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11:何かやらかしましたか?

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「――オーウェス…………」


 お父様は、また窓を見てボクを見ずに呼びかける。この学園の学園長でもあるお父様に呼ばれたからだ。


「お、お父様……いえ、学園長」


「聞いたぞ。どうやら君は魔法に愛されているのだな」


「――はい。アックスに確認しましたが、結果は変わりませんでした。……魔力量はこれでも抑えられているそうなのですが……」


「――その、腕輪で押さえているのだな」


「――はい。あの、お父様」


 ボクはいつになくマジだ。戦争加担なんて御免だし、リリィとも離れたくないからだ。


「私は、この力を悪用する気は全くありません。……私はお父様と、お母様と、リリィと静かに暮らしたいだけなのです」


「――そうか。しかしオーウェンス。お前は魔力暴走について知っているか?」


「……はい」



 魔力暴走。ちょうど10歳から15歳の間で発症する病気であり、魔法が使いにくくなったり、体の不調――最後には魔物に変異すると言った世界で最も凶悪な呪い。原因は主に魔力制御の不十分だが、多くは魔力量が高いものに発症しやすいとされる。



「……突然だが、オーウェンス。お前には王都に行ってもらう」


「――――え? ま、待ってください! お父様! まだ入学して半年ですよ? それにあの学園にはユリウス王子や、カルバン様まで……!」


「ん? なんだお前、オーウェンスはあいつらのことが好きなのか?」


「い、いえ……好きだなんてそんな……!」


 ボクが好きなのは、リリィ一筋だ。なにが悲しくて野郎と結婚しなきゃならんのだ。



 ――ボクは、女の子であり、好き人は女の子なのだから。



「……それじゃあ、あいつらにも転校してもらうか……」


「――っ!?!? い、いえお父様! それは彼らにも悪いですし……」


「んん。そうだな。――でも、元々あいつらは王都出身だし、住み慣れた土地の方がよっぽど暮らしやすいだろ」


「ですが、彼らはそれを考慮してまで、ここに入学したのですから……」


「それは、彼らが決めることだし、私から打診してみるよ」


「はあ……しかしお父様、私は本当に大丈夫ですから、どうか、私とリリィだけで行かせてください!」


 ボクの乙女ゲームフラグはここで折っておきたい。


 それに王都なら、必ず寮……! 愛しのリリィと相部屋なんて、そんなの……。


「うへ、うへ、うへへ…………」


「お、オーウェンス……?」


「――は! お父様、失礼しました!」


 割とお父様に気持ち悪い目で見られた。


 ボクは決まり悪く部屋を後にした。



「――どうでしたか?」


「リリィ……ボク。転校するかも……」


「はい?」


 リリィはいつものように可愛く小首を傾げたのである。


「それで、どういうことですか。いきなり転校って……」


 リリィはボクにお茶を差し出した。


「ボクの魔力量って人より遥かに多いじゃん? ましてや10歳だし」


「そうですね……一般的には、私たちの年齢だと、多くて初段……普通なら3級もいいところです」


「だから、魔力暴走の可能性が人一倍高いらしいんだ。魔力制御を覚えるなら、王都の方がいいだろうという、お父様の判断で……」


「そうですか……」


 リリィは残念なそうな顔を隠しきれず俯いた。


「……もちろん。リリィには同伴してもらうようにするよ?」


「リリィはボクの専属メイドなんだから……覚悟していてね」


「――も、もちろんでございます……!」


 リリィの目には嬉しさ半分、お父様と同様のキモさ全面で出ていたのは気のせいだろう。




 ――気のせいだ。

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