた防御・攻撃は誰にも対策不可能だった。
そもそも、魔力を視覚化することさえ、できないのだ。
それで彼の言う『揺らぎ』を理解できるわけがない。
どれだけ彼が言葉を重ねても、オーウェンス以外は結局、不思議な顔をするばかりだった。
――――そして、新春大会、本戦が始まった。
「――それでは、新春大会本戦、第一試合を始めます。それぞれ名前と、使用する武器と得意魔法をお伝えください」
「オーウェンス=クーデリカです。武器は魔法剣、得意魔法は5台属性全てですわ」
オーウェンスは恭しく一礼した。
「フェーリ=ヨルンです。同じく魔法剣、得意魔法は氷魔法です。……オーウェンス様……やっとここまできましたよ……」
「――はい。一緒に対決できて嬉しいです。いい試合にしましょう……では」
オーウェンスは試験管に目をやった。
「――本戦第一試合を始めます。お二人は魔法剣ですので、このままの間合いでよろしいでしょうか?」
「問題ないですわ」「問題ない」
「はい。それでは、第一試合開始です!」
「スライムソード……刻印魔法。中級五代魔法、ファイヤ、ウォータ、ウィンディ、ロックン、レイト。……スライムソード『オールドデウス』ですわ」
「あ……アイスソード!」
フェーリは逡巡した。ただでさえ、効率の悪い魔法剣、『魔力の揺らぎ』だらけだと思っていた。
しかし、彼が目にしたのは、無駄など一切ない、完璧な魔法剣だった。
あの剣にも何か秘密があるのだろう。彼女が込めた魔力はほぼ全て還元されている。
「――綺麗だ…………」
フェーリは、心の声が漏れた。圧倒的な完璧を目の前にして、跪きたくもなった。
相手がオーウェンスでなければそうしただろう。
しかし、彼女に勝つという固い決意。勝って、彼女と対等に立ちたいという願望から、その迷いはあえなく消えた。
「――では参りますわ」
「――っ!?!?」
その声と共に、彼女はフェーリに近づき、一瞬でも防御が遅れればフェーリは敗北していただろう。
「まだです。――はっ!」
「――――っ!!!」
オーウェンスの猛攻、それは疾く、重く、魔法を抜いていても、彼女のフィジカルだけで全てが事足りる攻撃。
必死に魔力の流れを視て、なんとか先読みで攻撃を防ぐが、そもそもの火力でいなすことはできない。
一方的な攻撃によって、フェーリの体力はじわじわと削られていった。
「――……」
またオーウェンスも驚嘆していた。いなされてはいないものの、確実に自分の攻撃を防がれることへの意外性。それは今までの予選をワンパンしてきたオーウェンスにとって、ありえない攻撃だった。
(師匠は何を教えたんだろうか……)
彼の師範であり、オーウェンスの先生でもあるミリカを半分恨み、またとても感謝していた。
自分の攻撃に食らいつくもの。この存在はオーウェンスをさらなる高揚へ連れていく……――っ!
「…………楽しい」
オーウェンスは呟いた。どれだけ本気で叩き込んでも、返ってくる快感。自分を高みに押し上げる存在に、ただただ呟いた。
無論、フェーリには聞こえていない。一瞬の集中でも途切れれば、彼女の攻撃はモロにくらい、そのままお陀仏だからだ。
そして、観客も手に汗を握っていた。リリィもユリウスも、マリィも、応援に来たロールランドでさえ、その光景を誰もが見守っていた。
人外の攻撃に食らいつく弱者。もしかしたら彼女に勝ってしまうかもしれない微かな期待。会場は真と静まり返り、誰もが彼らの行方を見守っていた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
このままではジリ貧だ、そう思ったフェーリは一旦距離を取った。
「…………居合抜刀」
そして彼は居合抜刀を構え、オーウェンスの攻撃から反撃の策をこうじる。
刀には魔力を込め、今大会で初めて術式を付与し、これで決めると言う意思がやどる……!
「…………」
オーウェンスはすでに理解していた。彼が今まで本気を出していないことに。
今まではただ刀に魔力を込めだけのカウンターばかりだった。
魔力を込め、そして込められた刀を抜刀する。
それだけの行為で彼は勝ち上がってきたのだ。
普通、魔力を込めただけで魔法と同じような効果を持つことはない。
それは彼の魔力がより根本的な魔法に近いものとして現れている証拠だった。
故にオーウェンスは本気で立ち向かおうとおもった。
今まで本気を出していなかったもの同士、対え合わないと失礼と言うものだ。
「本気、ですか……どこまで耐えられるか魅せてください」
「――スライムソード、変質……五つ巴。刻印……最上位魔法。煉獄魔法、プロメテウス……刻印。……水神魔法、アクエリオン……刻印。……風雷魔法、ワイバーン……刻印。……土精魔法、ガイア……刻印。……神聖魔法、アマテラス……刻印」
オーウェンスの魔法剣は5つに枝分かれし、それぞれに最上位魔法が刻印されていく。
それぞれ一つ一つが合わさり、分裂し、天災の象徴とも言える凄惨な出来事があの小さな彼女の手で、さらには刀の上で起こっていた。
それを見たあるものは絶望を、あるものは悦びを、あるものは哀しさを、あるものは畏怖を、そして……――相対する少年は覚悟を決めた。
空気はシンと静まり返り、絶対無二の集中空間が作られる。
「では参ります……――神技、オールドゼウス…………っ!」
誰もがその結果の行く末を見つめたその時、
「――そこまでじゃっ!」
一喝と共に、ミリカがオーウェンスの攻撃をとめたのだった……!
「試合は中止! フェーリをいますぐ医務室へっ! おいそこのお前! そう、審判のお前じゃ! 疾くとせんかい!!」
フェーリを見ると、ボロボロになって倒れていた。
今まで攻撃が返されることの快感で、相手を全く見ずに、攻撃をしていたのだ。
次第に速くなっていく攻撃、ただでさえ防ぐことで手一杯だった彼が対応できるなんてわけがない。
フェーリは目の前の現実を受け入れられず、居合の構えのまま気絶していた。
「お前さんは馬鹿か! ここにきて人を殺すと言うのかっ!?!?」
「――いえ、私はそんなつもりは……」
――彼の本気に応えようとしただけで……と言葉を続ける。
「たわけ! お主が本気を出せば、一度世界が滅ぶわいっ! もうお前さんは失格。異論は認めん!」
10歳のこの日以来、ボクは新春大会、およびそれ以外の大会は出禁となった。
ボクの古代魔道具が、とは言わない。
今日から更新ペースを上げていこうと思います。




