第百二十九話 他人と関わる
三学期がやってきた、実力テストはもちろん満点。
なんで冬期講習受けてるやついるんだろう。バカばかりだな。受験なんて高3から本気を出せば十分間に合うのに、小春も多分同じことを言うだろう。1限目終了後、一聖と達也と和幸と野田が近づいてきた。
「なあ、春ちゃん冬休みどうしてたか?」
大野和幸が心配そうに問う。
「…あいつは、寝てたよずっと…」
「そうなんか…」
次は一聖が恐る恐る尋ねてきた。
「なあ、田畑君、次の日曜日、暇してないか?」
「…え、暇だけど」
「じゃあ、俺達と一緒にスマート的ブラウスでもプレイしないか?」
「田畑氏がゲームが得意だと小春氏から聞いていたから、一度手合わせ願いたかったんだ」
そう言って野田が笑う。
「悪いけど俺めっちゃ強いから」達也は自信満々の声でそう告げた。
「……いいよ、じゃあ日曜、俺の家来いよ…」
小春以外を家に入れるのには抵抗があったが、俺は誘いに乗ってしまうぐらい病んでいた。
「やったー!一度田畑君と遊んでみたかったんだ!!」
一聖の喜びに満ちた声。どうしてこんな陰キャの俺と遊びたいのか訳が分からない。
「住所は小春の家の近くのマンション、105号室だから。午後1時からでもいいか?」
「いいよ!遊ぼうぜ!」
何故だろう、胸の奥がドキドキしていた。任天堂スイッチィ売ったからまた買いなおさないといけないなと考えていた。
当日。任天堂スィッチィを買いなおして、メンバーが集まった。それぞれが任天堂スィッチィを持ってきていた。ここに小春以外を呼んだのは初めてだな、とぼんやり思う。
まずは和幸と対戦だ。
彼はピカチュウ兎を選んできたので俺は見えん見えんを選択。
いざ勝負…
ルールは簡単、押し出した方が勝ちだ。
しかし驚いたのは和幸はゲームがめちゃくちゃ上手い。あと少しで押し出されるところだった。
「負けたわ、…田畑君めちゃゲーム強いのな」
「まあな…一人でやってる年数長いしから無駄に強いだけだよ」
次は俺俺!!と一聖が手をあげる。
一聖はやはりSSランクのジョーカーを選んだ。さすが、ババ抜きでジョーカーを引きまくるだけのことはある。俺は逆にピカ兎を選んだ。
一聖のレベルははっきり言ってお粗末だった。1分で押し出してしまうほど雑魚だ。
「田畑君強すぎるわ…」
いやそれはお前が雑魚すぎるからだろ、と和幸が呟いた。そして次は野田、彼はdonkeyコングを選んできた。俺はカービィにしておいた。結果はもちろん俺の圧勝。
「田畑氏…師匠と呼ばせてもらって構わないか…」
それは…お断りしたい。最後は達也…こいつはやばい、負けるかもしれない。
こいつはワリーオを選んできたのですかさず俺はゼロ/sumを選んだ。
ゲームは一番白熱した。やばい、これは負ける、押し出される、結果勝利したのは達也だった。
「…なあ内山、お前は何が神ゲーだと思うんだ?」
すかさず俺は達也に聞いてしまった。
「え…タクティクス王ガに決まってるだろ…」
俺と同じゲームだ…
ゲームに熱中していたら、あっという間に夕方になった。
「じゃな、田畑君、また遊ぼうな」
「…ああ、また」
その夜小春にラインを入れた。
「和幸と一聖と達也と野田とゲームで遊んだ」
とだけ。すぐにラインの返信が返ってきた。
「嬉しい、颯太!友達出来たんだね!」
と返された。あいつらは暇だったから呼んだだけだし友人ではない。ただの気まぐれだ。でも、どうしてか、分からないけれど、俺の胸はいまだに高揚していた。
*
今日も授業を終えて、暇を持て余していた。そんな時にパリピの幸助とギャルの順子が現れた。前に演劇部で少しだけ関わっただけのやつらだ。俺は見ないふりをして帰ろうと思ってたけど、すぐさま引き留められる。
「頼む!!俺に勉強を教えてくれ…!」
「嫌だよ、自分でドリルでもやってろよ」
「ドリルをやってるんだが意味が一つも分からないんだ、このままだと留年してしまう…」と泣きつかれた。
「そこ座れよ」
「え……」
「30分だけなら教えてやる、なにが分からないんだよ」
「田畑君ーまじイケメン!!幸助見習えよ!!」
順子のカバンが幸助の頭部に直撃している。こいつらはこいつらでいい関係みたいだ。
「あのな、数学のここが分からないんだ…」
そう言って、幸助が泣きついてくる。
「そこは因数分解と展開の違い。2乗・3乗の公式を使えばすぐわかるだろ」
「…つまりどういうことだってばよ…」
本当に幸助は頭が悪い。
「つまりx2−4x−5 の形を見たときに足したら a+b=−4、かけたら ab=−5 となるだろ、 a,b の組み合わせを考えてみろよ」
「なるほどね、とりまこれで解いてみるわ!まず公式を覚えるところからだな!ありがとう!!」
なんだか、どっと疲れた。やっぱり他人と関わるのは疲れる。でも、なんでだろうか不思議と気持ちが軽い。小春の事ばかり心配してたけど、あいつならきっと乗り越えられるんじゃないかとさえ思えてくる。それまで、本当は嫌だけど他人と関わってみようかと思うようになった。




