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12:都立ミドガルド学校ですか?

面白いと思った方は、いいねブックマークしていただけると見逃すことなく閲覧することができます! 何卒何卒。

「みんな転校生を紹介するぞぉ〜。席につけぇ……」


 新しい担任のハイン先生は、気だるげにボクを紹介した。



「聖マルクス学園から来たそうだぁ……なんかやらかしたそうだなぁ……なんでも若干10歳で皆伝5類相当の魔力量を持っているらしいじゃないかぁ……みんな仲良くしてやれぇ……」



「先生!?」


 ちょっと待ってよ! ボク、それ隠しとくつもりだったんだけど!? 


 ああほらもう、どよめきが止まらないじゃないか。


「――そうは言っても、どうせ魔力測定でバレるだろうがよぉ……それはどうやって誤魔化すんだぁ……?」


「…………」


 こいつ……只者じゃないッ!?(←ただやってみたかっただけ)


 ボクの表情を察するとか、リリィしかできないのに……! 


 でもさあ、ことには順序ってものがあるじゃん? 


 おかげでみんなバッチバッチに警戒してるし。


 ただでさえ、ミリテムみたいな辺境からやって来た新参者なのに、どうしてくれんだよ、これ。


「――っ。せ、聖マルクス学園から転校しました。クーデリカ・オーウェンスですわ。これから五年間仲良くできていけたら嬉しいです」


「ちなみにだがぁ、オーウェンスはあの扇風機を作った考案者でもある……そういえばぁ、風鈴だっけか? あれはぁ俺も好きだぞぉ……」


「は、はあ……喜んでいただけたら幸いですわ……」


 ボクは曇りなき営業スマイルで対応した。ちなみに実のところ。


(こんのクソ教師ィィイイイイ〜〜〜!!!! なんだよ、ボクのことが嫌いなのか!? それだから、人のプライバシーをポンポンと喋ってるのかぁ!?!?)


 ボクはせめてものの抵抗に先生を睨んだ。


 ――すぐ戻した。殺気が尋常じゃなかった。


(お父様……オーウェンスは辛くやっております…………)


 今晩のお手紙の内容が決まった瞬間だった。



 学校に溶け込んで数日。最初こそはぎこちなかったものの、今では楽しく談笑できる友達も増えてきた。


 最近はリリィとの時間が取れなくて寂しい気もする。


「ーーちょっといいかしら!」


「はい?」


 ボクは金髪縦ロールに声をかけられた。名前はなんだっけ……ほら。あれ……。


「――マリィですわ! マリィ・ネーゼですわ!」


「ああ、マリィ様ですね。忘れておりましたすみません……――って。ネーゼ、ですか?」


「はい! マリィはユリウス様の従姉妹にあたりますの!」


「ああなるほど。ですから皇太子様と同じ碧眼をお持ちになっているのですね」


「はい! とっても光栄ですわ!」


 マリィ・ネーゼ。金髪縦ロール。きつく上がった吊り目で、言葉遣いからもかなりの地震かとみて取れる。典型的なイキリお嬢様だろうか。


 そして肝心の胸は……ふ、勝った! 人に出会ってなり、胸の大きさを比べて自尊心を回復する人がいた。――というか、ボクだった。


 そもそも10歳なのに、巨乳なリリィとかがおかしいだけなんだけど。


「――それで、ご用件というのは」


「そうでしたわ! お兄様より遠方はるばるあなたのことはたくさん聞いていましたわ! 魔法のことなり、アーティファクトのことなども!」


「皇太子様にご注目いただけて光栄ですわ」


 ――この子何が言いたいんだ? 


 ボクはニッコニコの笑顔で応える。


「それで! あなたの実力は確かなものだと聞いております! しかし……勘違いしないでほしいですわ! この学園のトップは私、マリィなんですから!」


「勘違いも何も、マリィ様が紛れもなく一番だと認識しておりますわ。学業も武術も魔術にも秀でており、お兄様の名に恥じないほど輝かしい成績を取っておられていると聞いています」


「――そ、そんなの当然ですわ! マリィは、お兄様に少しでも近づきたいんですから!」


 マリィは一瞬、少し拍子抜けな顔をした。


「それは素敵ですね」


「――あ、あなた。嫌なタイプ……ではないのですか?」


「へ?」


「し、失礼しましたわ! お手紙でのお兄様はいつもあなたのことでしたわ! オーウェンスがどうとか、ああしたとか……正直のところ、お兄様を誑かした輩はどのようなものだと疑っておりました」


「なるほど……」


 ユリウスくんかぁ……結局面と向かって話したのはあの日以来だなあ……。


 それにしても誑かしたって……ボクはリリィは一筋なんだが……。


「見たところ、あなたは悪い方ではないようですわ! ……疑ってしまい申し訳ないですわ……」


「いえ、余所者を疑うのは当然のことです……どうかお気になさらないで」


「ですがマリィはお兄様のことを疑ってしまったことと同じですわ……お兄様に嫌われる……」


 マリィは泣きそうになった。


「ま、マリィ様! 私は皇太子様に告げ口はしませんし、そんなに重く取られないでください」


「ですが。これではお兄様に顔向けできないですわ……」


「――それでは、私とお茶しましょう。今回の件はそれでチャラです。皇太子様にも、私と仲良くなったと伝えればきっと喜ばれますよ」


「そうですわ……そうですわ! オーウェンス、あなたって頭も回るのね! それでは今からお茶しましょう!」


「はい。――リリィ」


「かしこまりました」


 マリィは初め印象最悪だったが、話せば純粋でまっすぐな子なだけなんだと思った。

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