第九話 地縛少女まゆちゃん
今度の土曜、肝試しに近くの神社に行かねえと達也君からグループラインが来た。
私はもちろんオッケースタンプを押した。
やっぱり夏の風物詩は肝試しだよねえ。
行きたいとラインしたメンバーは達也君と一聖君、あとまゆちゃんと私と早智子ちゃん。
もう一人男子が欲しいなあと思ってたところで、私は思いついた。
田畑君誘ってもいい?
メッセージが既読になる。
みんなやっぱり嫌だっていうかなあ…ドキドキしながらラインの返事を待つ。
すると誘ってみてよ春ちゃん一緒に連れて行こうー!と前向きなラインが返ってきた。
これはすぐに誘いに行かないと…てかライン交換すれば早いよねこれと思いながら、田畑君の家に直撃レポート。
チャイムを鳴らしたら、ガタガタと音がして田畑君登場。
家では眼鏡派なんだな田畑君は。
私は生まれた時からずっと視力Aだから近眼の辛さがいまいち分かっていない。
「…なに、アニメ見に来たの?」
「違うよー今度の土曜に肝試し行こっ」
「誰と?」
「えーと、一聖君と達也君と、まゆちゃんと早智子ちゃん!」
やっぱり嫌っていうかなあ…
「いーよ何時から?」
えええええ!?
奇跡が起きてしまった。
あの田畑君が他の友達と遊びに行きたいと行ってくれるなんて!
「何時か決まったらラインするから、ライン交換しよう!」
「ラインのアプリとってないな…」
まずはそこからなのか…
「アプリとれた?あとフルフルすれば友達になれるよ」
フルフル振ると無事友達登録完了。
「小春のアイコン…キーティなの?」
「そだよーだって可愛いからキーティちゃん」
「そうか…キーティちゃんかわいいもんな」
ニヤニヤしながらアイコンを見つめる田畑君。
何がそんなに面白いのか…。
「田畑君もアイコン変えなよーなんか好きなアイコンにして背景画像も変えられるよー」
「…いや、すきなキャラいないし、背景も何がきれいか分からないからこれでいい」
…そうなのか…難しいな。
*
肝試し当日。
うちの近所にはよく幽霊が出ると噂される神社がある。
階段は結構長く続いていて薄暗い光が照らされている。
「みんな集まったかーじゃあ、適当に歩くぞ」
達也くんの言葉にみんなが頷いた。
まゆちゃんは霊感が強いみたいで階段を歩いていると気持ち悪くなってきたみたいだ。
それを一聖君がすかさず助けて手を繋いでいた。
達也君を見るとすかさず早智子ちゃんと話していていい雰囲気だ。
「怖いの、立花」
すかさず田畑君がこちらに向かってきた。
「こ、怖いけど…楽しいよ、こういう経験もいつか思い出になるじゃん…」
達也君は早智子ちゃんに惚れてるから、さりげなく肩を抱いていた。
おお…達也君やるなあ。
一聖君は特に恋心を抱いてもいないまゆちゃんに付き添いをしていてなんだか気の毒だ。
そして取り残された田畑君と私。
まさかこういう展開になると、知ってて、行くと言ってたの…?
「手でもつなぐ?」
二やけた笑みで田畑君が手を差し出す。
「いや、…大丈夫」
恐々と手すりに掴まって階段を登る。
私も霊感はないに等しいからこんなものは大したことないと思ってはいるものの怖いものは怖い。
階段を上りながら、田畑くんがぽつりと話し出した。
「幽霊っていると思う…?」
「いや居ないと思うよ、たまにテレビで幽霊特集やってるけど胡散臭いもん」
「俺の前…住んでたところ、…」
「え?」
「幽霊屋敷みたいだった、父親の顔も母親の顔も知らねえし…中学校までずっと顔もうろ覚えのおばさんに世話されてただけだから」
「それってお手伝いさんにずっと世話されてただけってこと」
「……うん」
そっか…颯太は親から愛情もらってないんだ、一つも。
なんでだろう、颯太は他人なのに、ひどい扱いされたのに。
「なんで……立花が、泣くの…?」
「分からない…辛くて……颯太」
「泣くなよ、…なんでお前が泣くんだよ」
「だから分からないんだって」
私の異変に気付いたのか一聖君が階段から降りてきて「大丈夫かー!?」と声をかけてくれた。
私は全然大丈夫、だけど颯太君のことを思うと苦しい。
助けたい、もっと笑顔が見たい、同情心でもなんでもなくて…
これってどういう感情なのかな…。
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