13:Re. 魔法の講義ですか?(in 王都ミドガルド学園)
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今日は待ちに待った魔法の授業だ。前回のリベンジマッチでもある。
「お前らぁ〜。今日は魔法の授業を始めるぞぉ〜」
王都ミドガルド学園では、魔法科担当はハイン先生らしい。
「まずぅ……理論を学んでもらうぅ〜。教科書を開けぇ〜」
……ちなみに、その教科書というのはこのボクの手にあるでっかい辞典みたいなものですか?
10歳に渡す大きさじゃないぞこれ。
大漢和辞典も吃驚の重さと太さだ。
「……前回の復習だが、いいかぁ? 魔法には5大属性があるぅ」
「――先生」
「なんだあぁ〜? クーデリカ・オーウェンスぅ……」
「どうして、火・水・土・風の4大元素と、光と闇の主元素を基本として構成されているのに、『5』大属性なのですか?」
「……そうかぁ、お前はまだ習っていなかったのかぁ……いいだろう。今回は魔法理論の基礎から復習するぞぉ〜」
どうやら王都ミドガルド学園では、魔法理論の授業は数週間早く始まっていたらしい。
「――いいかあ。確かにこの世の中は合計で6つの元素で基本構成されているがぁ、魔法運用とは異なる。そもそもぉ、闇属性の魔法なんて、人間が使えるものじゃないんだぁ……それが使えるのは、魔獣の中でも知能を持ち、一見人間となんら変わりない、『魔人』と呼ばれるものだけだ。――それもまあ、今ではおとぎ話になっているがなぁ」
「――先生。先生は魔人は今でも存在すると思いますか?」
一人の女生徒が先生に質問を投げかけた。
「……そうだなぁ……いるかもしれないし、いないかもしれないってのが俺の持論だぁ。……いない方がマシだがなぁ」
――んん。この世界って乙女ゲーじゃないのか?
魔法に魔獣に魔人って……RPG要素が強すぎる。それじゃあ、魔王もいるってのか。ーーって、そんなわけないか。HAHAHA☆
「――ちなみにだがぁ……御伽話にあるものは実話が基となっている。お前らもガキの頃に、『えいゆうのお話』ってので聞いたことがあるだろぉ……」
モロすぎじゃん! ……まあ子供の童話だしそんなものか。
「……古典文学を専攻する奴もいるかもしれないからな、教えといてやるぅ。お前らの童話は、子供向けに改変されているが、実のところは違うぅ……まぁ。興味があるやつは将来、『始祖の回帰』ってのを読めぇ。ディープなところまで触れられるぞぉ」
――そんなこんなで、授業45分は終わった。
他の生徒からしたらあくびの出る内容だったかもしれないが、ボクにとっては興味深い充実した時間だった。
しかも意外なことに、ハイン先生は、教えるのがめちゃくちゃ上手い。
未履修分5時間分(後でマリィに聞いた)を超圧縮して、重要なところだけをピックアップしてくれたそうだ。
マリィも先生の能力に舌を巻いていた。
「――あとは自習しとけぇ。オーウェンスぅ〜。もちろん、次回の予習分256ページから356ページも必須だぞぉ……」
本気で言っているんですか? 明日も魔法理論の授業はあるんですよ?
「……今回のおさらいを理解できていれば、次回の分も問題ないと思うぞぉ。……それでもわからなかったら俺のところに来ぉい。教えてやる」
なるほど、なんだかんだ言って、ハイン先生は不愛想ながらもきっちり生徒のことは見てくれるんだな。
ボクはちょっと見直した。
○○○
「――ここわかるやついるかぁ? ……いないのかぁ?」
「はい先生!」
先生が神教師だと分かった途端、ボクのやる気は俄然向上した。
前世からの集中力もあるのだろう、今日の予習どころか、次年度の内容まで履修してしまった。
「――オーウェンスか……じゃあ答えてみろぉ」
「はい! そもそも、魔法というのは体内の元素を借りるのでなく、外界からの魔力を媒介として作ります。もちろん、その魔力の親和性という点では、魔力適正は重要です。そして、魔法陣の展開は詠唱によって発現します。しかし、無詠唱魔法は体内の魔力を媒介とし、体内で魔法陣が形成されます。叙級者となればそれを見極めることもできるでしょうが、そんな人は先生クラスでないと存在しないと思います」
「…………正解だぁ〜。よく勉強しているなぁ」
……もはや、魔法理論ではボクが一番になったと言っても過言ではないだろう。
「オーウェンスはほんとすごいわね!」
マリィは嬉しそうに褒めた。
「そうでもありませんわ。皆さんと違って、私は遅れているのですから」
「けれど、今日の小テストも10点満点だったでしょう? ハイン先生の小テストは平均2点以上取れないことで有名なのよ」
「たまたまですわ。山を張ったら、そこが当たっただけで」
「いいですわね……マリィは最近魔法理論の授業が苦手になってきましたの……」
マリィは残念そうに俯く。
「そうだ! 普段の勉強を知りたいので、今度お勉強会をしませんか? 試験も近いですし、お互い、ためになると思いますの!」
ーーと思ったら、元気に提案する。本当に見ていて飽きないやつだ。
「ええ。マリィさんのご要望とあらば」
ボクは笑顔で答えた。




