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第九十四話 花火大会②

夏休み初旬、私は親にまたおねだりして浴衣を買ってもらった、黒地にオレンジの花が咲いている綺麗な浴衣。着付けはお母さんがネットで検索して必死こいてしてくれた。髪の毛には紫の花のかんざし。下駄がうまく足に入らずガコガコ拙い歩き方になる。

颯太の家のチャイムを鳴らす。

颯太は白地の半袖に青いジーンズをはいていた。前に颯太は黒が好きって言ってたけど、夏はその格好のほうがいい。

「……颯太?」

呆気にとられた顔をしていたので呼ぶと、颯太は呆然と私の姿を見ていた。

「似合ってるよ」

「本当!?」

「うん、すごく…」

そのままバスへと乗り込んで、花火会場出発。

「足…」

「え?」

「痛くないの?」

「痛くないよー!大丈夫!」

私が歩くのが遅いので気を使って颯太も歩幅を合わせてくれた。


バスから降りて、花火会場に行くと人がごった返していた。

「俺なんか買ってくる、なにがいい?」

「えーと、たこ焼きと、フランクフルトと、飲み物がいい!」

「分かった」

そう言って颯太が出店に向かって歩いていった。中学の時は私が買いに行ったんだっけ、懐かしいなあ。くすりと笑みが漏れる。ブルーシートの上で颯太が買ってきてくれるのを待つ。

「お待たせ、小春」

「ありがとー颯太」

おなかぺこぺこだから、花火前には食べ終わってしまいそう。屋台からは怪しげな音楽が流れてくる。

「あああ~日本海の~魚の~美味しさに~泣け~愚民ども~」

これはひどい。

そして、アナウンスが鳴る。なんと去年に比べて3先発も多くあげてくれるらしい。なんというサービス精神。

「では夜空を彩る花々の美しさをご鑑賞ください!!」

ドーンドドーンという音で花火が次々と流れていく。ああ、何回観ても花火はいいなあ。なんでだろう、颯太と観るのが楽しい。颯太の反応が友達のそれと明らかに違うから。じっと見つめてしまう。颯太は花火を見ている。そして見つめている私に気付いてフッと笑った。

「……何?」

「な、なんでもないよ!!」

そのまま花火を見つめた。なんでだろう、私も颯太みたいに違う物を見つめてしまう癖がついてしまったんだろうか。


*


演劇も一段落したし、先輩と同期でどこか食べにいきたいねーと相談していた。

マチさんがスイーツ的パラダイスはどう?とラインで提案してくる。

「それいいですね!」

「じゃあ明日のお昼に行こうかー」

こんな田舎にそんなパラダイスがあるとは知らなかった。


次の日、スイーツ的パラダイス当日。

お昼は食べずにお腹を空かせておいて、マチさんおすすめのスイーツ的パラダイスに向かう。同期の女子だけで。

「スイーツ的パラダイスはスパゲッティ―とピザもあるんだよ、小春、食べすぎないようにね」

とマチさんから注意される。

マチさんの風貌は本当にロゼリエッタに出てきた楊貴妃と似ている。待て待て気のせい気のせい…私の悪い癖…夢想癖。

「ここはスパゲッティとピザ食べ過ぎないようにねーメインはスイーツだから」

そう言われてそれぞれが好きなものを取りに行き、ひと心地ついたあとマチさんが呟いた。

「…で、小春は颯太君と付き合わないの?」

またその質問かー…

「つ、付き合ってませんよ!!気のせいです、…でもこの間二人で浴衣着て花火行きました…」

周りがどっと爆笑する。

「もういい加減付き合えば?もどかしいよ、中学の時から」

楓が笑う。

「…中学の頃からってどういうこと?」

マチさんが聞く。

「中学のときも花火大会いってたし、一回だけキスもされたらしいですよ、もう付き合ってるようなもんなんです二人は」

楓が全部バラしてしまう、なんてこった…

「そうだったのか…付き合ったら早めに教えてね、面白いから★」

そう言ってマチさんが笑う。

いや…なんでこんな笑われるんだろう、この話題…


*


今日も今日とて宿題放置で颯太の家でアニメを見ていた。

昔ゆうちゃんと一緒に見ていた機動戦士〇●ダムのアニメだ。

ロフトの上で二人して足をぶらぶらさせながら、片手にはアイスを持っていた。

「…ねえ、人は死んだら何処へ行くんだろうね」

「俺は最近、死なないと思ってるよ…」


え…どういうことなん?


「脳みそにチップをつけて老いた体を捨てて、電脳世界に行けると思う、このテクノロジーの発展具合なら」

ええ…そこまでして生きてたくないな…

「颯太は死にたいんじゃなかったっけ?」

「……今は…楽しいよ…小春と一緒に生きたいと思ってる」

「本当に…?」

「本当だよ」

嬉しい…、嬉しい!!

思わずアイスをもったまま、抱きついてしまった。

手の中のアイスが溶けていく。

颯太の横ではガン〇●に乗った人間が死んでいく。

颯太の顔がだんだん近づいてくる、もしかして…キ、

画面上で雑魚キャラが死んでしまう、思わず吹き出してしまう

「ちょ…、●〇逝ってしまったよ、颯太!!」

颯太がなんだか不満そうな顔でそうだな、とぼやいた。

危ない危ない、キスしたらムラムラされて、セっされるもんね!

さきちゃんの言葉の通りだ、おそらく。

処女は高校の間は守り抜くぞ!!

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