14:お勉強会ですか?
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「オーウェンス! ここがわからないのだけど……」
「――ああ、マリィ様。これは、ここをこうして、そしてこの公式に当てはめれば完成できますよ」
「なるほど! わかったわ! ありがとう!」
マリィもやはり英才教育の賜物だろうか、飲み込みと理解能力も凄まじく早い。
さすがはユリウスくんを目指すものだ。
「――オーウェンスって本当に頭がいいのね! 羨ましいわ」
「いいえ。そんなことはありませんわ。マリィ様の方こそ、私が少し教えただけで、すぐに理解されているではないですか」
「――あの、オーウェンス様」
「ん? なんですか? リリィ」
「いえ、その……なんで私までご一緒させてもらっているのですか? 私はオーウェンス様のメイドですから……」
「メイドだろうと、なんだろうと、リリィがミドガルド学園の在校生には変わりないわ。それに……最近あんまり勉強が上手くいっていないらしいじゃない」
「うっ……なぜそれを…………確かにそうですが、貴族の方とご一緒するのは少し気が引けます」
「マリィは気にしないわよ! リリィ、だっけ? あなたもオーウェンスのメイドである以上、オーウェンスの顔に泥を塗るような真似はしてはいけないわ!」
「マリィ様。確かにそれはそうですが……」
「――なにマリィの言ってることが間違ってるって言いたいわけ?」
「い、いえ! そんなことは!」
「そう。ならリリィもここにいるべきだと思うわ!」
「わ、わかりました……」
リリィはマリィの権力に怯えて、すぐに自分の勉強にのめり込んでしまった。
元々、リリィは頭は悪いわけではない。前の学校でも常に上位をキープしていた。ただ、この学校の進度が尋常じゃないぐらい早いだけだ。ここで潰れてしまっては困る、というのが学校側の言い分なんだろうが、このままでは生徒全員がダウンしかねない。
「……ありがとうございます」
ボクはマリィにお礼を言った。
マリィは普段は権力に甘えるなんてことは絶対にしない子だ。先の行動はきっとリリィのことを思い遣ってからなのだろう。
「なんのことかしら」
マリィは頬を染めてそっぽをむいた。
「――あの、オーウェンス様」
「どうしたのリリィ? ……ああ、短縮魔法の展開式ね、これは共通項を見出してみればいけると思わない……?」
「…………! なるほど! わかりました。ありがとうございます!」
「いいえ」
「…………オーウェンスとリリィって本当に仲良いのね」
「「へ?」」
マリィの意外な言葉に目を丸くする。
「普通メイドと主人ってそこまで深く関わらないものだもの。いえ、仲がいいのはとってもいいことなのよ!」
「……マリィ様のご家庭ではどんな感じなのですか?」
ボクはあえて会話の趣旨をずらそうと試みた。この子、めちゃくちゃ勘がいいぞ。
「マリィ? マリィのところは、そうね……」
マリィは少し黙って、考えたのち、
「あんまり、メイドとは話さないかしら!」
「――う……すみません。差し出がましい真似を」
リリィはすぐに謝罪した。
「いいのよ。他所は他所、うちはうちだもの! ただ……マリィはともかく、他の貴族はあんまりよく思われないかもしれないから、控えた方がいいと思うわ!」
「ご忠告ありがとうござます。深く心に刻んでおきますわ」
「ええ! でも……」
刹那、マリィはリリィに抱きついた。
「マリィとは仲良くしてね! リリィ!」
「は、はいぃ……」
抱きつかれたことに満更でもないリリィを見て、ボクは少しジェラシーな気持ちになった。
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「――今日はありがとうございました。今後もよろしくお願いします」
「気にすることないわ! マリィとオーウェンスの仲でしょう! それに……リリィもよろしくね!」
「――は、はい!」
リリィはさっきのことを思い出したのか、モジモジしていた。
ボクはマリィの馬車を見送った。
ボクとリリィは寮(相部屋ではない)だがマリィは後宮住まいなのだ。相手が王家である以上、お見送りをするのは筋だろう。
幸い、門限を過ぎていても、寮母さんは今日だけ寛容だった。
「――さて、リリィ。今日は私の部屋に来なさい」
「へ?」
ボクは久しぶりのマジだった。




