15:お勉強会ですか?(後編)
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前回のあらすじ。ボクはマリィを見送って、リリィを部屋に呼んだ。
「し、失礼します……」
「ん、おいで」
部屋に入ったリリィにボクのベッドへと進めた。
「あ、あのご要件というのは……」
リリィばやや引け目がちに聞く。
「ん? 別に大したことじゃないよ。最近はリリィと時間が取れていなかったし、久しぶりに一緒にいたいなって」
「ーーなるほど……! それだけですか……」
リリィはホッとしたように胸をなで下ろした。
「それだけとはなにさ。ボクにとっては一大事なんだよ」
「うふふ。そうですね。――今お茶入れますね」
リリィは嬉しいのか、鼻歌まじりにお茶を作ってくれた。
「……ーーありがとう」
……最近ボクは学んだのだ。
リリィに好かれるにはどうしたら良いか、と。
もっと言えば、リリィエンドにするにはどうすれば良いのか、と。
そこで閃いたのだ。
ーーズバリ、押してダメなら引いてしまえ、と。前世は色恋沙汰ボクには全く縁がなかったから、全て入れ知恵だけど。
そこでボクは考えた。ボクばっかりがっつくのもナンセンスだ、と。ボクは今までリリィに有り余るほどの愛を注いできた。(注いだ方法はともかく)
ここで一旦引いて、なにもしない。紳士になるのだ。
そうして、敢えてそのギャップを生み出す。すると……供給難になったリリィはウズウズしだすはずだ……そうしたらそこで…………。
「ぐへ、ぐへへ、へへへへ……」
「お、オーウェンス様……?」
おっと失敬。つい涎が出てしまった。
「――確かに言われてみれば、最近は何かと忙しくて、あまり話せていませんでしたね」
そう言いながら、ボクのベッドに座った。それでも、座るには近すぎる距離感だが。
「そうだね……リリィは寂しかった?」
「な、ななななにを言ってるんですか!? そんなわけ……ないわけが……ないじゃないですか…………」
だんだんと小声になって聞き取れなかった。
「――と、とにかく! オーウェンス様が暇でないことはむしろ喜ばしいことでもあります! それだけ当主様に近づいてきているということなのですから!」
「当主らしいこと、ねえ……」
「不安ですか?」
「正直ね。ボクなんかが務まるのかなってこともあるし、それに……」
「――オーウェンス様はすごいです」
「……へ?」
リリィの顔はいつになくマジだった。
「ど、どうしたの……? リリィ」
「オーウェンス様は少し自己肯定感が低いです」
「はい?」
リリィはボクの言葉を無視して口ばやに言葉を続ける。
「確かに少しおかしいところもありますが……オーウェンス様は誰よりも直向きに努力しておられます」
「……ダメだと言っても、魔法を夜な夜な研究し、遅れているからと言って、その遅れ分をなくし、むしろプラスにするぐらい励んでおられます」
「私ともども下の者への配慮を欠かさず、誰よりも周りを見られている方です。話を聞いていないように見えて、実は聞いていることなんてお見通しです」
「――あはは。ボクはそんなタマじゃないよ。魔法理論だって、先生がいいからだけだし、ボクがやったことがたまたま周りが欲していたものだっただけで。……リリィはボクを買い被りすぎ」
「それでも、オーウェンス様であることには変わりないでしょう」
「――――」
ボクは真面目な顔をしたリリィに気押された。
「す、すみません! 差し出がましい真似を……」
「いいよ。リリィは励まそうとしてくれたんだよね?」
「――はい! ところでオーウェンス様」
「なに」
「その……そろそろ退けてくれますか?」
「ご、ごめん」
「い、いえ……」
気づけばボクはリリィを押し倒していた。無意識にリリィの服に手をかけているし……今日はボクのターンじゃないんだけだどな。ほんと、無意識って恐ろしい。
ボクは冷めたお茶を啜ろうとした。
「ーー今日は一緒に寝ますか?」
「……へ?」
ボクは飲もうとしたティーカップを落とした。中は入っていなかったので、幸い床は汚れなかった。
「え、えと……リリィさん。もう一度言ってくれますか?」
ボクの顔はきっと嬉しさと驚きのハーモニーを奏でているだろう。
ーーなんやねんそれ。
「だから。その……い、一緒に、寝ませんか……と」
リリィは赤面していた。ボクの鼓動も次第に早くなる。
「…………リリィ」
「ーーも、もう! 嫌ならいいです! おやすみなさ……」
「――待って」
立とうとしたリリィの手を引いた。
「今日は一緒に寝ようか」
ボクは人生でいちばんの笑顔をした。
ーーちなみに、紳士モードは健在中なので、今夜は普通に寝た。
…………少しイジワルもしてみたり?




