38:勝利と、栄光と(兄妹対決)
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「このままいけば、オーウェンスと戦える……っ!」
ユリウスは一人控え室で喜びを噛み締めていた。
――――しかし。
ここからが真の難所だと言うことは彼自身がもっともわかっていた。
これから対戦するのは、フェーリ、クライム、そしてマリィと、どの試合も負けていられない者たちだ。
マリィは怒涛の勢いでリンゴ以外の全ての試合に全勝したのだ。
アグネスはそんなマリィに押され、敗北。
結局、総得点の高いマリィが決勝戦に上がることになったのだ。
初戦はマリィとだ。会うのは久しいが、天真爛漫な姿は変わらず、オーウェンスと出会って、より逞しくなったようだ。
「――お兄様には悪いですけれど、今回ばかりは勝たせてもらいますわ!」
「それは私も同じだ。マリィ。悪いが私も負けられない理由があるのでね。勝たせてもらうよ……!」
「――では、決勝戦、第1試合を始めます。それぞれ名前と、使用する武器と得意魔法をお伝えください」
「ユリウス=ネーゼだ。得意魔法は水魔法だ」
「同じく、マリィ=ネーゼですわ。得意魔法は白魔法です」
「ではお互い距離をとってください……決勝戦第一試合開始!」
「ウォーターボール!」
「精霊の喜び!」
ユリウスは水球を、マリィはそれを防ぐ。
お互いの手が読めていたかのように、彼らは次の一手を繰り出す。
「最初から本気でいかせてもらう。水龍の咆哮!」
「ホーリーナイト! かのものの進行を止めて!」
やはり白魔法使いのマリィは防戦一方を強いられる。
――しかし、それは彼女の戦い方でもあった。
――
――――
「――マリィ様はご自身で攻撃するより、相手からの攻撃を待った方がいいと思います」
オーウェンスは大会中に、急にこんなことを言い出しました。
「あら! どうしてかしら?」
「いえ、マリィ様の白魔法はどちらかというと防御系の魔法が多いですので……」
それに、と言葉を続ける。
「――それに、この大会の参加者は頭が堅すぎます。わざわざ真正直に宣言する点もそうですが……そもそも宣言したからと言って、それ以外を使ってはいけないという理由にはなりません」
「……でもオーウェンス。それは魔道の礼儀としてどうかと思うわ……」
「それもそうですね。ですが、マリィ様は白魔法以外にも基本的にどの魔法をお使いになるでなありませんか」
――――
――
(全く、オーウェンスってほんっと型破りよね……――でも確かに、お兄様に勝つのは難しい……そういった手もありかもしれませんわ)
マリィはユリウスの怒涛の攻撃を防ぎつつ、自身の攻撃の布石を置いていく。
「――私と同じ子ことをしようとしているのはわかっている。おおかた正式の進行だろう?」
「――――っ」
マリィは不敵な笑みをした。
「やはり、さすがお兄様ですわね……私の考えていることは全てお見通しですか」
「当たり前だ。何年お前を見てきているとは思っている」
「もう、お兄様ったらっ♡」
その和んだ空気も束の間、
「ーーですが、少し外れているとも言います。ではお見せしましょう。白魔法の境地、私の本気を……!」
「一手、か……では私も次で決めよう」
「いきますわよ……拡張魔法! 『永久なる至上の喜び』!」
刹那、マリィが回避と同時に仕掛けていた術式が解放される。
四隅の術式から光の柱が立ち、やがてスタジアム内部が立方体に囲まれる。
「これは……!」
ユリウスは目の前の現象に驚いた。
マリィが成長していたことは理解していた。
だが、心の底ではどこか『小さな妹』として、ある意味軽くみていた部分もあったのだ。
しかし今の現状はいかに。
若干10歳で、魔法の発展系、『拡張』までし、攻撃系の中では最弱と呼ばれる白魔法を知恵と工夫を生かして、自分を圧倒しつつある……っ!
普通『拡張』は、魔法を学んで最終学年、5年生で卒業資格として認められる技術の一つ……――つまりマリィはこの学校に在学しながらも、卒業しているのと同じ状況――ッ!!
「――この拡張魔法、『永久なる至上の喜び』は、一定時間、周囲の魔力を奪い、マリィに永久の魔力を供給します。……発動までに時間がかかるのが難点ですが、発動してしまえばこちらのものです。あとは……――」
マリィは同時に『聖騎士の進行』を発動させる。
「――お兄様に勝つだけですわ」
「…………マリィは攻撃の手を緩めず、そして満たされた魔力で回復もする……詰み、か……」
「いえ、これも長くは持ちませんので、お兄様が耐えればマリィはそのまま魔力切れで負けですわ」
「結局のところ、我慢くらべといったところか……」
「はい。尤も……マリィは負ける気はありませんわ」
「その言葉、そっくりそのまま返すぞ」
その言葉を皮切りに、兄妹最後の本気勝負始まった。
すみません。もう少し続きます。




