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第四十三話 桜
『嫌だ!!お前がいなくなったら、っ俺は…!』
あの日から
ずっと
繰り返し見る夢
真っ白で無機質な空間で
愛しい人が散っていく
それはまるで
刹那の間に儚く散っていく
一輪の紅桜のようで…
『……あんたは生きな』
握った手のひらが冷たくなっていく
駄目だ
行くな、
…行くなよ!!
桜…
俺は、俺は…!
「…夢か」
目を覚ますと、真っ白な天井が目に映る
自室だと分かり、ため息をつく
あの夢…
最近は見ていなかったのに
「…くそっ…」
あの日以来、瞳は変わったと思う
前ほど後向きな発言をしない
目に輝きが戻っている
彼女の止まったままだった時計の針は、少しづつ進み始めたのだ
なのに
俺は過去から抜け出せないまま
いつまでも、いつまでも
囚われ続けている




