第五十四話 永遠
「…瞳…大丈夫か?」
あの男を追えないと分かるやいなや
ガイさんが慌てて、私のほうへ駆け寄ってきた。
少しづつ近づいてくる影。
瞬間、ガイさんがあの男を見る目を思い出し体が竦んだ。
赤い龍のタトゥー。
人を射殺すようなあの目。
怖い
怖い…!!
「いやっ!」
肩に触れようとしていた手を、勢いよく跳ねつけてはっと我に返る。
目の前の傷ついた目に、心臓がずきりときしんだ。
「あ…ご、ごめんなさ…私…私」
『…瞳、お疲れ』
目の前の人は、私に優しく笑いかけてくれたガイさんなのに
…どうしよう、どうして?
怖くてたまらない。
「あ、の…ひっ!」
真剣な眼差しが間近に迫る。
ぐいっと腕を引き寄せられ、気づけば抱きしめられていた。
「ガイさん、苦し…」
ぎりぎりと締め付けるような腕の強さに驚く。
体を捩じらせるようにもがくが、腕の強さは強くなるばかりだった。
「ごめん、…瞳」
「ガイ、さん…?」
ガイさんは私の耳元でもう一度だけ小さく謝って。
頭をぐしゃっと撫で付けて、離れていった。
「…悪かったな、突然」
ガイさんは優しく微笑んでくれた。
けれど笑っているのに、なぜか泣きそうな顔に見えた。
心臓が痛い、…痛くてたまらない。
どうして、そんな顔するの…?
「見せ付けてくれるわね、ボス」
凛とした声に顔をあげると
さっきの綺麗な女の人がこちらをじっと見つめているのに気づく。
いままでのやり取りを全て見られてたのかと思うと顔が赤くなった。
「へえ。次はその女がターゲットなの…どこへ行こうと女好きなところは変わらないわね」
女好き…?
「昔は人妻好きだったのに…次は高校生?趣味変わったの?」
…人妻?
その言葉にガイさんは苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
「真知…頼むから黙っててくれ」
「へえーこれは面白いことになってきたねえ」
ジョンさんはにやにやした顔で現状を眺めていたが、やがてすっと真顔になってガイさんに問う。
「で、このあと、どうすんの?ボス」
「ああ、…とりあえず今から再見に行くぞ」
潰れたバーの中で、美咲は一人薄く笑う。
「ふふふ、ふふふふふ。そう。これは余興。」
手に持っていた写真にライターの火を付ける。
「もうすぐ…もうすぐよ」
写真の中の瞳の顔が焦げていく。
「土屋君は…永遠にあたしのものになる」




