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第三十九話 カッコいい女

「…それから一年もしないうちに、アンディが少年院を出ることをしったの。絵理子や、族のみんなが助けてくれて、私はこの町に逃げてきた。」


話し終わると、病室は重い沈黙につつまれた。


「…みんなのこと、巻き込んじゃって、迷惑かけて、本当にごめんなさい」


頭を下げる。

あんな巻き込み方をしておいて、

こんな大事なことを今まで黙っていた。


嫌われるのが怖かった。

避けられるのが怖かった。


…もう一緒にいられないかもしれない。


「辛かったね」

「…え?」

驚いて声のした方を見ると、No3君が泣いていた。

「一人でそんなことため込んで!もっと早く話してくれればよかったのに!」

「お前に話しても労力の無駄だろう」

「かーくんひどい!」


…あれ?

あたしのこと、避けないの?

「ま、話してくれてよかったよ」

かずゆきはふっと息を吐いた。


「俺たち、瞳ちゃんから話してくれるの待ってたんだよ」


No3君が柔らかく笑う。

…こんな話しを聞いたのに…


「…嫌いに…ならないの?私のこと」

「なんで?」

「なるわけないじゃん!」


かずゆきは不愉快そうに顔をしかめ、

No3君は身を乗り出した。


「…ありがとう」


よかった


この人達に話せて。


「なんだ。風神がいる」


部屋の入り口から声がした。

全員一斉に振り向いた。


「…絵理子!!」

そこにいたのは絵理子だった。

「来るのが遅れてすまん。何かと後始末が面倒でな。あ、これお見舞い、おい!入り口にいたやつ!」

「うす!」

後ろから諒が出てきた。

「これお見舞いだから花瓶にいけといてくれ」

「うす!」

「頼んだぞ」


諒はすぐに出て行った。

「…バラの花束…」

「なんか負けた!」

「いやそういう問題じゃないだろ」

相変わらずNo3君とかずゆきのやりとりは秀逸だ。


「あ…ありがとう」

「具合はどうだ?」

「うん。もう全然大丈夫。絵理子もごめんね。いっぱい迷惑かけて」

「バカ。無事ならそれでいい。…瞳、久しぶりだな」


倉庫ではあの騒動の最中だったからそれどころではなかったが、もう半年ぶりの再開だった。


「うん。」

「瞳、痩せたな」

絵理子は目を細める。

「でも、最後に会った時より…幸せそうだ。」

「…風神のみんなのおかげなの」


みんなのおかげで

あたしは今ここに生きてるんだ。

「お見舞いがてら、さっきの瞳の話に付け足し」

絵理子はソファに腰掛けて足を組んだ。

「付け足し?」

「伏見アンディのこと。」

アンディの…?

心臓がなる。

絵理子の次の言葉を待った。

「さっき瞳が言った通り、伏見は風俗嬢と客の間に生まれた。それでも一応母親と暮らしていたんだが、とうとう出て行ってしまったらしいんだ。…たつのぶが死んだ日の、2週間ほど前に。」


2週間前…


確か、アンディがおかしくなり始めた頃だ…!

たつのぶが最初に襲われたのもその頃…。


「たぶんあいつがおかしくなった原因の一つだろう。母親が出て行ったことで、伏見は一人になった。愛されてなかったことが明らかになった。おそらく、もう瞳しかいなかったんだろうな。」


あたししか…。

でもアンディ、あたしは確かに、あなたを愛していたよ。

「瞳が自分以外と仲良くするのがどうしても許せなかったんだろう。

まぁ、もともと頭はおかしかったんだろうが、それでプッツリ切れちゃったんじゃないか?」

アンディも…辛かったのかな。

あたしがちゃんと愛を伝えてあげてれば、

あんなことにはならなかったのかな。

理解してあげてれば


たつのぶは…



「瞳を逃してすぐ、あいつはJOKERを作った。もともと人を引き付ける何かがあったやつだからな。…詩織が入ったのもその頃だ」

「それからのアンディは、本当にきちがいとしか言いようがなかったよ。瞳を探してるのも知ってた。どうにかして早く食い止めたかったんだが、…間に合わなかった。すまん。瞳」


絵理子は悔しそうにうつ向いた。


「ううん!十分助けてもらったよ。本当にありがとう。」

絵理子とあたしは微笑みあった。

「話はこれだけだ」

絵理子はふっと息をはいた。

「なるほどね。これでこっちの情報とも繋がった」

かずゆきはいつの間にかパソコンを開いていた。

「かーくんどんくらい情報持ってたの?」

「ないしょ。」

諒がバラを生けて戻ってきた。

絵理子はそれと同時に立ち上がる。

「それじゃ、あたしは帰るかな。これから集会だし。」

「ありがとね絵理子。

…会えて嬉しかった。本当に」


絵理子はあたしを見て微笑む。


「私もだ。早く元気になれよ、瞳。」

そして病室を出る前にもう一度振り向くと、風神メンバーに向かって口を開いた。

「伏見はいったん落ち着いたが、まだ油断はできない。お前らに瞳を託す。絶対守れよ」

「…当たり前。」


総長が答えた。



「瞳ちゃんは、絶対守る」

No3君も力強く続く。


かずゆきは何もいわなかった。

こんなに迷惑かけたのに…

迷わず「守る」と言ってくれた。


胸が熱くなる


あたしは本当に、仲間に恵まれてるんだ。



幸せなんだな。きっと。

たつのぶ

あたしは大丈夫。



大丈夫だよ。

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