第八十七話 一番搾り
土曜日がきた。
わたしはみなとさきちゃんとゆうちゃんと久々に遊ぶことになった。
「はるちゃんー舞台感動したよー!演劇ってすごいんやね」と言ってくれたのはみな。
「まあ面白かったわーゴッドと天使長が」と言ってくれたのがゆうちゃん。
私もゴットと天使長はよく分からない。
さきちゃんがまた黙り込んでる。
なになにさきちゃん怖いよ…
「私上林と生でヤッちゃった…」
え…生ってどういうこと…ビールのことしか分からない…
震える声で私はさきちゃんに問う。
「さきちゃん、生ってなに」
「ゴム付けないでやること」さきちゃん!みなと私で詰め寄るゆうちゃんはボケーっとしている。さきちゃんは笑う。
「あとからピル飲んだから妊娠してないよ、オールオッケー」
さきちゃん…オールオッケーじゃないときもあるよ…
「なんでさきちゃん生でやったん?」
みなが深刻そうにさきちゃんに問う。
「いやーなんかヤッてみたかったというか…妊娠はしてないよオッケー」
「それならオールオッケーやわ」
ゆうちゃんも笑う。私とみなだけが深刻になっている。高校生が子供産んでしまう事例もあるし…どうしてさきちゃんはそんな破天荒なんだろう…
「生とゴムとどう違うの?」
「いや、あんまり変わらんよ、男側が気持ちいいだけ」
とだけ返された。そんな…こっちにはメリットも何もないのに…
ゆうちゃんが笑う。
「心配ゴム用」
またそんな適当すぎる…
*
次の日私は颯太の家に遊びにいった。
「あのさ…颯太」
「なに?」
「高校生が生でヤるのってやばくない?私の友達のさきちゃんが生でヤッてて…」
颯太は一瞬の沈黙の後、声を出さずに笑っていた。
え、これそんな笑いごとじゃない気がするんだけどな…
「高校生で妊娠しても大丈夫だよ、なんとかなる」
なんとか…でも、高校で他にやりたいことたくさんあるのに、子育てしなきゃいけないなんて辛すぎるよ…
「まあ、こわい話は置いといて、アニメでもみようぜ」
颯太…優しい。
「今日はこれにしとくか」
また出た。国民的大人気アニメこちとら亀有…。
「颯太、これ大好きだよね」
「ああ…小春に出会うまでずっと一人で見てた。小春が初めて家に来た時何もなかったのは、テレビが壊れて処分しただけだよ」
…なるほど、一人でぼーっとしてたわけじゃないんだ!
良かった良かった。
こちとら亀有はすべてが神回といっても過言ではないくらい面白い。主人公のりょうさんが破天荒すぎてたまについていけない時があるけど。
颯太は肩肘を立ててぼんやり見てる。
ロフトの上で足をぶら下げながらゲラゲラ笑う。
「腹減ったな、近くのコンビニでなにか買ってきてやるよ」
「嬉しい!私甘いスイーツ食べたいな」
分かった、と言って颯太が家を出ていく。
…なんだか、やっぱり颯太は私のことが好きな気がする。
気のせいじゃなくて…
颯太が家に帰ってくる。
「颯太…」
「なに?」
「颯太って私のこと好き?」
ロフトの上から聞くと颯太は俯いて考えていた。
「好きだよ」
「…それはどういう意味で」
「………友達、として」
そうなのか、良かった。
*
次の日もひたすら基礎訓練エチュード。
京子ちゃんと一聖君は今日は参加するみたいだ。
村田さんが手を叩く。
「じゃあ、一聖と小春でお題はシスコン。
一聖「おい小春、ちゃんと勉強してるのか、なにか分からないことあったらいつでも相談してくれよ」
小春「はあ~?チョーうざい、いい加減妹離れしてよね、テストなんていつも満点だから、バカ兄貴と一緒にしないで」
一聖「そうか…小春も大人になったな…なあ彼氏はいるのか!?」
小春「なんで兄貴にそこまで言わなきゃいけないの!?ウザイったらウザイのよ!」
一聖「小春~」
「いいぞ!二人とも俺の妹可愛いの兄妹をよく履修している。
草薙先輩が絶賛してくれた、嬉しい…!
「次はヨッシーと一聖と春ちゃんででお題はハルヒ憂鬱だ」
小春「いつまでこの次元にとどまってるつもり?
一聖「え、何を言ってるんですか神よ。もっと私にこの世界を見せてください!
小春「私は神ではない」
一聖「えっ…神ではない」
ヨッシー「ゴッドは俺だ」
(いつの間にか登場)
ヨッシー「あなたはこれまでに幾つの世界を巡ってきたか理解してるか?」
一聖「え、そうだな…大分記憶があいまいだけど100回くらい?」
ヨッシー「違う、あなたはこれで2000の世界を巡り、そして15500回に及ぶループを繰り返している
一聖「そ、んな…」
ガクリと膝を落とすジェスチャー。
「いいぞ!ハルヒ憂鬱の世界観をみんな熟知してるな…!」
草薙さんがまた褒めてくれた…嬉しい!




