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第三十二話 RIDAの総長絵里子、超絶美少女沙織

間違いない


絵理子だ


モデルのように整った容姿

長い茶色の髪は

真っ赤な特攻服によく映えていた


そして背後にも見知った顔の女が立っていた


沙織まで…!?


真っ黒でまっすぐな髪に紫のメッシュ


紫色の特攻服

上品で知的な顔立ち

とても暴走族の副総長には見えない優雅さ

間違いなく沙織だ


「沙織はいまのうちに、メンバーを連れて雑魚を潰してきてくれ

こいつは…私がやる」

「分かった!」


絵理子の指示を仰ぎ、即座に沙織はこの場を離れていく

絵理子は土屋くんを一瞥してため息をついた


「楓神のボスは、…戦えないみたいだな」

「絵理子…な、んで…」

「話は後だ、先にこいつを片付ける」


アンディは落としていた真っ青な剣を再び拾い上げていた

同時に絵里子は腰に指してあった、黄金に輝く剣をすばやく抜き取る

そして言葉もなく戦いがはじまった

剣と剣が激しくぶつかり合う

隙をねらいアンディが殴ろうとするのを絵理子はかわす

かわしたせいで体勢が下向きになった隙に

足元に蹴りを入れようとしたが

アンディが空中に飛んでかわす

そして再び刃と刃がぶつかりあう

流れるような戦いだ、と思った


二人は一旦距離をとる

辺りは強烈な殺意で満ちていた


「強い強い強いねえ絵理子!!それでこそ俺の宿敵!!それでこそ俺の手に欲しい!!」


アンディの言葉に疑問が浮かんだ

二人は、知り合いだったのだろうか…


「何をごちゃごちゃと…」

「俺の仲間になりなよ!!」

「まだそんな事を…なんにせよ断る」


「それじゃあ、こうしようよ!!

君が勝ったら、瞳は解放してあげるよ!!」

「私が負けたら?」

「もちろんチームは解散!君には俺のチームに入ってもらうよ!!」

「ふん、いいだろう」

ふっと笑い絵理子は再び構えた

「お前が約束を守らない奴だということは知ってる

だから、ここで蹴散らす!!」



*


「くそっ…数が減らねえ!!」

かずゆきはおびただしい数のJOKERに舌打ちした

(人数だけは無駄に多いんだよな、雑魚ばっかだけど)

「おい、NO3」

呼びかけた声に反応がない

何事かと振り返ると、N03は床に倒れふしていた

「おい!!」

「へへっ…ちょっとがんばりすぎた、かも」

特攻服のみぞおち辺りから血が滲んでいる

傷口が開いたのか…

「…止血しとけつーかもう、お前は戦わなくていいから死んだフリしてろ」

「大丈夫、まだやれるよ!」

強がって立ち上がろうとした

だが力が入らないのかなかなか立ち上がることができない

「おい、無理すんじゃねえ」

そのときまた、眩暈が訪れた

自分の身体も、血を流しすぎてそろそろやばいらしい

「かーくん!」

どうにか足に力を入れ、倒れるのは避けられた



前方から来る敵を殴り倒す

腕の感覚がだんだん分からなくなってきていた

そのうえ、No3もこんな状態だ

(このままだとまずいな…)

またしても前方から人影が現れる

紫色やピンク色の特攻服を着た集団がこちらに向かって歩いてくる

しかも全員女だ

RIDAの奴らだとすぐに分かった

だが、なぜここに…?

先頭に立って歩いてきた沙織を睨みつける

「…なんだてめーら…JOKERの増援部隊か」

すごむかずゆきに、沙織は爽やかな笑みを返した

「安心しなさい、私達は味方だから」

そう言って沙織は紫色の特攻服を翻し華麗に去っていった

総長があらかじめ呼んだのだろうか?

いやそんなはずはない…


「どうもひっかかるな…」

No3は去っていく沙織の後姿を

ぼーっと見つめながら頬を赤らめため息をつく


「沙織ちゃん、めちゃくちゃ可愛い…」

NO3は骨の髄から可愛い女の子が好きらしい

「お前やっぱり死んどいたほうがいいかもな」


*


紫色の特攻服が見えた気がして詩織は顔をあげた

まさか、あいつがこんなところに…!!

目の前の敵を殴り倒し、先を急ぐ


紫色の特攻服

真っ黒な髪

間違いなかった


「久しぶりね、詩織…」

「てめえ…!!沙織!!」


やっぱりそうだ

この人を小ばかにした笑い…!


詩織は過去にRIDAのメンバーだった時期がある

そのときの宿敵が、目の前にいる沙織だった

「ちょうどいい…ここでぶっつぶしてやる!!」

詩織は禍々しいマークのついた剣を勢いよく振り回す

しかし沙織には当たらない

「あんたの攻撃っていっつも直線的よね」

「うるせえ!!」

完全にぶち切れた詩織は剣を

沙織めがけて振りかぶる

「うらああああ」

そして全力の力で振り下ろした

しかしあっけなくかわされる

そのうえ力が強すぎたせいで、剣が床にささってしまい

抜けなくなってしまった

「くそっ…抜けねえ!!」

「いつまであのボスの前で猫をかぶってるの?」

「黙れ!!」

「女の子は素直にならなくちゃ…ねえ?」

痛いところをつかれ、余計に苛立った

この女、絶対殺してやる…!!

「っ黙れと!!」

「婚期を逃すわよ?」

「へ?」


それは嫌だと思った瞬間、ガンっとにぶい音がして頭に衝撃が走った

鉄パイプで勢いよく殴られたらしい

「はい、一発♪」

「ちっくしょーー!!なめやがってええ!!」


*



「…あんたたしか、レディースの…」

土屋君の言葉に、アンディに刀を向けたまま絵理子は答えた。

「『RIDA』の総長の絵理子だ。あっちは沙織、副だよ。」

どうやら扉の向こうでもレディースのメンバーが暴れているようだ。

「瞳を守ってくれてありがとう。礼を言うよ土屋」

「…別にあんたに礼言われる覚えはねー」

土屋君は少しすねたような声を出した。

「何喋ってるんだい!?」

アンディの刃が絵理子に向かった。

「瞳を守ってくれて?ふふふ…そんなの建前だろう?たつのぶの仇が打ちたかったそれだけだろ!」

その言葉に、絵理子の動きが一瞬止まった。

その隙をついてアンディの肘が絵理子のみぞおちをついた。

吹き飛ばされた絵理子はその場で咳込む。

アンディの目が変わった。

「…そうだ瞳。土屋は知ってるのかな?瞳の過去。」

息が止まった。

「…過去?」

「あー知らないんだ。いい機会だ。教えてあげようよ。」

「やめて」

「瞳が毛呂村にしちゃったこと」

「やめてアンディ!!!」

「どうやって毛呂村が死んだのか!!」

「いやあぁ!!!」

アンディに飛びつこうとして、殴り倒された。

「瞳!」


体が震える。



やめて


やめてお願い。



「毛呂村竜信はね、俺が殺したんだ♪」


やめて…


「…知ってるよ。くそやろう」

土屋君の声は怒りに震えていた。

腹を押さえたまま、アンディを睨んでいる。

「勘違いしないでよ。俺は別に毛呂村を殺すつもりはなかったんだよ」

にやにやと笑いながらアンディは上機嫌で話し続ける。

耳を押さえてうずくまるあたしを心底楽しそうに見ている。

「俺瞳を殺そうとしたんだ」

「!!!」

「なん…だと?」

「瞳が言うこと聞いてくれないから。死ねばさ、完全に俺のものでしょ?」

「…キチガイが」


耳をふさいでも、目を瞑っても、会話は届く。

がたがた震える身体は言うことをきかない。

「そしたら毛呂村が瞳をかばって刺されちゃったわけ。あは!ね。瞳が助けなんか求めるから。迷惑な話だよね」


聞いてる?瞳

そう言いながらアンディはあたしの手を強制的に耳から離した。

「いっつも誰かに守って貰えて。いいね、瞳。たつのぶがいなくなったら、今度は土屋。ははは。」

身体中の機能が停止しているみたいだった。

なのに耳からは鮮明に、彼の声が入ってくる。

涙腺は壊れたように涙を流し続けた

アンディの顔は鼻がつくほどにあたしに近づく。

「わかってるの?瞳。たつのぶはお前のせいで死んだんだよ。

お前さえいなければ、たつのぶは死ななかった。

No3も、土屋も、風神の奴らもこんな目にあわなかったんだよ!!」

耐えられなくなり、顔を覆った。その間からもおえつが漏れる。


―ガンッ―


風を感じた。と同時に、肩を抱かれる。

「ふざけてんじゃねぇぞてめぇ」

耳元で、聞いたこともないような土屋君の低い声がした。

「あ、あれっなんで?」

アンディは明らかに狼狽しはじめた。

「土屋…君?」

横にある彼の顔を見上げると、対照的に優しい声で囁く。

「もういい。もう大丈夫だから」

肩を抱くその手は震えていた。

「伏見。てめぇだけはぜってー許さねえ。」

土屋君の手が肩から離れたと思った瞬間、アンディはなすすべもなく殴り飛ばされていた。

土屋君の手は止まらない。

アンディも負けじと血が流れる土屋君の肩を掴んだ。さらにもう片方の手で刺された腹も鷲掴む。

しかし土屋君は表情一つ変えない。

あたしの方が青くなっていた。

「…それがどうした」


アンディは真っ青になってその手を離した。

アンディの返り血をあびた土屋君の顔は驚くほど冷たく、綺麗すぎて、怖かった。

彼の手は止まることを知らなかった。

最初は抵抗したり、許しを請うていたアンディもついには動かなくなってしまった。

「土屋!やり過ぎだ!やめろ!」

絵理子が叫んだ。

しかし土屋君に声は届いてないみたいだ。

…ダメ。


ダメ土屋くん。


これ以上やったら、土屋君が変わってしまう気がした。

気づいたら身体が勝手に動いていた。

止める絵理子の声も耳に入らない。


アンディを殴り続ける土屋君を後ろから抱きしめた。

動きが止まる。


「…もういいよ。土屋君」

何故か涙が溢れた。

「ありがとう」


そう呟くと、土屋君は振り返り、

強く、強く、あたしを抱きしめた。


『RIDA』の加勢が入り、戦況はかなり有利になった。

何故かはもちろん分からないが、

かずゆきはいい加減疲れてきていたし、手負いのNo3もいるので、ありがたい加勢だった。

さすがレディースのトップを誇る族だ。

そこらの族より遥かに強い。

特に紫の特攻服は郡を抜いていた。

冷静な判断、無駄のない動き…相当場数を踏んでいるのだろう。


今まで風神とはほとんど関わったことがなかったが、

これを機会に仲良くしておいて損はないだろう。

新たに敵を殴り飛ばしながらかずゆきはぼんやりと思った。

紫の特攻服はJOKER唯一の女と対峙していた。

傷だらけになって鉄パイプを握りしめる詩織はすでに肩で息をしていた。

対する沙織は相変わらず冷笑を湛えて優雅に立っている。


「まだやるの?もう勝負はついてると思うけど」

「うるさい!!」

「アンディクンのため?」


詩織がびくっとすると、沙織はにっこりと笑った。

「一途ね。」

詩織の頬がかっと蒸気した。

「てめぇ!マジぶっ殺す!!」

また詩織は鉄パイプを振り上げた。

「聞き飽きたわよ」


沙織がひらりと舞った。

ハイキックが詩織の顔面に入った。


「もういいじゃない。周りを見てみなさいよ。あんた達に勝目はない」



すでに戦っているJOKERは数少ない。

倒れたもの、逃げた者もいる。

…やはり風神だ。

この人数をよく相手にしていたな。

おそらく身内の被害をこんなに少なく済ませたのは

あそこにいる小さいのと茶髪ピンクの力だ。

…たぶん幹部の遊佐とNo3だろう。

見ていてわかる。

あれは相当強い。

まだ戦い続けている二人を見て沙織は考える。


「…くそっ」

もう一度視線を詩織に戻すと、床を殴って拳を握り絞めていた。

根が悪い子ではなかった。

RIDAにいた時から一直線な性格で、暴走してしまうこともあったが、素直なやつだった。

ただ最後に絵理子と大きな喧嘩になり、辞めてしまった。

いつもなら上手くあしらう絵理子だったが、確かたつのぶが死に、瞳が姿を消した後だったから…。

おそらく詩織はそれで弱ったところをアンディにつけこまれたのだろう。

もうそれからは沙織たちの言うことに耳をかさなかった。


「…そうだ、…アンディ…!」


なにか思いついたように詩織は突然顔をあげた

そして傷だらけの体でどうにか立ち上がり、そのまま走り去っていく


「詩織!?」


あの子、まさか…!?


あーごほん、と絵理子がわざとらしく咳をする

その音にハッと気がついて、総長と距離をとる


ど、どうしよう…



総長のほうを見ると気まずそうに顔をそむけられる

今考えると、なんであんなことできたんだろう…

しばらく気まずい雰囲気が辺りに流れた


そのとき

場の雰囲気をぶち壊すように、一人の女が飛び込んできた


「アンディ!!」

詩織さん…!?


「アンディ!アンディ!?あ、んでぃ?」

詩織はアンディの側にかけよった

何度声をかけても返事がないことが分かってから、殺意に満ちた目をこちらに向けた

「…よくも、てめえら…アンディを…ちくしょうがあああ!!」

総長のほうへまっすぐと向かってくる

絵理子は即座に総長の前に出た

すっかり見境をなくした詩織の攻撃をあっさりと避け、絵理子は詩織のみぞおちに遠慮のない蹴りを叩き込む

「っぐ…」

一度うめいてから、詩織はぐったりと床にうずくまった

それでも視線だけは絵理子をにらみつけたままだ

絵理子は切なそうな表情を浮かべる


「詩織…」


二人の過去に一体、何があったのだろう…


「う…」

アンディが目を覚ました。

「アンディ!だいじょ…」

「瞳…瞳どうして?こんなに…愛してるのに」

詩織が駆け寄ろうとしたことにも気づかず、アンディはあたしに近寄る。

すがるような目であたしを見る。

「どうして俺を愛してくれないんだよ。なんで誰も俺を愛してくれないんだよ!!」

アンディはあたしの肩につかみかかった。

土屋君が動いたのを制す。


「…大丈夫」


そしてアンディをまっすぐに見た。


「…違う。アンディはあたしを愛してるんじゃない。」


その言葉に詩織がかみついた。


「…なにそれ。なんなのよあんた!!アンディに…こんなに愛されてるくせに!!どうして拒んでるのよ!どうして泣くのよ!!なんでよ!!だったらあたしに…」

顔を真っ赤にして叫んだ後、詩織はアンディを見上げてぼろぼろと涙を流した。


「…なんで…あたしじゃダメなの?こんなに…好きなのに」

「…詩織?」

アンディは困惑した目で詩織を見る。

その目からはもうさっきほどの狂気を感じなかった。

勇気を振り絞り、アンディに呼びかけた。

「アンディは…愛されたかっただけなんだよ。」


怖くて声が震えた。


「ごめん。もっと早く言えばよかった。…あたしにはアンディは満たせない。もう愛せない。」

アンディの瞳が揺れた。

思わず身をすくめたが、もう逃げない。

今度こそ…断ち切るんだ。

あたしも…一アンディも…。

「気づいてあげて。もうアンディのそばにはちゃんといるよ。心から愛してくれている人が」

アンディは不安そうに横を見た。

そこにはぼろぼろと泣き続ける詩織がいる。


「アンディ…愛してる…」

「詩…織?」

アンディははふらふらと近寄り、おそるおそる詩織を抱きしめた。

「愛してる…」


詩織の言葉にもう一度、今度はしっかり詩織を抱きしめると、アンディは気を失った。

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