第百五十話 たこ焼き記念日②
慌ただしかった中間試験も終えて、部活も休みだったのでとっとと帰って寝ようかと思っていると一聖と野田に声をかけられた。
「颯太君、放課後暇してないか?俺と野田さんと一緒にたこ焼き食いに行かないか?」
「颯太氏には大変お世話になったがゆえ、おごらせてほしいんでござる」
たこ焼きか…たこ焼きは小春の料理で初めて食べたものだっけそういえば。
たこ焼きと聞くと無性に腹が減った気がした。
「ああ、いいぜ。どこのたこ焼き屋だよ」
二人が目を見張って大喜びする。
「やったぜー駅前歩いてすぐそこにある、超特盛たこ焼きでござるよ!」
一聖が楽しそうに笑う。
「颯太君さ、なんか変わったよね」
「……そうか?」
「そうだよ!前は給食さえ美味しくなさそうに食べてたのに」
給食をまずそうに食べてたのは話題になってたのか。しかしあの頃は本当にまずいと思っていたから仕方がない。
「じゃあ、さっそく行くか、そのたこ焼き屋とやらに」
スクバを持って立ち上がり歩き出すと、一聖と野田も後からついてきた。
電車に揺られてあっという間に駅前のたこ焼き屋とやらに到着。
「ここのたこ焼き本当量多いからさ、夕飯食べられなくなるよね野田さん」
「確かにな!俺は夕飯もモリモリ食うけどな!」
暖簾をくぐると、いらっしゃいませといいながら店員が出迎える。
適当な席に座って、たこ焼きを3つ注文する。
ふとメニューを見渡すとここはパフェやたい焼きなどいろんなメニューを出しているらしい。
そしてたこ焼きの値段は破格の300円。たった300円でそんな特盛なのだろうか。
ぼんやりと考えているとあっという間にたこ焼きが出来上がったみたいだ。
机の上に3つ並んだそれのあまりの量の多さに驚いた。
多分一皿10個は乗っている。
「いただきまーすでござる」
野田は腹が減っていたのかモリモリ食べ出した。
一聖もうまいうまいと言いながら、たこ焼きを口に入れる。
「颯太君食べないのか?」
一聖に言われ俺も口にした。熱々で中身はとろっとしてタコが大きい。
「美味いな…これ」
そう呟くと一聖と野田がとても嬉しそうに笑った。
「本当か?俺の1個あげるよ!食べて食べて」
「いや…そんなには食えない」
「良かったでござる、颯太氏の口にあって」
俺はふと前から思っていたことを口にした。
「一聖と野田は…」
「ん?」
「どうして俺なんかに構うの?楽しくもなんともないだろ?いくら演劇サークルの仲間でも…」
二人はしばらく考え込むような表情をしてそれからニッコリと笑った。
「俺颯太君と居るの楽しいよ!いろんなこと知ってるし!ゲームもうまいし!アニメにも詳しいし!きっと本当の颯太君を知ればもっともっと友達増えると思う!」
「拙者も一聖氏と同じ考えにござる!もっと颯太氏と遊びたいなり」
俺はたこ焼きを持ったまま呆然とする。
「そう、なのか…」
知らなかった、一聖と野田がそんなふうに思っていたなんて。ただクラスの人気者にはなりたくないが。
「颯太氏今度TRPG拙者とやってはみないか?面白いぞ」
「いや…それはいい、よく分からないし」
ガーンと野田は口に出して言った。
「春ちゃんの調子はどう?」
一聖が恐々と俺に尋ねてくる。
「いや…相変わらずだよ…死にたいって言ってる」
「…春ちゃん…」
「小春氏…」
そうだ!と一聖がなにか閃いたように言った。
「今度颯太君の家に春ちゃんも呼んでアニメでも観ないか?クラスの誰かに会えば少しでも元気出るかもしれないよ!」
確かに…今までずっと俺だけ小春と会っていたからいい考えかもしれない。
「そうだな…じゃあ、次の休みは一聖と野田と小春と俺で遊ぶか」
野田が嬉しそうに歓喜の声をあげる。
「やったー!小春氏と久々の御対面にござるよ!」
「俺も春ちゃんと久々に会いたい!」
ワイワイ言いながらたこ焼きを食べ、食べ終わるとそれぞれ帰路についた。
その日の夜、俺は小春にラインを入れた。
「小春、今度の休みの日俺の家で、一聖と野田と遊ばないか?」
返信はすぐ返ってきた。
「え!?一聖君と野田さん!?めっちゃ会いたいよ!楽しみ!」
そうか、もっと早く気づけばよかった。これからは京子さんや楓さん佐紀さんなどもよべばいいかもしれない。
「じゃあ次の土曜日の10時ごろ迎えに行くから」
「うん!待ってるね!」
そこで会話は終了。
次の土曜日。小春の顔色はそんなに悪くはないみたいだ。
「…小春、今日大丈夫そうか?」
「うん!一聖君と野田さんと会えるの楽しみだよ!」
俺の家まで歩いていくと、すでに一聖と野田が家の前に着いていた。
「一聖君!野田さん!」
小春が二人のもとに駆けていく。
「春ちゃん!久しぶり!元気してたか?」
「小春氏!心配していたぞ!!」
「大丈夫だよ!二人に久々に会えて嬉しい!!」
ワイワイと3人で騒いでいる姿を見てほっとした。昔ならきっと嫉妬してただろうが。
俺が部屋の扉を開けると、皆がお邪魔しまーすと言いながらドカドカと入っていく。
「何して遊ぶ?Kでも観る??」
小春がはしゃいでいる。しかしKは二人にとってはもはや食傷気味だろう。
「いや、小春…K以外の方が…」
俺が口を挟むと一聖と野田がニッコリ笑って、いいよと承諾していた。
「どこから観る?K7Sあたりが俺は観たいんだけど」
一聖もずいぶんと成長したものだ。昔はKにまったくついていけなかったというのに。合宿の成果が間違いなく出ている。
「俺もそれでいいぞ!」
じゃあ、と俺はK7Sを入れた。3人は画面に集中していなかった。高校での近況を喋るのが楽しくて仕方ないらしい。
「K合宿はどうだったんですか?」
小春が笑って問うと二人は苦い笑みを浮かべた。
「それが一聖氏と吾輩は滝行ばかりしていた記憶しかないんだ…」
「滝行!?数学の山中先生本当に厳しいんですね…」
「それと伏見アンディと山寺美咲さんは本当に演技が上手だぞ!」
「その二人、会ってみたいんです!瞳★ロゼリエッタでしかないですよね…」
「ああ、瞳さんは一体どんな人なのか我々も気になってしかたない」
「瞳さんは素敵な女性ですよ!眼鏡とスケボーの同人誌たくさん貸してくれましたし!」
「な、なんと…小春氏はKのなかではその二人が推しなのだな!」
「野田さんは誰推しなんですか」
「俺は断然、力夫だ!夏になったら痩せるという特性も素晴らしい!風貌も俺そっくりだしな」
「なるほど、一聖君は誰好き?」
「俺は、淡島さんかな…凛としてるけど実は女性としての一面もきちんと持ち合わせてるところがいいよ」
「なるほどー」
一通りK談義が終ると、高校の授業について会話が移っていく。
「小春氏…俺はもう落第するかもしれないと思っていたところを颯太氏に助けられたんだ…」
「うん!颯太君は本当に教えるのが上手なんだよ!」
小春がニヤニヤしながら俺の方を見つめてくる。
「三人がそんな仲良くなってるなんて知らなかったよー」
「別に…俺は勉強教えただけだし…」
「颯太はツンデレだねー早く仲良くなったって認めなはれ」
俺以外の三人がドッと笑ったり、Kを観たりしてその日は終わった。




