36:最後は私! ですわ!!
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マリィは驚きましたわ。オーウェンスではありません。彼女が何かやらかすのはいつものことですわ!
そのことではなく。
マリィに次いで、ユリウスお兄様、カルバン商会様のクライムさん、異国留学生のフェーリ様についてですわ!
お兄様は相変わらず完璧な……とまでには行きませんでしたが、最終的にはお兄様の作戦勝ちですわ! あとでお兄様に感想を伝えなければ!
――さらに。
(今回の大会は稀に見るレベルが高いものばかりですわね……)
ユリウスお兄様の一回戦の相手、ユピテルは魔女の家系……決してなんなく倒せる相手でもない。も、もちろん。マリィとやったらイチコロですわ!
マリィの相手……え、えーっと、お名前は忘れましたが、彼も同学年の火魔法使いの中では有数の実力者。初等魔法とはいえ、10歳で魔力弾の雨を降らせることができるのは、相当の魔力量だ。
カルバン様の相手、コドン様は田舎から飛び入り入学したダークホース……大会以前は彼女が一番の的でしたわ。
そしてフェーリの相手、ゼルニアは勝つために最低級5級を選んだ2年生。目的のためなら手段を選ばない作戦が今回は仇になりましたね。それに……彼の剣はどこかオーウェンスの剣筋と似ていた。彼が真似ているのか、オーウェンスが真似ているのかはあとで聞きたださとねっ!
――そして私の相手。二番目のリーグ優勝候補と呼ばれる女、リンゴ=マキナ。赤髪赤眼、その視線は人を射殺すという。瞳には精霊の加護の印、《三菱》を宿し、火、水、風と、基本元素を操る生きるチーター。
ミドガルド学校主席入学し、オーウェンスが転入するまでは、実技ともに全ての過程でトップを保有し続けていた。
彼女の功績はそれだけにとどまらない。9歳、つまり入学する前にこの新春大会に出場し、リーグ優勝を果たしたもの。
(正直、勝てる気がしないですわ……!)
ダメだわ! 戦う前から弱気になってどうするの! マリィの馬鹿!
自分を叱責し、己を鼓舞する。
「マリィの目標はオーウェンスと戦うこと! そして勝つの! ……それは彼女、リンゴだって一緒。その思いの重さの違いを見せつけてやりますわ!」
マリィは胸を張って会場に足を運びました。
「――なんだ。対戦相手はお前か」
対峙して初めてリンゴは言った。しかし、それはかなり呆れに近く、マリィ自身のことには全く興味がない様子ですわ。
「……ええ! 私はマリィ=ネーゼ。あなたのお名前は?」
「お前の名前も、私が名乗る必要もないだろう……どうせすぐ終わる相手なのだから……はあ……早くオーウェンスと戦いたい……」
(ムッキー!! この人、とってもとってもウザいですわ! マリィだって、オーウェンスと戦いたいもん!)
強者の余裕というやつですか? でしたら!
弱者の悪あがきを見せてやりますわあ。
マリィは二菱の瞳を揺らしながら嗤った。
「――では、一回戦最終試合を始めます。それぞれ名前と、使用する武器と得意魔法をお伝えください」
「先ほども名乗った通り、マリィ=ネーゼですわ! 得意な魔法は白魔法。聖魔法とされる一種ですわ」
「……なるほど。それでお前は《二菱》なのか。記録にすら残っていない古代魔法と光魔法との派生。……それが使えるなら、聖女にでもなればいいのに」
「お言葉ですが、マリィの人生はマリィが決めますわ!」
「――それもそうか……」
「あ、あのう……お名前と得意魔法を……」
リンゴは審判を睨んだ。その鋭さに彼は萎縮し、「……していただけたら嬉しんですが……」と続けた。
「――はあ。わざわざ名乗る必要もないと思うが……リンゴ=マキナだ。得意魔法は火と水と風。およびその上位魔法だ」
彼女は仕方なさそうに答えた。
「ありがとうございます。それでは、お互い距離をとって――最終試合開始です!」
戦いの火蓋は切られた。
「早く終わらそう。時間が惜しい……煉獄魔法ボルケーノ」
リンゴは無詠唱で火魔法の上位互換、煉獄魔法を繰り出した。
これを習得するのは、魔道を極めしものしか扱えない魔法。リンゴの異質さを体現する一手だった。
「――っ! 白魔法! 精霊の喜び!」
対するマリィは精霊の喜びで魔力をかき乱し、なんとかボルケーノを避ける。
本来白魔法は、回復魔法を中心としたものが多い。
それは古代勇者たちを支える聖女としての役割があったからだ。
マリィはそれを攻撃として使う。例えば、精霊の喜びは、体内の精霊や魔力が活性化され、身体強化を図る魔法の一種だが、それを魔法直接に当てることによって、魔力の揺れを作り、一時的に威力を弱めることが可能。
ものは使いよう。
しかしそれは相手がリンゴならば通用しない。マリィの魔力はどれだけ頑張っても、リンゴの足もとにすら及ばない。
さらにはリンゴのような上位魔法相手には焼け石に水だ。先の攻撃を避けられたのは、リンゴ自身に当てる意思がなかったからだ。
人が足元のありを気にしないよいうに、リンゴ自身もまたマリィを倒すという目的はない。
あるのはただ一つ。オーウェンスを倒して、もう一度首席に返り咲くこと。彼女の眼中にはそれしかなかった。
「――まあ、初撃を避けたことは褒めてやろう。しかし、そう何度もビギナーズラックは続かない。……水聖魔法、ポセイドン」
次は全体範囲!? これは精霊の喜びでは防げない……ならばっ!
「ホーリーナイト! マリィを守って!」
呪文詠唱と同時にマリィを護るもの、ホーリーナイトが現れる。
彼らは、上空へとマリィを運び、津波を回避する。
「――その手はすでに読めていた。……風神魔法、タイフーン」
「きゃああああ!」
上空のマリィは防ぐことはままならず、吹き飛ばされ、そのまま空から叩き落とされた。
「……もう諦めろ。お前は私に勝てない」
「諦め……ませんわ! マリィはまだ、オーウェンスと戦えていない……!」
「その役目なら私が受け継ぐ。さあ、さっさと降伏しろ」
マリィは白魔法ヒールで体の傷を癒す。圧倒的な力量の差、それを目の当たりにしてもマリィの目にはまだ炎が消えていなかった。
(ここまで、魔力を残しておいてよかった……)
「――最後の悪あがきをさせてもらいますわ! ――神聖なる聖母マリアよ我にその栄光を指し示し、悠久の繁栄をお見せ下さい……っ! ――白魔法! 聖騎士の進行! ですわ!!」
マリィの周りに現れたのは大量の聖騎士。およそ数千隊。白魔法の中で最も攻撃に近い魔法だった。
「では始めましょう! 弱者の矜持を! これがマリィの本気100パーセント! ですわっ!!」
「くだらん」
聖騎士はマリィの合図とともに進行し、リンゴに襲いかかった……っ!
――――――
――――
――
「負けましたわ〜〜〜」
「お疲れさまです。マリィ様」
新春大会、控室。マリィはオーウェンスとリリィに慰めてもらっています。
――結果は惨敗。ホーリーナイトは一瞬にして蹴散らされましたわ。
むしろここまでくるといっそ清々しいものですわ!
「ですが……これではオーウェンスと対戦できないわ!」
「それはまた来年ですね……」
「そんなあ〜〜」
「お言葉ですが、オーウェンス様。敗者復活戦で全勝すれば、マリィ様の願いは叶うと思いますよ? それにこの大会はトーナメント形式です。一敗したところでそこまで影響は出ないかと」
「――そっか! 忘れていたわ! リリィ! さっっすがオーウェンスの専属メイドね!」
希望の光に満ちたリリィはオーウェンスに視線をむけ、指をさす。
「覚悟しておきなさい! オーウェンス! こっから必ずこのリーグを勝ち抜いて、あなたと対戦してみせるわ!!」
「――お待ちしていますわ」
そのオーウェンスの余裕の笑みを崩して見せたいと思いましたわっ!
内容の都合上、一回戦最終試合はマリィとなりました。前話はその前の試合の話です。




