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第四十四話 ガイ…さん!!??

あの大変な事件から1ヶ月は経った

風神メンバーも無事に退院することができた


そしてあたしはというと…



「瞳ー、Aセットあっちのテーブル持ってけ」

「はい!」


従業員の人に言われ、お客様まで料理を運ぶ

運んだ後、厨房に戻ろうとした時、後ろに誰かが立っているのに気づいた


「どうだ、仕事にはなれたか?」

「ガイさん!」


目が合うと、その人物は爽やかな笑みを浮かべた


この人は中華料理店 再来ツァイツェンの店長

巻貝秀樹マキガイ ヒデキさん

年はあたしと3つ違う

みんなは巻貝だから、親しみを込めて「ガイさん」と呼んでいる


【待って待ってガイさんってうちの家の近くのどういうこと!?どういうこと!?教えてよ瞳さん…】



エプロンの下に着ているのは

金色の龍の紋章の入った真っ赤なジャケット

中に着込んでいるのは夜桜が舞う真っ黒なシャツ

すごく…派手だ



顔つきはキリッと男らしい

意志の強そうな目、そして漆黒の髪に映えるもみあげ


おそらくあたしは

もみあげがこんなに似合う人を

今まで見たことがないだろう


「あ、お客様帰られますよ!ありがとうございましたー」

「再見再見!」



ガイさんは生粋の日本人だが

一時期中国で暮らしていたことがあるので

たまに中国語が混じったりする


そう


あたしはバイトを始めたのだ


バイトをしなくても、親からの仕送りで暮らせることはできた

だけどあたしの中で新しい気持ちが育ち始めていた

もっと、いろんな人と関わってみたい

…今までの分を取り戻すくらいに


そういうわけであたしはこの店で

週末だけバイトすることにしたのだ


午後11時

ようやく店じまいが完了した

暖簾を片付けていると後ろから肩を叩かれた


「瞳、辛苦了!(お疲れ)」

「中国語でしゃべられると、分からないですよ」

「おっと、対不起対不起すまんすまん

「それにしても今日はあっついなあ…38度ぐらいあるんじゃね?」

「そんな暑いわけないですよーもう冬も近いんですから…腕まくりしたらどうですか?」

「ん、…まあそうだな」


それより、と話を切られる


「どうだ、一杯やってかないか?おごるから」

「え、でも明日学校で、…」

「ああん!?んなクソ真面目に学校なんて行かなくていいんだよ!俺なんて小学以来、学校なんざろくに行ってねえ!」


あのー…


そんなドヤ顔で言われても…


そもそも小学以来はさすがにまずいんじゃ…


「ほら、行くぞ!」


まあ、この人に世間一般常識なんて関係ないか…


そのまま腕を捕まれ、なかば強引に引きずられていった

案内されたのは

裏路地にぽつんと立っていたお店




居酒屋 旗旗(ハタハタだった


「いらっしゃいやせー!!!お、ガイさん久しぶり!!」


暖簾をくぐると威勢の良い従業員達が

迎えてくれてびっくりする


熱いおしぼりで手を拭きながら

メニューをざっと眺める

飲酒は…まだ、駄目だよね…



「ドリンクは何にしやすか?」

「そうだな、テキーラ一つと…何がいい?」

「え、ええと、まだ未成年だしオレンジジュースとかで…」

「ああ?…構わん、お前も飲め!こいつは梅酒ロック一つで」

「ええ…!?ちょ、ガイさん!!」


オーダーを頼み終えて、店員が去っていく

あたしは小声でガイさんに抗議する

「ガイさん…あたし飲めませんって!」

「大丈夫、大丈夫…梅酒なら飲めるって」


そうこういってるうちにすぐに飲み物がやってきた

店員があたしにむかって問いかける


「すいません、では乾杯させてもらってよろしいっすか?」

「え、え?乾杯??」


わけが分からなくて混乱してるあたしにガイさんが耳打ちしてくれる


「この店は最初に来た客と他の客と一緒に乾杯するんだよ」


あ、じゃあお願いしますと店員にうなづくと、店員は店中に響き渡る声で叫んだ


「今日も一日お疲れさまっしたー乾杯!!」


*


金曜日の夜11時。


ちょうどそういう時間なのか、店内は大学生やサラリーマン達でにぎわっていた。


…あきらかに高校生のあたしは場違いだ。


今日はたまたま家に一度帰って私服に着替えていたからよかったものの…。

制服だったら間違いなく補導されてる。


そんなことお構い無く、ガイさんは上機嫌でテキーラをぐびぐびと飲んでいる。

「ん?なんだ瞳、飲まないのか?」


…だからあたし未成年…。

もういいや…。

こうなったら飲んでやる!!


思い切って目の前にあった梅酒を口に流し込んだ。


ごくん。


「………」

「どうだ?」

「…おいしい。」


口に含んだ瞬間驚くほどの甘ったるさが広がって、思考がとろけるような感覚に陥った。

何がアルコールなのかはよく分からないが、とりあえずこんなにおいしいとは思わなかった。


「ははは!そうだろ?さ、今日は俺の奢りだ。飲め飲め!!」


言われるがままにあたしは飲んだ。

甘いのでジュース感覚で3杯ほど飲むと、さすがに少しふらふらした。


「おっ瞳どうした?」

「ぃえ…ちょっと頭がほわほわするだけです。」

「あっはっは!!もうギブアップか?ぃやまだいけるだろ。すみませーん!梅酒ソーダ割追加!」



勝手に追加してるし!

ていうかガイさんもさっきからテキーラ5杯くらい飲んでない?


「ガイさんてお酒強いんですね」

「いや別に強かないよ。飲みなれてるだけさ」

そういいながらガイさんはまたテキーラを注文した。

「あれ?でもガイさんて確か…二十歳ですよね?」


なんでそんな飲みなれて?


「ばかやろう!歳なんか関係ないんだよ。俺は中学入った時には嗜んでたさ」


…バカはあんただ。




ケータイが鳴った。

見るとNo3君からの電話だ。

ガイさんに一言謝って電話に出た。


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