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第百四十八話 日常②

次の日。部活メンバーが押し寄せてきて俺に勉強を教えてほしいと迫ってきた。

そんなわけで、京子さん、楓さん、佐紀さん、和幸、ヨッシー、一聖、野田を空き教室に集めて一緒に勉強することになった。

「颯太君!マジで嬉しい、数学、解説読んでも理解できない問題いっぱいあってさ」

賢そうにみえる楓さんも勉強には困っていたらしい。

「なんかさあ、1年の時もきつくかったけど、2年になってからさらに訳分からなくなってきたよね」京子さんの言葉にみんながうんうんと頷いている。

「私45ページのグラフの問題でさえよく分からなくなってきててさ…」

佐紀さんが辛そうに呟いた。

45ページか…もしかしなくても以前野田に聞かれた三角関数のグラフの書き方だ。

「ああ、これなら今から分かりやすいように板書きしていくから」

「颯太氏!前に俺が聞いた時は適当に流したくせにひどいでござるよ!」

野田の言葉は完全スルー。女性陣の言葉はなるべく優先しよう。

俺が説明していくと全員の表情がパアっと明るくなっていく。

「颯太君!先生向いてると思うよ!数学の山中よりずっと分かりやすい!」

一聖が嬉しそうな表情で叫ぶ。

和幸も颯太君すげーなと呟いていた。

ヨッシーは「分かりやすいぞぉ」と笑った。

確かに数学の山中は分からない奴は蹴落として次から次からへと問題を進めていくからな。分かりにくくても無理はない。


そして次から次へと質問が繰り返され、そのたび板書きして説明していき時刻はあっという間に過ぎっていった。

「颯太君ありがとうなー!」

和幸が笑って、カバンの中に参考書やドリルをしまっていく。

「なあこれからみんなで、駅近の世界一おいしいメロンパンアイス食べに行かないか?」

一聖の言葉にみんながいいね!それ!と席を立つ。

「颯太君も来ないか?」

「メロンパンアイスってなに?」

みんながえ…と静まり返った。

「駅近くにあるアイスのお店だよ!美味しいから一緒に行こうよ!」

それなら…と頷くと皆が教室から出て、演劇や勉強についてあーでもこーでもないと雑談をする。

「颯太君、本当すごいなあ…なんでそんな頭いいんだ?」

一聖の問いかけにどう反応していいのか困る。俺は逆になんでクラスの連中がなんでそんなに頭が悪いんだと思っているからだ。

「まあ…俺なんて大したことないよ…分からないことあったら聞けばいい」

「颯太君…今までずっと近寄りがたかったんだけど、本当はすごくいい奴だったんだな!」

一聖はそう言った後、ヨッシーと野田さんの輪に戻っていく。

確かに今までは他人に優しくするなんて反吐がでそうだと思っていた。【他人でもね関わるうちに絆が生まれるんだよ分かる?】そう言った小春の言葉がリフレインする。

絆か…小春が元気になるまでは、こいつらと絆を深め合っていくのも悪くないのかもしれない。

電車で駅まで移動する。少し歩いたところに、世界一おいしいメロンパンアイスの屋台があった。世界一おいしいってどんな味なんだろうか。それぞれが金を払っていき、メロンパンアイスを食べていく。俺も金を払って、メロンパンアイスを一口食べた。温かいメロンパンにアイスが大量に挟まれている。美味いかもしれない。

「颯太君美味しい?」

京子さんが笑ってこちらに近づいてきた。

「ああ…確かに、美味しいかも」

「良かったー前は給食でさえまずそうに食べてるって噂聞いてたからさ、誘ってよかったのか不安だったんだよね」

そしてこれからは買い食いとかしてこうよ、と笑った。

俺はメロンパンアイスを食べながら、笑い返した。


次の日も部活は休みだったので俺と達也とヨッシーと和幸を家に呼んでマリオカートをやっていた。こいつらは一聖と野田の雑魚プレイとはなかなか違って上手い。

「そーいやさあ、颯太は小春としたの?」

達也からまたそんな質問が来た。俺はしてないよ、と小声で言った。

「なんでしないんだよ、すればいい。俺の妹のみなはもうしてるぞ、高2にもなればみんなしてると思うぞ」

美奈穂さんといえば小春の一番の友達だったか。もうしてたのかとぼんやり考える。

「俺好きな人さえできないからできねえよーいまKの聖書読むのに忙しいのに」

和幸がそうぼやいている。さっきからヨッシーはずっと黙ったままだ。なにか言いたげな雰囲気だ。皆がどうしたヨッシーと声をかける前にヨッシーは口を開いた。

「俺、他クラスの子と両想いになったから漫画喫茶でセックスしたぞお」

周りが瞬時に騒めきだす。

「さすがヨッシーだ、やるな」

達也がぐっと親指を立てたのに合わせてヨッシーも力強く親指を立てた。

「漫画喫茶ってどこのだよ!?」

和幸が混乱した声で言うとヨッシーは笑う。

「駅前の漫画喫茶だぞ、声押さえればどんだけでもできるぞお」

さすがヨッシーだ。本当の意味で漫画喫茶を満喫した男だ。しかし違法だそれは。

やはり皆まだ高校生なのでヤる場所に困っているらしい。

「俺にヨッシーに順当にきてるな…あとは和幸、一聖、野田、颯太の番だ。ゴムを買っておけ」

いや…まだヤリたいとは一言も言ってないのに。

和幸は俯いてしばらく考え込むような表情をしていたがやがて顔をあげてニッコリ笑った。

「そうだな、早くセックスしないとあかんな…Kの聖書と勉強ははとりあえず後回しだな!」

和幸も一聖と同様で達也に洗脳されてる感がある。

「達也はなんでそんなにセックスにこだわるんだよ、今はどっちでもいいだろそんなこと」

「んー俺猥談大好きだからさ、お前らの体験談とか聞きたいだけの理由だよ」

そして、ヨッシーだけを呼んで、二人でこそこそとどんな感じだったのか感想を言い合っている。

「じゃあ次は俺の秘蔵のDVD取ってくるからお前らちょっと待ってろよ!」

達也が部屋を出てチャリで自宅まで向かっていく。達也はやはり破天荒が過ぎている。あっという間に部屋まで到着してDVDをスクバから落としていく。

「どれでも貸してやるから親居ない時に観ろよ」

「すげーよ達也君、俺には刺激が強すぎるわ…」

和幸が達也秘蔵のラインナップに怖気づいている。

「じゃあ俺これとこれ借りていくぞお」

「いいぞ」

ヨッシーはもうお目当てのDVDを決めてスクバにしまっていた。

俺は携帯で見る無料動画で事足りているが、適当に1枚借りた。


俺は全員が帰ったあと、達也秘蔵とやらのDVDを観ていた。ムラムラはするが勃つまではいかなかった。

小春はセックス中はどんな顔でどんな声をあげるのだろう。そんなことを考えていたらようやく射精感が出てきて抜くことができた。

虚しい。隣りにあった温もりがない、ただただ作業感のそれを終えて、俺はいつも通りアニメを観ることにした。こちとら亀有。小春が少しも笑わなかったそれ。俺はいつもならくだらなくて一人で笑ってみていたそれは、なぜか面白いと感じず、ひたすら虚しさが胸に残った。

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