第百十四話 海の見えるカフェ
その日はよく晴れた日だった。
学校がない休日はなぜか薬がいらない、いつ起きても大丈夫だから。
プレッシャーがなくていい。
やっぱり薬抜きで寝たほうが解放感あるなあ、よく寝た。
颯太とバス停で待ち合わせする。
私はお母さんに買ってもらった花柄のワンピースにカーディガン。
颯太は白いTシャツに黒いカーディガンとジーンズと、また丸い輪っかみたいなネックレスを付けている。
いつも思うけどこの輪っか何の意味があるのか…
「行くか、そのチヂディオ?とやらに」
「うん、行こう行こうー!」
バスはチヂディオの近くに向かう。
「ねえ、海が見えるきれいなカフェってどんな場所だろうね」
「きっと気持ちいい所だと思うよ」
バスで近場に降ろしてもらって雑談しながら歩いてるとチヂディオに到着。
海が見える、気持ちいい場所。
お店は白で塗りつぶしたきれいな外観。
ドアを押すと、カランカランとここち良い音がする。
部屋の中もおしゃれでいい雰囲気だ。
「いらっしゃいませ?お二人様ですか?」
「はい」
店の中はすでに人でたくさん埋まっていた。
人気店みたいだ。
指定された席に座る、ちょうど海が見える素晴らしい位置。
「颯太何食べるー?私これにする」
メニュー表を颯太に提示する。
Bランチ➕マルゲリータピザ
◎本日のスープ
カボチャスープ
◎お任せオードブルサラダ
「…じゃあ俺もそれで」
待ち時間がなかなか長い…
「颯太、私休日だとよく眠れるわ」
「それならよかった」
「きれいな場所だねーあとで浜辺散歩しよう!」
「そうだな…」
ぽつぽつ雑談してると、あっという間にランチ登場。
「お待たせしました、Bランチになります」
店員さんが去って行ったあと、私は写真を撮りまくる。
ついでにこっそり颯太の写真も。
まずはピザから、…これはおいしい!
もぐもぐと一生懸命に食べていたらあっという間に完食してしまった。
颯太を見る。
「ねえ、颯太おいしい?」
「おいしいよ」
「良かった」
「何が?」
「前はずっと給食もまずそうに食べてたから」
「そんな前のこと覚えてもないけど」
「そんな、印象的過ぎて忘れられないよー」
颯太も食べ終わったところで店をでた。
秋風が涼しい。
「気持ちいいねー颯太」
「ああ、そうだな」
浜辺には、丸太みたいな椅子があるけどとっておきのワンピースだから汚したくなくて座れない。
すると颯太は黒いカーディガンを脱いで、ここに座れと言ってくれた。
「ありがとう颯太」
「…ん」
海を眺めながら、ぼんやりとしている。
「人ってさ海から出来るみたいだよ、なんだか不思議だよね…」
「そうだな…」
手を握られた。
え…どうしたの颯太…
「……俺と、付き合ってください」
「え…どういうこと」
颯太がイライラした風にチッと舌打ちした。
「言葉の通りだよ、好きだから、俺と付き合えって」
「わっわわ、ちょ、ちょっと待って!そんな堪忍しておくれやす!」
「なんでそんな慌てるんだよ、誰かと付き合ったことぐらいあるんだろどうせ」
「ないないー好かれてるな、とは感じるけど面と向かって言われたことないんどす」
「…マジで?」
「マジだよ」
見る目の無いバカばっかりだな、と颯太は呆れている。
「で、返事は…」
「えーと…その、はい…」
「ハイじゃなくて付き合う?」
「付き合う…?」
「なんで疑問形なんだよ」
「ごめん」
「俺と付き合って」
「はい」
どうしよう、友達や高校の仲間の言葉がよぎる。
これが大人になるってやつか…!おら分かったぞ!
*
次の日、日曜日。さっそくみなとさきちゃんとゆうちゃんを溜まり場に集めた。
みんなにお茶を出していざ告白…!
「ねえ、みんな…うち颯太に付き合おうって言われてしまった」
みんなぽかんとした顔をした後爆笑した。
「やっと言われたんかーめでたいなぁ立花ァ」
とゆうちゃんがからかってくる。
「春ちゃんおめでとう~その日は近いと思ってたよ」
みなも笑う。
「コンドーム余ってるけど春ちゃんいる?」
…さきちゃんまで。
「うち調べたんやけど、コンドームつけても妊娠確率あるから二十歳までは絶対に処女守りとおすわ」
みんながまた爆笑する。相談に乗ってほしいんだけどな…
「ねえ颯太の家、行かん方がいいかな…セックスされそう」
「大丈夫、すればいいちゃオールオッケーやわ」
さきちゃんにはもう何も聞かないことにしよう。
「みなは…しないよね?二十歳まで一緒に守り通そう」
「うーんこればっかりは分からんな、ごめんよ春ちゃん」
そんな…ゆうちゃんは…
「私もう高専で彼氏出来たから高校のうちにすると思うわあばよ立花ァ」
もう誰も彼もがセックス三昧。
この世はセックスで出来ている。
「せ、セックスより大切なことだってあると思う…!手を繋いだり一緒に星空見上げたりとかさ、そういうの大事にしたい今は」
「春ちゃんめっちゃピュアなんやね…」
みながしみじみと言う。
話題は高校での近況になる。そしてこの話題は適当に流されていってしまった。
*
次の日。学校だったのでまた睡眠薬を飲んできたのでよく寝た。
もう席についていた颯太が機嫌がよさそうにおはようと言ってくる。
「おはよう、…颯太」
「なに?警戒してんの」
「いや、恥ずかしいからさ、部活では内緒にしない?」
「別にどっちでもいいけど」
…どうしよう佐紀ちゃんと楓とか、謎のjungle同期内には言うべきか…
いや先輩方にも言っとくべきか…マチさんも教えてねって言ってたし…




