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29:新春大会ですか?

面白いと思った方は、いいねブックマークしていただけると見逃すことなく閲覧することができます! 何卒何卒。

感想や質問は励みになります! 是非是非。 

また2022年12月13日から、ツイッター(@Yumiera_naro)も始めました。

こちらのフォローも差し支えなければ。

「ところでお前さん。新春大会には出ないのか?」


 ミリカに制御の仕方を教えてもらって3週間。このリストバンドでの修行も慣れてきて、噂の新春大会は刻々と近づいてきた。


 ユリウスはかなり頑張っているらしい。ボクに告白するためなんだもんなあ……残念だけど。そもそもボク、出ないんだけどね。


 しかし、なぜかマリィもこの大会に出るようで、「エントリーしましょうよ! むしろマリィがしておきましょうか!」ってたびたび催促してくる。


 リリィがいうには、「みなオーウェンスを倒そうと躍起になっているのですよ」と。だからボク、出ないんだってば。


「――そうですね……とても魅力的だとは思うのですが、私が出てもしょうがないですし……」


「ふうむ……お主の実力なら、余裕で優勝を狙えるというのにな」


「お褒めの言葉感謝しますわ。ですが私は手荒なことは苦手なので……」


「お主は十分凶暴じゃよ…………」


「え?」


 ミリカの呟きを聞きとれなかった。


「――なんでもないわい。……それに、何やら景品もあるみたいじゃぞ?」


「景品……ですか?」


 そういうのは間に合っている。お金はたんまりあるし、その気になれば作れないこともない。そう思いつつ、一応聞いてみた。


「うむ。どうやら古代の魔道具だとかなんとか……」


「――出ます!!」


 言い終わる前に即答した。


 ――え? 古代の魔道具?? なんでそんな美味しい景品逃していたの?? 


 もしかしたら今後の研究材料に役立つかもしれないじゃないか……ッ!! 


 よし、出よう。みんなには悪いけど。出場してさっさと優勝かっさらいます。ひゃっほう。


「――え、や。しかし……あれは壊れているし……」


「そんなことありません! 壊れていれば直せば良いのです! うふふ、やったあこれでまた新しいのが作れるかもしれない……――はっ! こうしていられない! 師匠! 今日はこれにて!! さようならーーー!」


 ボクは冬の夕暮れ時の魔獣平原を爆速で前進した。


 去り際の、ミリカの「あんなんで食いつくやついたのか……」という言葉はボクの耳に入らなかった。



「――出ます! 新春大会! エントリーさせてください!!」


 ボクは嬉々として、店じまいをしていた受付に迫った。


「……え、ああ、はい。では、ここにお名前とエントリー級を……」


 エントリー級? 学年ごとに違うのか? 


「どの級を優勝しても、魔道具はもらえるんですか?」


「え、えっと……違います。古代魔道具が優勝商品なのは、総合優勝者のみです」


 受付のお兄さんは引き気味に答えた。


 そっか……総合優勝か……つまり、それぞれの級の優勝者がマッチして、そこで優勝を果たせばいいのか……。


 それだったら一番高い級で無双した方が、後々よくね? 


「――じゃあ、ミドガルド学校の一年オーウェンスです! 一番高い級でエントリーします!」


「……え、い、1級ですか? これは通常、最上位学年の5年生がエントリーするものなんですが……」


「実力があれば受けてもいいですわよね! ね!」


 ボクは笑顔でゴリ押し気味に聞く。


「も、もちろんでございます。では、使用する武器や得意魔法などをここに……」


 ボクなら優勝できるという言葉を信じて、魔法剣でエントリーした。スライムソードなら魔法効率は杖や詠唱するより、断然効率いいしね。


 スライムソードを危険物扱いされそうになったときは、自分の素性を明か(きょうはく)して、よくしてもらった。


 ――私、手荒なことは好きじゃないですの。



「――リリィ! ボクも新春大会に出ることにしたよ!」


「そうですか」


 むう、そっけない。まるで知っていたかのようだ。


「どうしたのリリィ? なんか機嫌悪い?」


「いいえ? ただ最近オーウェンス様とお話しできないとか、ちょっと出番が少ないからとか、そういうのではありませんよ?」


「それはごめん……んまって。後半なんの話をしているの?」


「さあ……私もよくわかりません」


 いつものように可愛らしく小首を傾げた。


「カワイイ……じゃなくて! わかった! 今日は一緒に寝よう? おあいこってことで!」


「その手には乗りません。いつも私が不機嫌な時はそうやってごまかすですから」


「――っ」


 くそう強情め。


「じゃ、じゃあ! わかった! これからはリリィとの時間もちゃんと取るし……」


「…………」


 リリィは無言だった。


「ならば! 前やったマッサージをいつでもしてあげる! これでどう……」


「――許します」


「だ……え? 今なんて?」


「だから許すと言っているのです。……守らなかったら怒りますからね?」


「わ、わかった……ちゃんと守る!」


 最近、リリィの世話が少し焼けてきた気がする。



「――ところでリリィ。ミリカ=キースって知ってる?」


 リリィに肩揉みをしながら聞いた。


「――んっ。絶剣様ですか? はあ……はあ……はい。よく知っております。ミリカ様は、ロールランド様のかつての相棒です」


「そうか……ん、相棒?」


「知らないのですか? ……まあ当主様はあまりこの話はされないですからね」


 ボクはリリィにお父様の過去の話を聞いた。


 かつては伝説の冒険者グループ『絶』の一員として、その名を馳せたこと。そのグループは魔王討伐まで上り詰めたらしい。


 そして、お父様は、当初は『絶生』とよばれ、彼が一度通れば生命は全て失われるとまで言われていたこと。そしてたまたま出会ったお母様に惚れ、お母様の貴族の家督を継ぎ、ミリテムの為政者として現在は名を残しているらしい。


 ――――いや、よくよく考えたら、お父様ってめちゃくちゃすげえな……。


 学園運営に、ミリテムの統治、そして国王直々の政治官とスーパーキャリアの持ち主って……。


「――と、ロールランド様はとてもすごいお方なのですよ…… ――あっ」


 今度、お父様も労ってやろう。リリィの肩を揉みながらそう思った。

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