28.5:マリィのターン! ですわ!!
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「はあ……」
マリィは悩んでいます。最近、オーウェンスのことを考えると、胸がドキドキして、切なくなるのです。これは恋なのでしょうか? いいえ、絶対違いますわ!
――オーウェンスがきてから、本当に、本当に、マリィの世界は変わったわ。いつもはユリウスお兄様を追いかけるために精進してきたけれど、今ではその理由も薄れつつあります。
今はただ、オーウェンスに勝ちたい。その心意気だけですわ。
オーウェンスは、マリィのことを思い遣ってか、いつも手を抜きます。手を抜いて、マリィを一位に押し上げてくれているのです。
しかし、そんなことは周囲の人間も気づいているのです。
実質一位は、オーウェンスだと。最初は悔しいと思いました。
しかし、初めて現れた新参者に、名誉を奪われ、あまつさえお兄様の恋心まで奪ってしまったんですもの! こんなに私の全てを奪われたのは初めてですわ!
私は嫉妬して、嫉妬して、嫉妬して、最後にはライバル心が生まれました。
必ず勝って、お兄様と、オーウェンスと対等になりたい。そう思うようになりましたわ。
「――マリィや、最近はよく頑張っておるのお」
「お祖父様!」
お祖父様はマリィの母方の父にあたり、いつもマリィをよくしてくれますわ。
お母様やお父様がいない時はいつも、あじい様が面倒を見てくれました。
「……どうしたんじゃ? 最近は、良いライバルでもできたんのかのお?」
「はい! その子の名前はオーウェンスと言いますの! 彼女はとってもいい友達であり、ライバルですわ!」
「ほっほっほ……それは結構。――しかし、もう寝なさい。夜もふけておる」
「キリが良くなったら寝ますわ!」
お祖父様はマリィの部屋を後にしたのを確認して、マリィは再び学習に浸りましたわ。
当面の目標は、理論魔法のテストで一位になり、と年明けにある新春大会で、オーウェンスを倒し、優勝すること!
マリィは1刻も無駄にすることができませんわ!
そして翌日。ハイン先生の授業でのことです。
「――おぉ〜い。マリィぃ〜=ネぇ〜〜ゼぇ〜……お前まで俺の授業を寝るってのか? あん? そんなに俺の授業がつまらないなら、オーウェンスと一緒に特別授業をしてやるぞぉ〜」
――と、聞こえたのが最後でした。
今は謎の洞窟にオーウェンスといます。
オーウェンスはまだ寝ちゃって……ふふかわいい。なんとなしに、頭を撫でてみました。
すると「リリィ……まだ早いよぉ……」と寝言が返ってきてなんだかモヤモヤしますわ!
とりあえず、起こしてみました。
「オーウェンス。オーウェンス、起きて!」
「――ん……ああ、マリィか……おはよう」
「――っ! も、もう昼ですわよ!」
寝ぼけていたのか、ふっと笑ったオーウェンスをみて、胸がドキドキしましたわ……。
「と、とりあえず! ここはどこなのかしら!」
「――んん? ……わ! ここどこ!?」
オーウェンスはやっと気づきました。
「さあ? マリィも最近は授業を寝ていたので…………あっ」
マリィは最後に聞こえた声を話しました。
「そうか……これはハイン先生の仕業か……」
「多分そうだと思いますわ。……ということは」
「「これは魔法だね」ですわね」
シンクロして、どこか心地よさを覚えました。
「とりあえず、脱出方法を探しましょう。道もあるので、進めば何か変わるかもしれないわ」
マリィは立ち上がり、オーウェンスに手を差し伸べました。
「……ありがとうございます。そうですね。では進みましょう」
そのまま、手をつなげたのは今でも嬉しいですわ。
「ダメですわね〜」
あれから歩いて小一時間。歩いても歩いても一向に出口が見当たらない。
そもそも、この洞窟は一本道なので、迷うところがないはずなのだ。それでも、出口につけない。
「はあ。はあ……た、多分。これも魔法によるものかと。多分、私たちは幻覚魔法かなんかで眠らされているんだと思います」
「なるほど! じゃあ、脱出の条件は目が覚めるようにすればいいのね! ……いたっ!」
「頬をつねっても、意味ありませんよ。これは魔法なんですから……」
オーウェンスはどこか呆れていました。
「そ、そうですわね! マリィったら、なんてことを! おほほ!」
恥ずかしさで、とても顔が熱いですわ。
「……幸い、魔法の杖もあります。これでなんとかしてみましょう」
「きっとこれが先生へのメッセージですわね」
「ファイア!」
「ウォーター!」
「ウィンド!」
「ロック!」
「ライト!」
「アイス!」
「ブリザード!」
「――はぁ、はあ……」
闇雲に魔法を打って見ましたが、全て徒労に終わりましたわ……。
「まずいです。本格的に脱出方法がわかりません」
「どうしましょう……このまま二人きりで、餓死なんてことも……マリィはいやですわ!」
心配でオーウェンスに抱きつきました。
「……大丈夫ですよ。マリィ様。強行突破もできなくはないのです。ただ……ちょっと手荒
な真似なので、したくはないのですが……」
「でも、このまま死ぬなんてマリィは嫌ですわ!」
「私も嫌です。……そうですね。今回ばかりはお衣装様も許してくれるでしょう」
そう言って、マリィはいつの間にかつけていた二つ目のリストバンドを外しました。
「……今から起こることは内緒ですよ?」
「わ、わかりましたわ!」
マリィは確実にオーウェンスが何かをやらかすのを感じて、胸が高揚してきました。
「スライムソード、展開。刻印、5大魔法。ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト。出力100パーセント……っ!」
そこで見たのはマリィは幻想だと信じたかったです。まさかこんなことになるなんて……。
オーウェンスは持っていたスライムに魔力を込め、刃とし、お得意の刻印魔法で、さまざまな魔法を付与していましたわ。
オーウェンスの魔力量に応じて、スライムソードは巨大化し、その光景に震え上がりました。
さすが全適性S……っ! 噂は本当だったのね!
大量に展開される術式と膨大な魔力量により一層、鳥肌が立ちます。
「すごい…………」
そう呟くことしかできませんでした。言葉を失うってまさにこういうことなんですのね……。
「――マリィ様! マリィ様! お手を……!」
その言葉の意味を心で理解しましたわ。
オーウェンスの手を握り、二人で巨大化した剣をもち、一緒に詠唱します。
「「魔剣スライムソード。秘技、オールドデウス!」ですわ!!」
マリィたちはその洞窟の壁に向かって思いっきり斬り掛かりました。
しかし……――
「お前らぁ〜俺を殺す気かぁ〜あぁん?」
その声を皮切りに、洞窟の幻想は解放されました。
目の前にはたくさんの生徒。魔剣を抱えた二人の少女たち。
当然、クラスは大パニックになるのでした。
あとでみっちりハイン先生に怒られましたわ。悲しかったです。
マリィは日記を閉じました。
今日は遅れてすみません。




