第二十七話 JOKERのボス 伏見アンディ
「ボス、どうしますか?殺りますか?」
「うん、もちろん」
部下達の後ろから
聞き覚えのある声が聞こえた
その男は部下を押しのけて
私達の前に姿を現す
うそ
そんな
「アン…ディ?」
「久しぶり、瞳」
そういってアンディは怖いぐらいの笑顔で
綺麗に綺麗に笑った。
紫の髪に一掴み黄色のメッシュが入った、怖いぐらい整った容姿
忘れたくても忘れられない闇
体中を震えが襲う
車が通り過ぎていく、人の雑踏全て
全ての音が遮断されていく
怖い
怖い
怖い
「あの女をやれ」
「はい」
命令する声
部下の人が構えた銀の刃が迫る
その動きはどこかスローモーションに見えた
あ、
どうしよう、
動けない…
「瞳ちゃん!!!!」
あれ、痛くない…
なんで?
目の前に立ちはだかっているのは…
まさか
大好きな茶と桃の髪がゆれる。
彼の身体があたしの上にくずおれた。
「No3君!!!!!!」
「ひ、ひとみ…ちゃん?」
「良かっ…、けが、してな、い?」
「いや、しゃべらないで、血が」
「け…がは?」
「してない!一つもしてないから!」
「よかっ…ぶじ、で」
「はははは!!そいつは早いとこ病院連れてかないと墓場送りかもねえ!!」
たつ…のぶ
激しいデジャブが襲った
「………君…?」
お腹の辺りを刺されたらしい
次から次へと血があふれ出す
血、真っ赤な、赤い赤い
血、血、血が
「いやあああああああああ」
そこからあとは記憶がない
*
「あ、気がついた?」
「え…」
「土屋がここの倉庫まであんたを運んできたのよ」
何で愛理ちゃんがここに?
何が、あったんだっけ
No3君と帰っていたら、男達に襲われて
………No3君!!
「どうしよう、No3君が!!」
「落ち着け!!No3は無事だ!!!」
「え…?」
愛理ちゃんに詰め寄ったのを
肩を捕まれ押さえつけられる
「土屋があのあと追いついてきたんだって…それで、JOKERと楓神の闘争まで発展して
どうにか敵はまいたみたいなんだけどNo3は今病院で眠ってる」
「そう、だったの…」
とりあえずNo3は無事らしい
ほっと胸をなでおろす
「私No3君の病院いきたい」
「瞳、あんた倒れたばっかで何言って…」
「愛理ちゃん、どこかにあるか分からない?」
「あんたって弱いんだか、強いんだか…」
愛理ちゃんは呆れたように
はあ、とため息をついた
そしてニッと笑みを浮かべ、私の腕をつかんだ
「分かったよ、ついてきな!」
*
205号室…
ここにNo3君が眠っている
中に入ると、久しぶりに会う土屋くんがそこに立っていた
「あの…No3君は…」
「どうにか輸血は間に合った
傷も思ったより深くはなかったらしい
だが意識が戻らない」
「そんな…」
目線を落とすとまるで死人みたいなNo3君がいた
まっしろい紙粘土みたいな顔色…
【紙粘土って表現…】
胸の奥が締め付けられるようだった
「なあ、土屋。病院なんか入れちゃって
大丈夫だったの?警察とかかぎつけないか?」
「ああ、ここは俺の親戚の経営してる病院だから
いろいろどす黒いことももみ消してくれる」
どす黒いことに関してはあえてつっこまないようにしよう…
土屋くんも普段のドヤ顔とは違い
すっかり元気がない
【表現がひどい…】
「瞳…ここにいてもしょうがないし、帰ろうか?」
愛理ちゃんに声をかけられたが首を振った
「いい」
「でも…」
「いいNo3君のそばにいる」
ベッドの端に立てかけてあった椅子を持ち出して座る。
消灯時間までは粘るつもりだった。
神様
お願い
お願いだから
No3君まで
連れて行かないで
土屋と遊佐は病室の外に出た。
「…それにしても、ちょうど偵察が終わって良かったな。久々にあんなキレた総長見たわ。」
遊佐がベンチに腰掛け、土屋もそれに続いた。
「…お前だって。」
「まぁね。息の根止めらんなくて残念。」
「…あと一歩おそかったら、二人とも死んでたな。」
土屋は拳を固く握りしめた。
「あぁ。…でも生きてる。」
「…………」
「総長、No3は大丈夫だ。あれは死なん。」
「わかってるよ。……。かず」
土屋が鋭くくうを見据え呼びかけた。
かずゆきはそんな土屋を横目で見る。
うすく笑いを浮かべて同じく前を向く。
辺りの空気が一瞬にして冷たくなった。
「あぁ。あいつら全員ぶっ潰してやる。」
*
学校が終わってから、
すぐに病院へかけつける日々が3日ほどつづいた
No3君の腕に流れ続ける点滴を眺めながら
ため息をつく
早く、目覚めてほしい
そしていつものあの笑顔で、笑ってよ…
その時
祈りが通じたのか
ずっと閉じたままだった目が開いた
「あれ、瞳、ちゃ」
「No3君!!!」
「えと、俺…い、いってええ!!」
「動かないで!No3君は腹を刺されたの!
重症ではないらしいけど、しばらくは安静にしてて」
人の話を聞いてなかったのか
No3君はゆっくり身を起こし始めた
「ああーこれか。全然痛くないよ、うん、元気元気!大盛りの牛丼とか食べたいくらい元気だから」
「バカ…」
青い顔で元気なフリをする姿に
涙がぼろぼろこぼれおちた。
「うん、俺バカかも
…あんとき瞳ちゃん守れんなら死んでもいいかなあとか一瞬思っちゃったりしてさあ」
「バカ!!!」
「…本当のことなのになあ」
「二度と…死ぬとか言わないで」
「ごめん…」
謝るのは自分のほうなのに
No3君は何度も謝ってきた
「泣かないでよ」
優しい手つきで涙を拭われると
余計にぼろぼろと涙がこぼれおちる
「瞳が無事で本当に良かった」
あれ
そういえば
なにげに呼び捨てにされた?
まあ、いいか…
自然と笑みが浮かんだ。
「ああ、やっぱり…」
「…何?」
笑ってるほうが、ずっと良いよ
と言ってNo3君は笑った。
*
あのあとすぐに土屋君に電話してNo3君の意識が戻ったことを知らせた。
しばらくすると土屋君と愛理ちゃんがかけつけた
「てめえこのバカ…」
土屋くんはそう言ってたけど、表情が安心したみたいにみえた
「すっかり元気だね」
愛理ちゃんは呆れ顔でNo3君を見つめている
「え、なになに、もしかして総長心配してくれたの??」
「ああ?思い上がるなよ」
「そんなこといいながら、ここんとこNo3君のこと心配してあんま眠れてなかったくせに素直じゃないんだから」
「……」
「かーくんは?」
「倉庫。まだ調べることがあるんだと。呼ぶか?」
「ううん。かーくんが一番素直じゃないのはよく知ってるから。」
No3君はそう言うと柔らかい笑顔を見せた。
「それにしても」
愛理ちゃんは起き上がってるNo3に目をやる
「あんたこんくらいの怪我でへばってんじゃないよバカ!」
そう言って愛理ちゃんは怪我の箇所に
容赦なくひじ鉄砲をかます
「ぐえええええええ!」
「おまっ!一応怪我人だぞおい」
さすがの土屋くんも制止に入った
「瞳、こいつもう心配しなくて大丈夫だわ、ビンビンだわあとは食って寝てりゃ治るでしょ」
「お、前、なあ…この暴力女!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ二人
ここで、ひとつ浮かんだ疑問があった
「あ、愛理ちゃん、いつの間に土屋君と話す様になったの?」
「いや、私が一方的に話してるだけ。結構前からだけど」
「ええ??」
「でもこいつ、面白いわ」
そう言って土屋君の肩に手を回しははは、と男らしく笑う。
土屋君はあとため息をついて、受け入れている
愛理ちゃんって…なんか大物だなあ
和やかなムードを断ち切るように
土屋くんが真剣な顔で切り出す
「今回の犯人の身元をかずゆきが突き止めた
犯人はやはりJOKERの手下のやつだ」
「JOKERのボス、伏見アンディ…奴は危険だ」
*
あのあと、愛理ちゃんは用事があるといって
すぐに帰ってしまったので
また土屋くんと二人きりで帰っていた
ボス…
なんで、アンディが、暴走族に…
なんで私達を狙うの…
「おい」
「はいいい!?」
「なに、考えている?」
「べ、別になにも…」
「お前はなんか、ためこむくせあるから…」
「土屋くんは、なんか、優しいよね…」
「土屋くん?」
「ご、ごめん、まだ慣れてなくてその…」
「まあ、慣れたら呼べばいい、今日はマンションの前まで送る」
結局マンションの前まで送ってもらった
去っていく後姿を眺める
どうしよう、私、どうすればいいだろう…
もう奴は関係ないのに…
アンディ…
「あれは、お前のせいじゃないから。」
「え?」
土屋君は笑っていた
「なんかあったら、言えよ」
あたしの髪をくしゃくしゃと撫で、じゃぁなと短く言うと去っていった。




