34:焦燥と、勝利と(クライムの場合)
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「こ、これは……」
「ム、王子……」
カルアントフェーリはいよいよ焦った。ついには身内であるユリウスが一回戦を勝ち進んだのだ。
彼の相手、ユピテルは魔女の家系と、完全に魔法に愛されているものだった。それでも王子は諦めることなく、知恵と覚悟で、ついには彼女を打ち破った。
「見てくれていか。みなよ」
「おめでとうございます。王子……まさかあの場面で逆転するとは……」
「本当にすごいぜ。王子。このままリーグ優勝まで駆け抜けれるんじゃないか?」
「よしてくれ。まだ1っ海戦だぞ? 気が速すぎる」
ユリウスは本当に照れくさそうにいった。
((――やばい今回だけ殴りたくなってきた))
二人は我慢した。
「まさかあの環境下でクリアしちまうとはなあ……」
カルバンは控え室にて先の試合を見直していた。
王子の狙いは確かに悪くない、油断を誘って、自分の土俵に引き摺り込む。しかし、それでは自分が途中で潰れてしまいかねない。
だから俺は――っ!
「……カルバン商会の戦い方、見せてやんよ」
彼は大量のアーティファクトを抱えてスタジアムに進んだ。
「――――ではこれより一回戦第7試合を行います。それぞれ名前と、使用する武器と得意魔法をお伝えください」
「クライム=カルバンだ。カルバン商会の息子。使用する武器は今大会初のアーティファクトシリーズだ」
彼はそのまま自分のアーティファクトを掲げた。それは丸く、一見すると窮状の形をしていた。そして中には捕縛術式が施されてあった。
――ん、てそれスライムボールじゃん!!!
まだこの案は商会の方に提出していない。つまり彼はノーヒントで今までの知識を使い、新しく創作したのだ。
おお、とオーウェンスまでもが彼の言葉に胸を膨らませる。これまでアーティファクトシリーズは数々の大ヒット商品を生み出し、もはや生活の一部に組み込まれているといっても過言ではなかった。
「……チミン=コドンです。あっしは普通通り魔法を使います。得意魔法は新緑魔法です」
新緑魔法。木や草花などを咲かせ、主に農業でよく使われる魔法だ。
事実、彼女の家計は農家だった。
「ではチミン様は一旦離れて……第7試合開始です!」
「――スライムネット!」
「ウッド!」
クライムはかいしと同時にスライムボー……ネットを投げた。
しかし警戒していたチミンは即座に木を生やすことで捕縛を防ぐ。
「捕縛道具ですか! そえならば距離を取ればいいですね!」
「それはどうかな」
「んな!? いつの間に……!」
クライムは根っからの不器用人だった。剣を振ることはおろか魔法さえも上手く扱えない。
カルバン家は代々精密な魔力操作を苦手とする一家だった。
その点、オーウェンスのアティファクトシリーズは彼らにとって最も都合の良い商品だった。魔力を込めるだけで、精密な魔力操作なしに魔法と同等の効果を使える。魔法を苦手とする彼らにはそれは一つの救済として見えた。
クライムはスライムネットを展開したと同時に、気を引かれたコドンを見越して、即座に身体強化魔法で背後に回り込む。
そして、持ち前の接近戦に持ち込んだのである。
「おらおらおらおらおらおら!」
「――くはっ! ……っ、ウッ――」
「させるか! おらあ!!」
呪文を詠唱として距離を取ろうとするも、一度間合いに入ってしまたら彼のラッシュを抜け出すのは難しい。
「――そうなんども好きにさせますかっ! ツリーゴーレム!」
彼女は一矢報いて一体の守護神、ゴーレムを展開した。
しかし同時に彼女の敗北が決定した瞬間である。
「――もう一度スライムネット!」
「きゃっ」
彼はもう一度トップギアをあげ、彼女に近づき直接ネットを当てたのだ。
ゴーレムは自動操縦で主を守ってくれる優れものの魔法だが、展開直後少しのタウ村具がある。彼はそれを見逃さなかったのだ。
「――ううう離せええええええ!」
「無駄だ。それは俺が解除しなかれば二度と解けない。どうする、このまま続けるか?」
「――ううううもう降参しますからあああああ。このヌルヌルを早く消してください!」
開放後はスライムの粘液でどこかアブナイ雰囲気が漂うチミン=コドンだった。
今日はきちんと守れそうです。




