第百八十二話 絶望がビリってる奴
『』の曲名をようつべにそのまま張り付けると歌聴けます
私の推し歌です
次の日の自由時間、俺は英語のリーディングに取り組んでいた。
第3問
Your are an exchange student at a UK high school ,and your teacher asked you to find an interesting story. You found this story to share in class next week
この後に長々文章が続き、問いが出される。
問1のWhich person in telling story?は分かる。けれどその後の並び替え問題が分からない。
「クソ…」
俺がぼそりと呟くと、後ろの席にいた一聖に声をかけられた。
「颯太君、今なんの勉強やってるんや?」
振り返って思わず一聖の席に肩肘をついた。
「英語のリーディング…第三問、紙で見てるだけだけど並び替え問題が分からない」
一聖にプリントを渡すと一聖がふむふむと考え込んで、しばらくして答えた。
「これは5→4→3→1だね、回答見てみて」
俺は回答のページをめくる。答えは正解だった。
「一聖、お前…英語本当に得意だったんだな」
「へへ!英語はさ、歌とか聞いてると覚えちゃうんだよね俺!」
そういえばこいつは中学の時カラオケで散々絶望がビリーする歌を歌っていたなと思い返す。
「お前はなんで絶望がビリーする歌好きだったんだよ」
一聖はきょとんとした表情を浮かべたあと、情けなさそうに眉尻を下げた。
「実は…俺小学の頃ずっといじめられてたんだよね…小学の頃かなり父親よりの顔で太ってて髪も茶色がかってるから焼きそばパンだってからかわれてたんだよ…」
驚いた。一聖は最初から今のような容姿だと思っていた。
「絶望するビリーは裏歌詞があってね…それが超カッコいいんだよ!ググってみてよ」
俺は慌てて携帯で『絶望するビリー 裏歌詞』でググった。
「すげーな…この作詩家」
俺は感嘆しながら裏歌詞をなぞっていた。
「そう、俺は小学の時のヘイトを絶望するビリーで発散してただけだよ!それで英語に激ハマりしたんだ」
「そうか…こことか、いいな…That's fallin'pain(地獄へ堕ちろ)とか」
「そうそう!歌で英語なんて覚えればいいんだよ!」
「いや、これ歌詞はいいけどちょっと感性が中学生レベルだな…お前はテナーとかバンアパは聞かないのか?」
「テナーは分からないな…」
俺は素早くイヤホンを取り出しようつべから、とりあえず一聖に『ストレイテナーのDark City』 と『the band apartのsaqva』を聴かせる。
「やばいこれめっちゃエモい!」
「そうだろ…ホルモンは申し訳ないけど中学生レベルだ」
「そうか…おすすめどんどん教えてほしいな」
俺達は勉強を放り出してお互いの推し曲を教え合っていると、そこに達也が椅子をもってきて座り出した。
「なんだお前ら、猥談か?一聖はまだ童貞?颯太は小春とヤッタの?」
「ち、違うよ!俺達英語の歌教え合ってただけで…」
「ふーん…颯太はまだテナーとバンアパばっか聴いてんの?」
「そういうお前はなに聴いてるんだよ」
「んーB-DASH、BEAT CRUSADERS、BRAHMAN、THe Brian Setzerオーケストラ、ダニエルパワー、ドピングパンダ、ドラゴンアッシュ、KEMURI、HISTANDARD…まだまだあるな」
「ちょッ…達也君!情報過多すぎる!俺達には早すぎる…!」
「そうか?小春には俺のおすすめ曲全部教え込んだからお前らならすぐ履修できると思うけど」
「今も小春と連絡とってるのか…?」
俺が訝し気に聞くと達也は笑ってたまにラインしておすすめ送ってると言い切った。
「すごすぎるわ小春ちゃんも達也くんも颯太君も…俺はまだホルモンしか聞けてないなんて…」
さすが一聖、ホルモンの歌詞の何万年不憫なだけある。
「とりあえず今の俺の一押しの『ビークル&アスパラガスのfairytail』ようつべで聴いてみ?」
俺達はLとRでイヤフォンを差して歌に聞き入っている。
「これ、いいだろ?あとな、ヤニ吸う漫画の作者おすすめソングも聴け、俺の心のやべー奴のOPも激エモいからな…小春はカッコウの花嫁の一期OP映像と僕の心のヤベー奴の二期OP映像ばっか狂ったように見てるって言ってたぞ」
それは初耳情報だ。カッコウの花嫁の『凸凹』はかなりの神曲でOP映像も神がかかっているからエンドレスリピートするのも分からなくもない。
「あとはぼっちんぐざロックの『光の中へ』もいいな…」
あれは歌詞のロジックもかなり神がっかている。欠測バンドは捨て曲はないと言っても過言ではない。
「…達也はどこの大学行くつもりなんだ?」
俺は前々から気になってたことを聞いてしまう。すると達也はズバッと答えた。
「大学?行かねーよ、もう勉強すんの飽きたわ俺」
「え…そんな頭いいのにどうして…?」
一聖が戸惑った声で問いかけると達也は満面の笑みで答えた。
「俺は東京行ってなんか面白いことないか探しに行こうと思ってる」
「そう、なんだ…やっぱり達也君はすごいわ」
呆然としている俺達を見てから、達也は満足そうに笑って立ち上がる。
「俺だるいから今日はもうフケるわ…数学の山中には体調不良で帰ったとでも言っておいてくれ」
そして達也は風のように消えてしまった。この後俺達は必死に勉強をそっちのけで達也の推し曲を聴いていたがまるでついていけなかった。




