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第百四十一話 家族と仲間

授業も何も集中できず、ただぼーっと窓際を眺めていた。

3限目の終了後の休み時間に一聖が前の席に座り声をかけてきた。

「颯太君、昨日はどうした?小春ちゃんなにかあったのか?」

「ああ…昨日家まで行ったら死にたいと言って泣いてて…俺ももうどうしたらいいか分からないんだ…」

「…そうか、辛かったな…なあ、今日部活フケてゲームでもしないか?颯太君の家で」

「…そうだな、ゲームは一聖弱いから映画でも観ないか?」

「いいね!それ!見ようぜ」

「なにがいい?」

「なんでもいいよ」

じゃまたあとでなと笑って一聖が席へ戻る。一聖は本当に優しい奴だと思った。俺は他人には優しく寄り添う事はできないから。


放課後、一聖と一緒にバスに乗り俺の部屋に到着。

「何見る何見る?」

一聖はワクワクしている。

「じゃこれかな、俺も詳しくは観た事ないんだけど」

リモコンで指定した映画はWONDER 君は太陽だぜという映画。

これは顔面に障害がある男の子が家族や仲間に支えられ生きていくというストーリーだ。俺はこんな家族が欲しかった。いや、欲しがってもどうしようもできないから、自分の手で作りたかった。小春と。

観ている最中何度も一聖が泣いている。涙もろいんだなこいつは。見終わったあと、涙でぐしゃぐしゃになった頬をぬぐって一聖が笑う。

「感動したよ、観させてくれてありがとな!」

「別に…」

別にどうってことない。ただ契約してるゾンアマプライームで観せただけだ。俺もなんだかんだで感動した。障害があっても支えてくれる家族や仲間がいればきっと大丈夫なんだ。小春もきっとそうだ。

「なあ、一聖…」

「どうしたん?」

「小春は…この先どうなるんだろうかって不安なんだ、達也は大丈夫だと言ったけどやっぱり不安で仕方ないんだ、毎日辛い」

「颯太君……俺も心配だよ、でもさ春ちゃんは颯太君に心配してもらうより楽しんで生きてほしいと思ってると思うよ」

「楽しんで、か…」

「そうだよ!演劇サークルの仲間もついてるし、楽しくいこうよ、大丈夫だよ!」

一聖が帰路に着いた頃、俺は楽しいことについて考えていた。演劇が多少楽しく感じていたのも小春がいたからだ。どこかに出かけるとしても、小春が隣に居たから楽しかっただけだ。なにか見つけられるのだろうか。そんなことをぼんやりと考えていた。


次の日、部活に行くと何やら周りが騒がしかった。

『八田南』『櫛名萌』『淡島絵里子』『大貝詩織』『浅間香織』『日高祥子』それからパリピの『三科幸助』ギャルの『雪染順子』が退部することになったらしい。

せっかくKに『適合』している名前なのにどうして辞めることにしたのだろうか。

詳しい事情を楓さんから聞くと、なんでも勉強に集中したいからKにはなれない、というのが理由らしい。別に真剣にKになる必要もないと思うが仕方ない。そして野田が好きだった浅間さんも辞めることになった。今野田はどんな気持ちでいるんだろうか。8人が退部届を出して部室を去っていったあと、周りの空気がしんっと静まり返っていた。そこへ京子さんが口をはさんだ。

「へーきへーき!宇宙も入ってきたことだしなんとかなる!また新入生募集しよ!」

みなが京子さんの意見に賛同し、そうしよう!と続いた。

「まずは、小春がやってたみたいに、ドデカポスターでも作ろうか」

タイトルはやはり謎のjungle新入生募集。

それを、学校の掲示板に張り付けるらしい。そしてビラ配り。配られた1年皆が?マークを浮かべている。確かに謎のjungleなんて部名は謎すぎる。


しかし数日後ある4名の入部希望者がやってきたので顔合わせすることになった。

まず茶色がかったパーマをしており、雑誌などに載っていそうなほど端正な顔立ちをしている男。

「俺、伏見アンディです、よろしくお願いします」

周りが一気に騒めいた。

「あの、アンディくん…瞳★ロゼリエッタ知ってる?」

佐紀さんが恐る恐る伏見に聞く。

「なんですか?それは」

「知らないのか…そっかそっか」

異様な雰囲気に包まれながら、二人目の発表。

次の子は赤銅色の髪色にショートヘアー、とびっきり元気そうな顔つきの女だ。Kで見た気がする。

「私山寺美咲っていいます!よろしくお願いします」

周りがふたたび騒めいた。

佐紀さんが再び恐る恐る山寺に聞く。

「あの…美咲ちゃんは…瞳★ロゼリエッタ知ってるの?」

「え?何ですかそれ…」

「ううん、なんでもないよ…」

次の子は限りなく赤い髪色のショートヘアーで無口そうな女。Kで見た燃やせという男に似ている。

「酒井尊です、よろしくお願いします」

楓さんが恐る恐る聞く。

「尊ちゃんは…Kってアニメ知ってるの?」

「いえ…Kってなんですか?」

「あ、知らないならいいよ!ごめんごめん」

そして最後の子は堂々とした立ち振る舞いで髪はストレートヘアーでツヤツヤした髪をしている。

「中村礼司です、よろしくお願いします」

楓さんが再び恐る恐る聞く。

「礼司君は…Kってアニメ知ってる?」

「いいえ、なんですかそれは?」

2年陣が集まってどういうことどういうこと?と混乱している。…瞳さんはもしかして預言者だったのか。ならばこの人を捨てた男はお陀仏が過ぎている。俺は場をそっと抜け出し、瞳さんに電話を入れる。

「もしもし、瞳さん。颯太です」

「こんにちはーどうしたの?」

「瞳さん…伏見アンディと山寺美咲って子が入部してきたのですがどういう事でしょう?」

「え…なにそれ…どういうこと!?」

「いや…俺もよく分からないんですけど、あと尊と礼司って子も入ってきました、Kですよね?」

「そうだね…Kだね…ごめんどうしたらいいのか私も分からない…育児で手いっぱいで…」

「そうですよね、ごめんなさい、混乱させました…忘れてください」

「…颯太君」

「はい」

「きっといい巡りあわせが来てると思う!謎のjungleはどんどん楽しくなっていくと思う!」

「ありがとうございます…!」

そこで通話は終了。


そして、稽古が始まった。新入生4人はびっくりするほど基礎連がうまい。なにも教えることはないレベルだ。ちなみに宇宙は基礎連など普段の部活に一切顔出しなし。舞台の脚本が出来上がるまで漫画研究会にいるらしいが許されている。全てが完璧でまさに宇宙に行けるような存在だからだ。

練習中、後ろのドアがガラリと開いた。数学の山中と、ガイ、ぬー、ジョンだ。

「これは…今年の1年は豊作だな…」

山中が関心したように呟く。

「もう一回K合宿開かなきゃいけないかもねえ」

ぬーがぼそりと呟いた。

ジョンも賛成したようにうんうんと頷いている。

「またあの合宿すか!?辛いです、Kになれません…!」

廃棄パン中西が泣きごとをいうと、山中が喝を入れる。

「うるさい!早くお前はKになれ!!」

周りが静まり返る。

「しょうがないんじゃない?Kと瞳★ロゼリエッタを知ることがプロの演劇への登竜門だからなあ」

ジョンさんがやれやれと言った口調で呟く。

「ガイさんと、ぬーさんと、ジョンさんは本当にKなんですか?」

京子さんが問うと、ガイ、ぬー、ジョンは声を合わせて言った。

「「「Kだよ」」」

三人はチャリで来たポーズをキメる。

本当にこいつらはなんなんだ…

新一年はKが分からないのでただただ混乱している。

「あたしは、もうアニメも関連書籍読破したからあと聖書だけだよ、新1年にみっちりKを仕込んであげる」

京子さんが堂々と宣言する。

佐紀さんと楓さんが頷きあったあと1年に告げる。

「私達も聖書まで行ってないけど、Kだからさ、なんでも聞いて」

「俺とヨッシーは聖書に行く寸前だからなんでも聞いてくれな」

「なんでも聞いていいぞぉ」

和幸とヨッシーはニッコリ笑って宣言した。

アンディと美咲と尊と礼司は慌てふためいてる。無理もない。急にKになるなんて不可能だ。一聖が柔らかな口調で4人に告げる。

「とりあえず4人はさ、アニメストアでKを観たらいいよ、あと大人気アニメK検索してみて」

「ありがとうございます、先輩!よく分かりませんが、Kになります…!」

美咲さんが力強く宣言する。

そこへ野田と本田龍が俺に泣きついてくる。

「颯太さん…俺達前回のK合宿でもKになれなかったのにどうしたらいいんですか…」

そこへ山中が喝を入れる。

「お前らは再びK合宿を受ける必要があるな、Kになれ」

二人は考え込むように下を向いた後、ゆっくり山中に向き合った。

「分かりました!たつのぶ研究をしながらなおかつKになります!俺プロの俳優になりたいです」

本田龍が力強く宣言した。

「俺ももっとKになります!粗相パワーがみなぎってます!」

野田の言葉に全員がスルーをきめた。

「K合宿は3日後だ、それぞれ精進するように」

山中がそれだけ言って部室を去る。

ジョンと、ぬーと、ガイも後を追うように部室を去っていった。

皆がKKKKと声をあげながらKへ向かっていく。

これはまた1年にとっては辛い合宿になりそうだ。


その日の夜、俺は小春にラインを入れた。

「K合宿またやるってさ、新入生は伏見アンディと山寺美咲と酒井尊、中村礼司っていうんだ」

返信はすぐ返ってきた。

「なにそれ!?めちゃくちゃKじゃん!羨ましいよ颯太…私もK合宿でKを新入生に布教したいのに…!」

「体の具合はどうだ?」

「うーん…まだちょっと起き上げるのしんどいかな…」

「そっか…Kはまだ観れない感じか」

「そうだね…柴犬の絵本読んで泣いてるところだよ」

「そっか…早くK観れるようになれたらいいな」

「ありがとう、颯太」

会話はここで終了。

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