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第百三十四話 約束

地獄合宿も終わり、いよいよ衣装合わせだ。この神秀高校は演劇に関して手厚いのでドレスも全て揃っている。…どんな高校なんだよここは。

俺の衣装はヨーロッパの王族をモチーフにした衣装らしい、よく分からないけれど。ミカエル、カエサル、カフェオレは俺より少ししょぼい衣装に着替えて、女性陣はきらびやかなドレスに着替えていた。

「ねーこんな格好出来るなんて嬉しいね!」

京子さんが、日高さん、櫛名さん、淡島さんと喜んでいる。

そしてカフェオレ役の三科が近づいてきてぽつりと漏らす。

「田畑先輩、マジでカッコいいっす、リスペクトっす」

ミカエル役のヨッシーも近づいてきた。

「颯太君の衣装似合ってるぞお」

そしてカエサル役の本田龍も「次こそ俺は完全なるたつのぶ目指してます!田畑先輩リスペクトしてます!!」

俺はなんとコメントしていいか分からないのでとりあえず「あー全員好きなようにやってみろよ、俺をリスペクトする必要もない」とコメントした。

三人がチャリで来たポーズをして声を揃えて言う。

「「「おう」」」

なんだったのか…今のやり取り…


そしてとうとう上演日、当日。

上演前は必ず全員で円陣を組み「謎のjungleファイト!!おー!!」などと掛け声をかけている。

前の公演もその前の公演も、これが暑苦しくて仕方なかった。

ただ、前とは違う高揚感。小春に会えるから。


そして上演が始まった。一日目、二日目、そして大千秋楽の日、小春は見にきていた。俺は思わず小春を凝視しそうになり慌てて目の前のフランソワに向き合った。

千秋楽が終わり、階段にずらりと並んで客と挨拶する。小春はゆっくりと階段を上がってきた。

みんなが小春ー!小春先輩!!と群がる中、俺は無理やり小春の手を引っ張って地下から地上へと走り出した。

「小春、俺の演技どうだった?」

「すごいよ!颯太!感動したよ!!」

「具合はどうなんだ?」

「んー…まだ治らなくて布団の中で寝てる時が多いかな…」

と言ったあと、私も舞台に立ちたいと小春は漏らした。

「大丈夫だよ、今は体を休めて、それから一緒に舞台に立とう」

「約束ね!」

「うん、約束」

指切りをして俺は小春と別れた。


*


その日の夜、俺は久々にアニメの美味しんだもんを見ていた。なぜこのアニメに惹かれているのか分からないけれど、プロの料理人が美味しそうに食べている様子に腹の奥がぎゅっとくるからだ。小春の手料理と一緒に食べたご飯をまた食べたい。ヤケクソの焼きそばに、BBQの肉、ドデカハンバーグ…そしてたこ焼き。あの日小春の作ったご飯を初めて食べたたこやき記念日だ。

見ているアニメや映画はその人の、今の気持ちを表してるような気がする。小春は今なんのアニメを見ているんだろう。

ラインで聞いてみた。

「小春、起きてるか?なにかアニメか漫画でも観ているのか?」

「うん、あのね…鬼灯の冷たさ見てるよ」

「なんでそれなの?」

「うんなんかねーOPに惹かれちゃってさ、じーごじーごこの世は地獄だよ~♪って歌ってるからさ」

そうか…彼女にとってこの世界は地獄になってしまったみたいだ。…昔の俺みたいに。

「…俺はまた美味しんだもん見てるよ」

「颯太、それ大好きだよね~あと吸血鬼はすぐ死もハマってるよ~何回死んでも復活するもんウケるよー」

「そうか…少しでも元気になる漫画があってよかった」

「うん!ありがと颯太!またジムに行けるように頑張るよ」

会話は終了。本当はもっと話していたかった。

俺は寝転がったあと、再び美味しんだもんを見る。美味しいもの食べたいよな。自分で作った高級料理より、小春が作った料理が食べたい。

暇だったからポップってピピのラインスタンプを取った。この漫画は本当に粗相だ。でも面白い。アニメにもなってるから小春が元気になったら一緒に観たい。

美味しんだもんの次は笑うっっせえまんを見ていた。この怪しげな男がドーンと指さして結果はバッドエンドになるこの話は無性に見たくなる。


*


外はそろそろ明るくなってきてまだまだ肌寒いが春が近づいているのかもしれない。ぼーっと教室の窓を眺めていると一聖が前の席に腰かけて話しかけてきた。

「颯太君、また家に行ってもいいか、野田さんと達也も一緒にさ!」

「…ああ、いいぜ…今度はアニメでも観るか?」

「いいねー!見よう見よう!!」

達也と野田を連れてきて、いつ見るか打ち合わせする。みなバイトなどもしているから忙しいらしい。しょうがないから、こいつらとポップテピピでも観るか…

「じゃあ、今度の土曜日な!」

一聖が笑顔で告げる。俺はひらひらと手を振るとそれそれが自分の席へと戻っていった。


当日。全員寒かったのかジャンパーを着て、家の前までやってきた。

「おっ邪魔しまーす、ああ、あったけー…さすが颯太氏の家」

と野田が呟く。みんなそれぞれがジャンパーを脱ぎ、テレビの前で陣取った。なんだかこの光景は溜まり場みたいだ。それぞれ自分の家には家族が居て呼びづらいから俺の家が一番都合がいいらしい。

「じゃあ、これ見るか」

ポップテのピピのお粗末なアニメ…OPはなかなか神がかっている。テレビをぶっ壊して、ポプとピピみが洗濯されたり、チューブから出され、いろんな民族衣装をきて回るOP。たけしょぼうがこんなに憎まれてる理由がよく分からない。みんながゲラゲラ笑って見ている、おやつにはポテチ、コーラなどを持ってきていてそれらを好きな時間に食べて、アニメを見る。男と過ごすのってこんな感じなんだな。

「あーやっぱりポップってピピは面白いな」一聖が笑う。

「次は何を見るか颯太氏よ」

「そうだな…内山はなにがいいと思う?」

「達也でいいよ、…そうだな儀明日かなやっぱり」

「儀明日!!?見た事ないわ俺!!」

一聖がワクワクした顔で画面に見入る。

儀明日は神アニメだ。儀明日という絶対服従の力を手に入れた主人公が妹が平和な世界で暮らせるよう闘い続けるアニメだ。ようは極度ともいえるシスコンアニメともいえる。

「やべーっルルーシュウかっけー」

「さすが達也氏、面白いアニメを見極める力がある」

俺は前に観た事あるから2週目だ。でも何度見ても面白い。時間があれば何度でも観たい。小春と観たい。元気になった彼女はどういう反応をしてみるんだろう。

「次はこれな…」

達也がリモコンを操作する。

まさかこれは…

「最古パスは神」と言い放つ。

野田と一聖はびっくりして声もでないようだ。俺はもちろん観ているからまた2週目だ。

しかし達也は何者なのだろうか。小春にKを教えたり、神曲を教えたり、読むべき小説を教えたり一体何者なのか。

「あーそれよりも、Kを観たほうがいいかもなKを観るぞ」

「達也君、すごすぎて俺ついてけねーよぉ」

一聖が泣きごとを言っている。一聖は神アニメを見極める力がないからだ。野田も同様、百合のことばかり考えているからKを知らない。

一通りKを見せると、一聖と野田は呆然としていた。しょうがない、Kは神アニメだからな。

とりあえず、一期を見せる、野田と一聖は呆然と画面に見入る。達也と俺は当然観てるから無我の境地。そして一聖と野田が観終わって呟いた。

「Kってすごいアニメだったんだな…」

「早く二期が観たいぞ颯太氏」

「いや、次は劇場版だ、そして二期からROKに入る」

二人は愕然とする…

「そんな…履修できない…勉強も演劇もあるのに…」

一聖が悔しそうな顔を見せる。達也が一聖の肩をポンポンと叩く。

「颯太の家で観ればいい、継続はほんま力になっぞ」

「「おう」」

そして今日は劇場版まで観て一日が終わった。

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