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第五話 たこ焼き記念日①

今日の授業も全く頭に入らなかった。

「春ちゃーん、放課後部活終わったら一緒に帰ろっ」

とみなに誘われる。

「ごめん、みな…今日は一人で帰るね」

みなが心配そうに分かった、と呟いた。


放課後の部活も放心状態でフルートを吹いていて厳しい吹奏楽部の先生にフルート3番適当に吹いてると怒られてしまった。

なんとか部活を終えて、席に戻ろうとすると萌ちゃんと田畑くんが団欒していた。

あれ、なんだかもやもやする…。


「田畑君、帰ろう」

「おう」

声をかけると田畑君は、素早く萌ちゃんとの会話を終わらせた。

スクバを持ち上げて、私は田畑君とチャリで家まで帰る。


*


颯太の家に着いてそうそう私は呟いてしまった。

「颯太ってめちゃカッコいい顔してたんやね」

「…なんで今更気づいたの?」

「いやいつも頭ぼさぼさだし、目も見えないくらいだったから…」

「…そう、気づけて良かったな」

「いや…良くはない」

「なんで?」

「だって颯太は女にモテたくないんでしょ?」

「…モテたくねえよ、反吐が出そう。ただ、それを見てる立花が面白いと思っただけ」


意味が分からない…私優しい人が好きだから、もう…こんな奴どうでもいい。


「じゃ、帰るね」

と玄関まで歩こうとしたら手を握られて止められた。

「…何?」

「今日は俺の家でアニメ見ない?」


アニメ…!?


私の家はお父さんがよく分からない無線の趣味を持ってるからアニメはなかなか見れない。

wifi接続さえしてないし…。

だから私の部屋は漫画しかない。


「見たい見たい!何のアニメ!?」

「……アニメストアと契約したから何でも見れる」


えええ!!?

見放題!?

颯太の家まで自転車をぶっちぎって到着。


「何、何!?颯太のおすすめ見よう!」

「…まずはこれ」


ペンギンが回ってるアニメ…これは何?

「これ地下鉄サリン事件をモチーフにしたアニメな」

アニメのOPだけ見せられてどんどん話が続いていく。

「あー…これは原作神なのにアニメはクソのやつ、見る価値なし」


そうなんだ…でも確かに漫画と画風が違うし長々とオリジナルアニメ?があるから面倒臭そう。

でも忍者のアニメはやっぱり声がカッコいい。

民放しか入らないからレコーダーに無理やり録画しては巻き戻し見てるけど。


「なんで漫画にそんな詳しいの?」

「…なんでって漫画喫茶で読んでたから覚えた」

「そうなん!?」

私はポンコツだから何度も読み返さないと覚えられない。

さすが颯太。


マンガ喫茶を満喫した男…。


「ねえ!先生と一緒に今度アニメ見ない?」

「先生って誰だよ」

「大野和幸君だよ!めっちゃアニメに詳しいから楽しいよ!」

沈黙のあとに颯太が呟く。

「そいつは連れてこないでほしい」

え、そうなんだ…私、颯太に友達が増えたら絶対楽しいと思ってたんだけどな…


*


「ただいまー」と言ったらお母さんが元気そうな声でお帰りという。

最近学校はどう?と聞かれて私は返事に困っていた。

まさか田畑君と仲が良くて家にしょっちゅう遊びにいってるなんていえるわけがない。

でも、なんだか…お母さんには言いたい。

「お母さん、あのさ、」

「何?」

「…最近、田畑君と仲いいんだ、私…」

お母さんが呆然とした顔でこちらをみている。

「あんた、また、変なことに首突っ込んでないいやろうね…お母さん心配でかなわんわ」

と嘆かれた。

こんな時お兄ちゃんがいればうまく弁護するやり方教えてくれたかもしれないのになあ…

「でも田畑君、アニメも漫画も好きで実は優しいんよ、もう椅子も蹴らないし、隣の席になったし今度うちの家につれてきてタコパでもしないかなって」

お母さんが真剣そうに考えている。

「そうね…小春がそうしたいなら、お母さん材料買ってきてあげる」

やった!週末は田畑君とたこパだー



待ちに待った休日。

嫌そうにしてる田畑君を無理やり引き連れて私の家に上がらせる。

「お母さんー田畑君連れてきたよー!」

「こんにちはー田畑君」

「こんちは、です。あの、俺立花さんにいろいろひどいことしてきたのにお家にお伺いしてよろしかったでしょうか?」

おそるおそるお母さんに尋ねる田畑君。

こんな丁寧な言葉を喋れるなんて知らなかった。

「いいよ!仲良くなったんなら許すよ!でも…「二度と」娘に変なことしないでね」

笑顔の裏には大分怒りを感じられる。

お母さん…すごい…演技力…女優になれる

いや…歌もうまいし歌手か…バスガイドにもなりたかったらしいし可能性が無限大だ。


私の部屋は2階。

一つは漫画倉庫で、もう一つは来客用、いわゆる友人のたまり場となっている。

小学校の頃はよくかくれんぼや、鬼ごっこ、バトミントンなどなど数えきれないくらいしてた。

一番ウケたエピソードはかくれんぼしてた時、なかなかまゆちゃんが見つからなくて探してたらなんと窓を開けて屋根の上に隠れていたことだ。

今考えたら恐ろしすぎる。

「じゃあさっそく2階でタコパやろー」

私の後に田畑君がついてくる。

タコパの準備は完成済みだ。あとは赤ショウガをまぜてたこ焼き機でくるくる回して食べるだけ。

「よく分からないから、小春やって」

「いいよー見てて」

田畑君はやっぱり不思議だ。

いろんなことを知ってるくせにこういう庶民的なことには疎い。

くるくる混ぜて紙の皿にのせてあげる

「はい、出来立て美味しいよー!たこ焼きソースもつけてね」

田畑君はソースをつけて一口食べた。

「…………美味い」

やった!美味しいって!

あんなに給食をまずそうに食べてたのに…これは人間として間違いなく更生されつつある。

「どんどん焼くからどんどん食べて!」

田畑君と一緒に民放を見ながらたこ焼きを食べるの楽しいな。

「ねえ、楽しい、颯太?」

「…楽しい」

良かった、こんなことで楽しくなってくれて。

たこパの余韻に浸る間もなくお父さんがここらへんで有名なケーキ屋でケーキを買ってきてくれる。

「デザートがわりに田畑君に食べさせてやれ」

と言われる。

箱を開けると宝物みたいにキラキラしたケーキが並んでいる。

「颯太君はなにケーキが好き?私イチゴショート!」

「俺は…チーズケーキかチョコかな」

ぞれぞれの好みにあったケーキを食べて民放を見る。

最近人気のお笑い芸人のネタに爆笑してたら、颯太はテレビじゃなくて、こっちをじっと見つめていた。

「テレビ見ないの?颯太?」

「小春を見てるほうが楽しいから」


*


余ったケーキは颯太が持って帰った。

二人きりでいるときは颯太呼びになっちゃったな…

でもなんだか楽しい。


幸せだなー。


期末テストが終われば夏休みだし。

宿題はまあ、8月31日で大丈夫だろうと毎年言って毎年ひどい目にあって楓や家族に怒られる。お決まりのパターン。

なんで勉強しないといけないのかなあ。

面倒くさい。

中学にもなるとみんなファッションにも興味を持ち出して可愛い服を着ている。

でも私は可愛い服よりもっともっと薄い本と分厚い本と漫画がほしいと思っていた。

浴衣着て好きな人と花火とか、見てみたいよね…。

クラスで私に好意を寄せてきた相手より、なぜか私は颯太と見てみたいと考えていた。

クラブ活動で作ったよれよれの浴衣で、夏は花火でも見に行こうかな、颯太と。


クラブ活動に浴衣づくりなんて選択しなきゃよかったな…。

ミシンとかうまく使えんし…。

ゆうちゃんは浴衣づくりのプロだ。

よどみない手つきで浴衣を作っていく。

「ゆ、ゆうちゃん」

「立花、どうしたん?」

「浴衣の作り方教えてほしい…」

ゆうちゃんはなんでそつなくなんでもできるのか羨ましすぎる才能だ。

「そんなん先生の話聞いて作り方の本見ればわかるやろ、私は自分の作るので手一杯だから」

と一蹴されてしまった。

確かに正論だ。

他人の浴衣づくりなんて手伝ってる場合じゃないよね…。

ゆうちゃんが何か思いついたような顔で笑う。

「田畑と花火大会でも行くんけー?」

…なんでバレてしまったんだろ…

「私服で行けばいいかなあ」

「立花の好きにすればいいんやないー?まあ新しい服買ったほうがいいと思うけど」

そうか。私服でも行っていいよね。

もうすぐ夏休みだ。8月3日の近場で一番打ち上げ数が多いところがいいよね。

親に頼むのはまた面倒くさいから、バスとか使って行ってみようかな。

あー早く期末テスト終わらないかな。

夏期講習なんて絶対やりたくない。


*


期末テスト終わったー!

夏休みだ!友達といっぱい遊ぶぞー!!

相変わらず颯太が1位で私が2位だったけど最近はどうでもよくなってきた。

「春ちゃん家明日行っていい?」

「私も私もー!!」

とりあえず順番に来てもらうことにしよう。

「じゃあ明日はみなとまゆちゃん来てーまた携帯で連絡するからみんな遊ぼうー」

「オッケーだよ!連絡待ってるからね!」

みんなも友達多い人ばっかりだからそれぞれ友達に誘いまくってる。

「颯太君、夏休み何するの?」

「…宿題」

「えー!そんなのもったいないよ!遊ぼうよ!!花火大会一緒に行こう!!」

「家でやる線香花火でよくね?」

「違うよー!生で見る花火は最高なんだよ!だから二人で行こう8月3日迎えに行くから」


あれ、そういえば、学校でも颯太って呼んでるな。まあもう今更だしいいかな。


「じゃあ……行く」

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