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16:開発、再びですか?

※ 15.5話が少し内容改変しております。よければもう一度読んでいただけると幸いです。今後ともよろしくお願いします。(2022年12/12)

――――――

面白いと思った方は、いいねブックマークしていただけると見逃すことなく閲覧することができます! 何卒何卒。

「オーウェンス! 次の発明はいつなのかしら!」


「ま、マリィ様……」


 最近、マリィを含めて学園の人にこういった打診を何回もされる。先日は挨拶がわりにハイン先生にもご要望をいただいた。


 現在、カルバン商会でボクの考えたアーティファクトシリーズは貴賤問わず爆売れ中だ。おかげで歴史の浅いカルバン商会もより勢力を増しているとか。


 ――ていうか、扇風機と風鈴だけでトレンドになる世の中ってどうよ。


 ボクの懐もあったまってきたし、小遣い稼ぎの感覚で乗り出したこの事業も、今や国家に関わる問題に発展している。


 ――もちろん、裏方はお父様に任せていますわ。政務は(わたくし)には分かりませんので。おほほ。


 確かに周りの羨望の眼差しや、お父様やカルバン商会からの催促に少し気が滅入っていたところだ。



「――そろそろ。新しいの考えるか」


「まあ! じゃあオーウェンス! 試作品一号はマリィに渡すのよ!」


 今日一番の笑顔で約束をとりつけられた。


「――発明するって言っても、大事なのは顧客のニーズとトレンドなんだよ」


 トレンドに関しては問題ないだろう。アーティファクトシリーズの最新作とでもいえば、瞬く間に売れること間違いなしだ。


 問題は前者だ。一度買ってもらえても、その後のレビュー・評価によって、今後のカルバン商会やシリーズにまで響きかねない。仮に不評だとしたら、契約上、損害のほとんどをカルバン商会が被る。


 それだけは避けなければ。今後とも彼らとは良好な関係を築いていきたい。


「マリィ様」


 とりあえず、マリィに聞いてみた。


「何かしら!」


「最近困っていることとか、ご不満はないでしょうか? 今後の参考にできればと」


「まあ嬉しい! そうね……マリィはないけれど、大人の使用人たちは化粧品に困っているって言っていたわ! 詳しいことはよくわからないけど!」


「分かりました。ご協力、感謝します」


「任せたわよ!」



「――リリィ」


「はい」


 最近眠れていないのだろうか、目の下のクマが日に日に増している。


「もうわかっていると思うけど、困っていることとかない? マリィの話だと大人の使用人の間では化粧品に困っているとか、なんとか」


「ああ、そうですね。そのことは私も耳にします。なんでも、今の化粧品……ファンデーションのことなのですが、使えば使うほど肌が荒れるとかなんとか」


「……中世のおしろいの主成分って確か…………」


 ――鉛。刹那、背筋が凍った。


 鉛は有毒で、最悪の場合死にいたることもある。


 前世では、有名な王女様が悩まされていたことはあまりにも有名なお話。


「鉛はだめだ!!」


「オーウェンス様?」


「リリィ! 今すぐ取り掛かるよ! このままだと人々が危ない!」


「わ、分かりました」


 半分リリィはボクの気迫に気圧されていた。



「とりあえず、鉛に代替されるものを考えないと」


 まず必要なのは酸化チタンだ。これは紫外線を防ぐ機能がある。


 しかし、ボクが酸化チタンを生み出せるかというと、そうではない。前提として、これも考えないといけないということだ。


「やっぱり、魔法だよなあ……」


 この世界には魔法があり、ファンタジーがある。異世界転生って、素晴らしい。


 発光魔法がいいのか? それとも幻覚魔法? 光を屈折させる系統ならばないこともない。


 ――いや、それでは魔録適性がない人には扱えない。


 アーティファクト化するなら、やっぱり使い捨ての魔石を利用するしかない。


「ううん。アーティファクトって魔石を動力源として、刻まれた魔法を発動する道具だからなあ……」


 その性質上、高度な魔法は使えないのだ。できたとしても、そもそも生産コストと利益が割にあっていない。


「術式短縮をすれば、いけないこともない、のか……?」


 しかし問題は、既存の魔法では目的に合う魔法がないこと。つまりそれは、複数の魔法を編み出して作られる高度な発展魔法が必要ということだ。


「ううん…………」


「――あまり、良い案が浮かばれないようですね」


 リリィはいつものお茶を入れてくれた。


「そうなんだよ。魔法って便利だけど、みんなが使えるようにってなると途端にからっきしになんだよね。だからアーティファクトの体系を編み出したんだけど、かといってこれは簡易魔法にしか使えないし……」


「――魔法のことから一回離れてみてはどうです?」


 リリィはひょんなことを言い出した。


「リリィ……それは結構難しくない?」


「そうですか? 例えば。私たちが使う保湿クリームに魔力を伝導させて、目標術式を発動させる。これも、刻印魔術の範疇ですから、魔道適正には関係ないはずですよ」


「…………」


 普通に驚愕した。リリィにここまでの発想力があること、今までボクを支えるばかりだったリリィが助言できるまで成長していたことに。


「勉強……頑張っているんだね」


「なんのことですか? ……ふわあ…………すみません」


 完璧な愛想笑いだったが、最後の最後で決まり悪かった。


「――と、とにかく! 私のアドバイスも頭に入れて置いてくださいね!」


 リリィの頬は少し紅かった。


「わかったよ。……とりあえず、リリィは少し休みなさい。ボクのベッド使っていいから」


「あ、ありがとうございます」

もう少し続きます

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