第六話 花火大会①
みなとまゆちゃんがチャリをこいで家まで走ってきてくれた。
外は暑いのに申し訳ないけど嬉しい。
お母さんは留守なのでいつものたまり場で騒ぐ。
私達3人が今ハマっているの子供が家庭内で戦争しているドラマだ。
これを3人で必死に見て次どうなるのこれ?明日またみたいー!と騒ぐ。
喉が渇いたから、みんなに麦茶を配りながらお菓子を食べて最近の近況をギャーギャー喋る。
「しかしさー、さきちゃんが処女喪失したのは驚きだよね」
まゆちゃんが笑って言う。
「確かに、でもうちはヤラハタは嫌かも…」とみなが言う。
「やらはたってなにけ?」
「春ちゃん、20前にセックスしないとヤラハタになるんよ…」
みなが深刻そうに言う。
私はヤラハタでもいいけどなあ。
初体験は痛いらしいから怖いし。
赤ちゃん産むのも地獄なみの痛さらしいから産みたくないし。世話する自信もない。
「それより春ちゃん、田畑とめっちゃ仲いいねどうしたん!?」
みなが楽しそうに笑う。やっぱりその質問来たかー。
もう言っちゃってもいいかな…。
「実はうちの近くに田畑君が引っ越してきて、アニメ一緒に見たりしとるん…」
「「ええええ!!??」」
どういうこと、どういうことと二人が慌てふためいてる。
私もいまいち何が起こってるのか分かってない。
「どうやって中に入ってるん」
と聞かれたので、スクバから合鍵を取り出した。
「これ使って、いつでも来ていいよ…って」
二人が爆笑してる。みながワクワクした表情で教えてくれた。
「春ちゃん、前から思ってたけど、もう田畑に間違いなく惚れられとるよ」
「マジか…でも本人が認めてくれないからよく分からんくて」
まゆちゃんはひたすら爆笑中。
「春ちゃんが今後どうしていきたいかかがポイントやと思う」
みながはっきりと断言した。
私は田畑とどうなりたいんだろう…友達、恋人…?
でもまだ中学生だし、そういうの、怖い…
「とりあえず、明後日一緒に花火見にいくんよ…センスよさげな服を教えて」
花火という単語ででまた「「えええええ!?」」と二人が騒ぐ。
「花火は春ちゃんが誘ったんよね?」
「うん、なんか田畑と見たくって」
みながフッと笑って言った。
「任せとかれ、春ちゃんの家にある服で一番かわいいやつ選んでコーディネイトするちゃ」
ありがたい。
私のファッションセンスは皆無に近いし、お父さんが戦争が好きなせいでよく迷彩柄のズボン穿かされてるからほんまありがたい。
「また花火の感想教えてね」と念を押されるように言われた。
分かった。この服着て花火に行ってくる。
*
8月3日花火大会。
みなに選んでもらったのはいつ買ったのか分からないロゴ入り半袖に花柄のスカートと、お母さんに最近買ってもらったキレイめなサンダル。
髪の毛には星の入ったヘアピンをつけている。
マンション前のインターフォンを押す。
「颯太ー来たよ」
「…ん」
颯太は真っ黒いシャツに真っ黒なジーンズを着ていた。
なんだか暑そうなファッションだ。
二人で家を出る。花火大会は七時半からで、今は六時だから余裕で席もとれるはずだ。
外から出た瞬間、颯太はあっちぃと不快そうな声を出す。
「暑いの苦手なの?」
「あー…俺夏が一番嫌い暑いし生ごみすぐ腐るし今日は暑いしか言わないかもしれない」
暑いしか言わない会話ってする意味あるのかな…
「夏って好きなんだ私、暑い中汗かくのも気持ちいいしプールも最高だよ」
「そう、なんだ…」
「今度プールも行く?」
「それは行かない」
そうか…プールは駄目だったか…。
お祭り開始まであと一時間あるけど、早めに行かないと席がとれない。二人でバスに乗って花火大会会場まで向かう。
「…花火ってなにが楽しいの?」
颯太がぽつりとつぶやいた。
「だってきれいじゃん!絶対楽しいよ!」
「ふーん…」
と颯太がなんとなく気の乗らない表情をしていた。
バスに揺られながらワクワクしていた。絶対楽しいと言わせてみせる。
*
お祭り会場到着!
案の定人で賑わってて席取れるか心配だったけどなんとか綺麗に見える所をブルーシートで確保した。
「颯太、何が食べたい?私買ってくるよ!」
「じゃあ飲み物と…フランクフルトとか?」
そういって私に2000円も渡してきた。いっぱい食べ物買えるじゃん…!
「お釣りは返すから、そこで待っててね!」
と言って屋台へ急ぐ。出店がいくつもあって食べたいものがたくさんある。
とりあえずフランクフルトと、飲み物二つ、それからたこ焼きとかき氷を買って席に帰ってきた。
「颯太、お待たせ!買ってきたよ!これお釣りね」
「お釣りいいよ、手間賃ってことで」
いいのかな…じゃあありがたくいただいておこう。
「花火上がるの7時からだよー楽しみだね」
「まあ小春がそんないいっていうなら楽しみかもな」
まもなく花火が始まりますとアナウンスが始まった。
ドキドキしてきた。
実を言うと花火自体見るの久しぶりだった。
友達は別の友達と行くっていいうパターンが多かったり、都合が悪かったりで。
「お待たせしました!それでは5千発の花火が夜空を彩ります!ご鑑賞ください!」
アナウンスの後ひゅーと音がしたらドンっと花火が上がった。
それから河川敷から何発も上がって目がチカチカする。
「綺麗だね、颯太」
「……花火ってこういうものなんだ」
「そうだよー!お金だけはたくさん持ってるじゃん!これからどんどん出かけようよ!」
颯太はびっくりした顔でじっとこっちを見ていた。
それから綺麗に笑った。いつもの馬鹿にしたような笑いじゃなくて。
「…そうだな」
「ほら次のあがった!これは魚のカタチしてる!」
「かき氷とけそう」
そう言われて、慌てて口に入れる。
美味しいな、やっぱりかき氷はイチゴシロップに限る。
「俺も一口」
「はい、いつでも食べて」
「……甘」
楽しい、だけどすごくドキドキする、異性と二人きりで花火を見てるなんてリア充にもほどがある。まあ私の人生は体が弱いだけで他は楽しいことだらけだけど。
次々と上がる花火を見ながら突然颯太が吹きだした。
「な、なにどうしたん」
「いや……あそこの、はげの人…」
…あの人がどうしたの?
「ちょうどあの人の頭から花火が上がってるみたいでウケた…」
「ちょっ…うははっ、やめ、おかしすぎる」
颯太が突然こんなこと言いだすからせっかく花火を満喫していたのに、もうハゲのおっさんの頭から花火が噴出してるようにしか見えない。
「それでは最後になります!夜空を彩る大きな花々をご覧ください!」
アナウンスの人の声で、次から次へと花火が上がった。
夜空に浮かぶ花火が夜空一面を彩って今にもこちらに落ちて着そうなくらい綺麗だ。
ふと颯太の顔を見た。
真剣に花火を見入ってるようだった。
連れてきてよかったな、颯太が少しでも楽しいと思えることが嬉しい。
あっという間に花火は終わった。
みんなが退散していく中私たちは冷めてしまったフランクフルトやたこ焼きを食べていた。
「楽しかったね、颯太」
「…楽しかった」
嬉しいな、あんなに世界中何もかもがつまらなそうにしてる颯太がそう言うなんて。
じゃあ、帰ろうかと席を立ち、バス乗り場に急ぐ。
「…また」
「え?」
「来年、高校生になっても、小春と見たい、花火」
「見よう見よう!じゃ約束」
そう言って指切りした。
これからの人生、楽しいことたくさんあるよ、颯太。
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