第二十話 死に神メイド喫茶…?
起きたら、もう家のベットで寝ていた。
え…どういうこと…
お母さんがベットの横に座っている。
「春ちゃん、颯太君から連絡あって、教室で寝てるって言ってたからお母さんが慌てて家まで運んだのよ」
「そうなんだ、颯太には感謝せんなんね」
「本当やね、…優しい子だったんだね、颯太君は…」
「うん、颯太は優しいね」
「ご飯食べる?」
「食べる食べる」
今日は動いたからモリモリ食べた。
*
次は待ちに待った文化祭!
「春ちゃんおはっ」
みなに話しかけられる。
「体育祭マジでしんどかったわー…」
「およよ…春ちゃん頑張ってたよー」
「ありがとーみな!それより次は待ちに待った文化祭よね。劇もいいし、ダンスも、お笑いもいいよね」
「いいねいいねーでも本当は春ちゃん演劇が一番やりたいやろ」
さすがみな。するどい指摘だ。
「うん、実は演劇に一番そそるぜこれは…状態」
「ドクターすまーんやんそれ」
もうすぐでHRが始まる。
ガラガラとドアが開く音が聞こえる。
点呼をとった後授業が始まった。
ようやく勉強に集中できるのが嬉しい。
社会の先生の緩やかな声が告げる。
「あー…ところで文化祭の出し物だが、」
ドキドキ…
「メイド喫茶に決定した」
え…どういうこと…?
横暴教師ー!みんなの意見を聞けー!
とヤジをとばす人ばかりだ。
社会の先生は物ともせずに緩やかな声で話す。
「田畑君がお金を投資してくれたんだ、…だからつまりメイド喫茶に決まりなんだ」
え…どういうこと…?
「颯太、……何のつもり」
「それが一番面白そうだからそうしただけ」
こいつ何考えてるのか分からない…
先生が黒板のチョークでそれぞれの担当箇所を決めていく。
男子は厨房で、女子はメイド係…
嫌だ…訳の分からない男ご奉仕したくない…演劇やらせてよ…
「そして裁縫係は早坂だ、できるか」
「はい、裁縫は得意です」
早坂さんはクラブ活動で一番浴衣づくりが得意な人だった。
確かに可愛い恰好をするのは興味あるけど…
「颯太、厨房できるの?」
「やらない。俺が投資者だから、俺にご奉仕して小春」
このクズ野郎…
*
放課後、女子達はせっせとメイド服を作り始める。
私は恐る恐る早坂さんに近づいた。
「あの、ごめんなさい、早坂さん、私裁縫苦手だからうまく作れなくて…」
早坂さんは優しく笑う。
「いいよ、小春のために最高級のメイド服作ってあげる」
嬉しい…。
なんて優しい人なんだ。
男性陣はせっせと厨房の用意をする。
達也君と一聖君は料理を作るのも上手いからオムライスの作り方を他男子に教えている。
他の男性陣が死んでる中、颯太は机の上に足を組んで高みの見物を決め込んでる。
なんでこんなことになったのか…
がらりと扉が開く。
科学の優しい田中先生だ。
先生は演劇が好きで、とにかくカメラ止めるんじゃねえ!!という映画を見ているらしい。
カメラを止めたいときだってあるのに。
「ここのクラスはメイド喫茶かー演劇でもすればいいのにな」
先生の言葉に激しく同意する。
だってこのクラスには一聖君と達也君、可愛い女子もたくさんいるのにこんな…
すべてはそう…田畑のせい。
*
教室の飾りつけをして、厨房でメイド服を着て、いざ文化祭。
そして何故か田畑は机の前で待っているだけ…。
投資者だから仕方ないのか…。
メイド喫茶に続々と客が訪れる。
メニューは
ハート★ドリーミングオムライス
キュートキュートパフェ
キラキラジュエルドリンクらしい。
まず初めのお客様はは野田さんだ。
「小春氏のオムライスが食べられると聞いて飛んできました」
いや…そんな私が作るわけじゃないし…
「お待たせいたしましたご主人様ハート」
「これはうまい至高の味ですぞ」
「それはどうも」
野田さんが豪快に食べる。
そして腹を満たした後、お金を支払って素早く退散していった。
「小春ー」
田畑に呼ばれて慌ててそっちへ向かう。
「腹減った、このハート★ドリーミングオムライス持ってきて」
「かしこまりましたー!!!ご主人様ー!!!」
ああ…颯太イライラする…
「ハートマークお願いします」
「かしこまりました☆喜んで☆」
あ、ケチャップでハートマークがうまく書けない悔しいっ!!
颯太がオムライスを豪快に間食する。
「これするために、何日か絶食したからもっと持ってきて」
机の上に置かれた万札。
…誰か、助けて…
*
出し物がなんとか終わった。
とにかくひどかった。
田畑に何度もオムライスにハートマークを書かされるという苦行。
あいつお腹壊してそう…
理科室でみんなが学生服にそれぞれ着替えなおす。
メイド服は記念に家に持って帰ることになった。
「春ちゃん、出し物終わったから、他回ろっ」
みなの言葉に私は笑う。
「いこーう!!」
ここの学校は人気者であふれてるからさぞ面白いものに溢れてるに違いない。
オムライスの残りを食べたのでお腹はいっぱいだ。
段ボールで作ったジェットコースターは野田さんのクラスの出し物だ。
それは怖いからパス。
段ボール…けが人出なきゃいいな…
私は一つだけものすごく行ってみたい催し物のクラスがあった。
田中先生担当3年C組の演劇「ロミオとジュリエッタ」
途中参加でそっと、舞台席に二人で進む。
そこではすごい人物を発見した。
名前だけ知ってる。A組からC組の人まで愛される超人。
そんなにたくさんの人から愛されて大丈夫なのかと心配になるレベル。
柳沢京子、通称『京子ちゃん』
全ての人に愛されそうな強い眼力を持つ彼女。
ショートヘアーが良く似合っている。
この子と話してみたいなと思いながら、迫力ある舞台に見入っていた。
これは…天才。
将来間違いなく演劇の道へ進めるだろう。
舞台は大喝采で幕を閉じた。
終わった後、握手ができると聞いてドキドキした。
いよいよ、京子ちゃんと握手ができる。
「あれ、小春じゃん、田畑と付き合ってるって噂の」
京子ちゃんの言葉に心臓がドクンと鳴る。
なんで知ってるの…?
「私のライン今度教えるからさ、友達なろうよ」
「あ、ありがとうきょうこちゃん…!」
かっこいいな…私はビビりだからセリフ覚えるの無理そう…。
文化祭終了後はみんなで焼肉パーティをして家に帰った。
颯太は案の常お腹を壊して家に帰った。
文化祭も終わり、勉強でもしようかなと机に向かった瞬間、達也君からラインが入る。
「小春…ソシャゲのやばいやつ見つけた A4」
A4ってなに…?印刷用紙のこと…?分からないよ達也君…
とにかくすばやく携帯を取り出し、A4インストール完了っと。
夢をいっぱい探そうまんかいカンパ♪
いいなこんな劇団に将来入ってみたいよ…
まって、この監督に片思いしてる男の子すごく…颯太に似てる
性格はあきらかに颯太がクソだけど。
そして監督とよばれてる人、なんか私っぽい容姿が…
こんな可愛くないよね気のせい気のせい。
この脚本誰が書いてるんだろう。
すごい才能の持ち主だ。
私はすごいポンコツだから、こういうの苦手…
その夜は夢中になってA4をやっていた。
あんさんぶるのやつもやりたい。
時間がない。
まって勉強しないと。
まあ一日ぐらいっか。
*
翌朝、眠い目をこすりながら、教室に入る。
そろそろ勉強に本腰入れないとなー。
それにしても私は数学理科がめっぽう苦手だ。
「ゆうちゃん、数学ここ分からんよー」
数学が得意なゆうちゃんに相談する。
ゆうちゃんのよどみない説明でなんとか、理解はできた。
「ありがとう、ゆうちゃん」
「ところで立花ァ、田畑と文化祭後、セックスしたの?」
してないから!!
「しないしない怖いこと言わんといてー」
「立花は何が怖いの」
「いや出産が怖い」
「ゴム付ければ大丈夫やろ」
「いやうち、痛いの本当無理、保育園から注射ぶっさしまくりだしゲロ吐きまくりだしとりあえず、外側からの痛みも内側からの痛みも無理なん」
ゆうちゃんは黙り込んだあとぽつりと漏らした。
「ま、人それぞれやね…私も持病あるから、さ」
ゆうちゃん…そうだったんだね。
辛い苦しいのはみんな一緒なんだ。
人それぞれ何かしらの痛みや苦しみと闘いながら生きているんだ。
「ゆうちゃんはどこの高校行くの?」
「え、高専だけど」
さすがゆうちゃん…私理科数学分からな過ぎてそんな高校行けないよ…
まゆちゃんは商業高校。
みなは普通科みたいだけど多分同じ学校ではない。
野田さんも、楓とも多分お別れだ。
寂しい気持ちもあるけど、新しい出会いもあるんじゃないかと胸が躍る。
どんな高校生活が待ってるんだろ…楽しみだな。
とりあえず演劇サークルが入ってる高校にしたい!あと一番頭いい高校!
*
みんなとお別れは寂しいけど、きっとたまり場に来てくれるよね…
待って…私暗殺する教室って漫画持ってるわ。
これさえあれば、みんなを好きな高校まで導ける…!
「みな、暗殺する教室って漫画見たことある?」
「んー…前に1巻まで読んだことあるけど、勉強で忙しくて読んでないよー」
「それ全巻読めば、難しいこと分かると思う、貸すから読んでくれ」
「マジか貸してくれ」
そのあとも延々と布教活動を続ける。
この作者は神。
社会の先生から、一人一人面談を行うから、進路志望が書けたら面談に来いと言われている。
志望校は一番頭がいい学校で、なぜか将来の夢の志望欄もあるので、将来の夢の第一志望は、一位舞台俳優、二位が漫画家にでもしておこうか。
面談の時間私は緊張した面持ちで先生に問う。
「先生、私の志望どうですか…?」
「そうだな…立花ならどこの高校でもいけると思う、が将来の夢は…先生は小説家がいいと思うな」
小説家…?
あんな長い文字、将来書けるんだろうか…
「まあ、とりあえずはこの進路で行こう」
「ありがとうございます」
二学期末のテストが待っている。
A4をやっている場合じゃない。
頭のいい大学に行って、将来の夢をかなえて見せる…!
先生が教室の扉を開ける。
「次は田畑ー、理科室に来い」
「はい」
お金持ちの颯太はなんの仕事に就きたいんだろう…気になるな…。
*
理科と数学に必死をこいてたら、達也君からLINEが届いた。
「小春、最近国語の点数よくないな」
「だって、理科と数学で頭爆発しそうなんだもん」
「俺のおすすめの小説教えるから、暇なとき読んでみ?
中山七さお、阿部智みん、羽田啓介、☆真一、高田都、奥田栄郎、北川恵美
これが割と穏やかで人が死ぬ小説な…
それから山本文雄、村上留、小川陽子、二氏加奈子、三浦死おん、もりえと、山本コカ・コーラ、山田永眠、吉本バナナ
これが割と穏やかに恋をする話な…
アリス川アリス、島田宗次、綾辻行く人、可能友子、宮部美幸、山田雄介、井坂こうたろう、東野敬語
これは激しく人が死ぬ話…
村上春木はやれやれって感じな、お前にあってる作家は森見と井坂と辻村、あさの、万城、小野、西尾、上橋、永田乙、荻原あたりか、でも一押しは竹ゆゆぽんな」
ちょっと今の私には情報過多すぎる、堪忍しておくれやす。
「竹宮ゆゆぽん、読みたいけどお金ないよー」
「田畑の家に行けば見れる、ドラドラ!!ってアニメ化してるからみせてもらえばいい」
ドラドラ!!か…、私は今は夏目漱石や太宰治あたりが読んだほうだいい気もするけど…
でも達也君の言うとおりにして間違いだったことないわ!
明日ドラドラ颯太の家行って見せてもらおう…!
翌日、授業を終わらせて、颯太の家にGO!
ドラドラってどんな話なんだろう…
「颯太、ドラドラすごいのかな」
「あれはガチで神作やぞ見とけ、あとハルヒが憂鬱なのもいいけどな」
ハルヒ憂鬱…聞いたことがあるな…
二人で画面に見入る。
可愛い女の子が木刀を持ってる…え、どういうこと…?
そして強面な竜がせっせと料理を作ってる。
そして激しい恋愛。
「水が一番デトックスにいいんだよおおおおおお」
「頼む!俺に!俺にここん家のキッチンを掃除させてくれぇぇぇえ!」
「将来したい事なんて分かんない。今したい事すら浮かばないもの」
名言キタコレ。
とにかく竜はスパダリなことが分かった。
いいな…こんな恋してみたい…
私の部屋は荒れ果ててるから掃除してほしい…
「颯太はご飯作るの得意だよね、私に作ってよー」
腕を引っ張ったら、颯太が面倒くさそうな顔をする。
「それは無理…基本料理、洗濯は女の仕事だから」
そしてニヤニヤ笑いながら言う。
「俺に作って、小春の作ったお弁当」
翌日。授業に集中できない。
私の様子に科学の先生が苦笑する。
私は筋金入りのオタクだから。
料理なんて作ってる暇はなし!
それより勉強…ダメだ理数系という概念がこの世から消えてほしい。
ドラドラの家庭事情は複雑だな、と考える。
虎のほうの父親ははっきり言ってクソに近い。
竜のほうはお母さんが頑張って夜の仕事をしてくれてるから、なんとか生きてられるんだな。
ドラドラは神作。
いつかライトノベルで買いたい。お金がない、早く大人になってお母さんからせびらずに買いたいものを買えるようになりたいよ…
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