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20:では、本題に参りましょうか?

面白いと思った方は、いいねブックマークしていただけると見逃すことなく閲覧することができます! 何卒何卒。

感想や質問は励みになります! 是非是非。 

また2022年12月13日から、ツイッター(@Yumiera_naro)も始めました。

こちらのフォローも差し支えなければ。

「こちらが例の商品ですが……」


 ボクはスライムファンデーション(商品名考え中)を差し出した。

 怪訝そうな顔をされたが、すぐさま切り替え、


「――これはどういった趣向なのでしょうか?」


 と、礼儀正しく会長様がお相手してくれていますわ。前回は違う人だったのに、どうして変わったのでしょう? 


 まあ、いいわ。ご丁寧に名乗っていただいた上、私には不相応なVIPルームに案内していただけたんですもの。お菓子も美味しいし、調度品もどれも選りすぐりですわ。


 ――あらいけない。商談中だから、つい語尾が移っちゃいますわ。

 気にしないでいきましょう。


「……では、ここで一つ実演を。――リリィ」


「かしこまりました。オーウェンス様」


 リリィは、おもむろにスライムゼリー……ファンデーションを取り出して、ほんの少しばかり魔力を込めた。すると、マリィの時と同様。


 少し光を放ったと思えば、肌は健康的な真っ白に、ハリもツヤも増し、生まれた時の柔肌に逆戻りだ。


「おお……これは…………」


 そう言ったのは、意外にもシフォン様でなくお側に控えていたメイド様だわ。でもこれも想定内……なぜならこれは女性向け商品ですわ。


 その価値は同性に判断を仰ぐ方がよっぽど効率的……ですわよね? 


「――む、これはこれは……本当にファンデーションですか? リリィ様の美貌がより増したではありませんか」


「ええ。そうでございます。けれどこれはどちらかというと、魔剣などの魔道具に近いかもしれません」


「というと?」


「これは、スライムを原料としておりまして、注目すべきはこの魔力効率。……これはどの魔道具にも匹敵する素晴らしいものですわ。さらに……――」


「ちょ、ちょっと待ってください。今、スライムと申しましたか?」


「はい。手紙にもそうお伝えしていますわ」


「……な、なるほど。朝方に支部に送られていたのは、この理論や設計図でしたか……私も大学の論文など拝見しますが、これほどまでに理路整然とされていた文章はなかなかなかったもので、送り間違いかと……」


「もちろん、これも私が書きましたわ。理論の方は、あとにしましょう。後日質問があればお答えしますわ」


「わかりました」


「――それで、今回の本題は…………」


「はい。既存のファンデーションについてですよね?」


「ええ、今までのものは鉛でできております。これは肌にもよろしくなく……最悪、死にいたります」


 近くのメイドさんは震え上がっていた。


「奥さんも言っていませんでしたか? ファンデーションを塗ると、肌荒れする、などと」


「……言われてみれば、お母様も言っていたかも」


 ――なぜかこの場にいる営業モードのカルバンくん。お久しぶりですわあ。しかもこっちを恥ずかしげにチラチラ見るし……なにかしましたか? 


「はい。ですが、私が開発したものは全く体に害を及ばさず、むしろ快方に向かうことでしょう。さらに、既に国王陛下に既存のファンデーション問題に関しては進言しました」


「――証拠は薄いが、聡明なオーウェンス様の言葉とあれば間違いないでしょう。しかしこれを規制することも大事ですが、他の商会の不利益が甚大です。何か、策はございますでしょうか……?」


 ――お、この人賢いわ。自分の利益だけでなく、他社の利益を考えている。まさに経営者の鏡じゃないか。前世、お世話になった企業サマに見せてやりたいぐらいだ。


「ええ。もちろんでございます。今回の研究成果を学会の方へ正式に発表しようと思いますわ。……技術さえあれば、きちんとした商会は有効活用するでしょう。また、こちらにも利益を損なわないために、製法は門外不問にし、さらに、商品ごとにロットナンバー、そして私たちの家系の魔力を埋め込みましょう。そうすることで、私たちの独創性は保たれ、こちらも商品管理やクレーム対応などもしやすくなると思います」


「そ、そんなことまで…………」



 この男、シフォンは目の前の少女に驚嘆していた。噂はかねがね聞いていたが、正直、見くびっていたところもある。


(ミリテムの飢饉を味わわなかった者に、なんの苦労がわかるものか。)


 この根底の色眼鏡が、オーウェンスを正しく判断するのに時間をかかったのだ。


 いけしゃあしゃあと貴族の暇の持て余しを冷ややかに見ていたが、この人は違う。オーウェンス様は生まれながらにして、聖母のような存在なのだ。私はこの人に我がカルバン商会を預けよう。そう、心から思ったのだ。


 ――しかし……立ち振る舞いからわかるが、なんという上品な方なのだ。雰囲気から漂う、上品さ・大人の振る舞いはもはや10歳が出していい色気じゃない。


 ――しかし、黒……か。惜しいな。髪を染めれば、もっとオーウェンス様の人気は高まるというのに。


 まあ、私の息子が惚れる、というのにも納得がいくか。――ふ、我が息子ながらいい人を選ぶ。


 シフォンは嫌な笑いをし、イケイケな顎髭をさすった。


「――ところで、カルバン様」


「シフォンでいい。そう呼びなさい」


「お父様……っ!」「!?!?」


「――……はあ。では今後はシフォン様とお呼びしますね」


 なんでそんなこと言い出したんだろう? クライムくんはシフォン様を恨めしげに睨んで、顔真っ赤っかだし。リリィは一瞬ものすんごい形相になっていたし。


 ――なんの意味があるんだろう? 


「それで、シフォン様。利益配分についてなのですが、今回から少し多めにしてもらえますか? 私たちの方にも少し、負担がありますので」


「それはもちろんですよ。むしろ今までの分をお返ししたいぐらいです。オーウェンス様は我がカルバン商会の顔なんですから」


 あら嬉しい。それなら少し多めにいただきましょう。今までは家紋だったけど、それじゃ複製とかされちゃうし。


 個人独特の魔力を注入してもらった方がよっぽどいいよね。


 ーー商談の休憩時間に、さっきのメイドさんからスライムファンデーションを買いたいと申し出がきた。


 顧客第1号ゲット! 

キリが悪いですが、次回は今日の13:00の予定です。

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