第百十話 いよいよ公演…!
翌日。ようやく地獄の合宿が終わった。
「ねえー颯太」
今日も今日とて私は颯太の部屋にいる。
ロフトの上が私専用の溜まり場だ。颯太も悪い気はしてないみたいだから、まあ、いいか★
「今度の舞台終わったら、サファリ的なパーク行かない?」
「え…またあのしょぼいやつ?」
「違うよー小学校の頃行ったきりだけど、いろんな動物いっぱいいて楽しいよ」
そういえば、前動物園不快だから行かないって言われたっけ…
「行く」
即答だった。
「え、本当に!?前に動物は檻に囚われた置物って言ってたくせに!」
「…よく覚えてるなそんなこと」
「だからー私言われたこと一つ一つ忘れないんだって!」
「小春、まじで頭いいのな…」
「ドヤァ、さすがでしょ」
「サファリ的なパーク楽しみだな」
「うん、動いてる動物すっごく可愛いよ、行こうー!」
*
しかしバリキャリの意味が分からない。
ネットでググるとプライベートより仕事を優先する女性のことらしい。
そんな…プライベートの方が1億倍重要だよ…
とりあえずお母さん一押しのロン化けをDVDで借りて見た。
日本一カッコいい男がピアノを弾いてる。
そして物語が終盤を迎え思わず泣いてしまった。
これは名作だ。
あと東京LOVEな物語も良し。
お母さんの格好もそういえばバリキャリみを感じるな…
「お母さんーあとおすすめのバリキャリ物語教えてー」
「そうだねーあと明日なろ白書とか100回越えのプロポーズかな…」
100回もプロポーズされるなんてどんな話なんか気になりすぎる。
あとは、ググってみた。
男女6人サマー物語
愛しあってんのかい!?
男女8人autumnストーリー
抱きしめていいかい
すてきかな?片想い
世界で一番きみがすきなんだよ
LOVEという名のもとに
同級生☆
スッピンのままで
ずっーと貴方が好き
ひとつ屋根裏部屋
君の目に恋してる!
学校へ行きたくねえ!
君の瞳をタイホする!
駄目たくさんありすぎる…
やっぱロン化けだけにしとくか…
「そういえば、最近お母さん韓流ドラマにもハマってるよね!おすすめは?」
「冬の其方、ちゃんぐむが誓う、ソ丼よ、とっっけびってところかな」
なるほど…黄色さんも推してたとっっけび、探偵きくらげ日々…しかし観てる時間がない…
*
部活は、多忙を極めていた。
最後の佐紀ちゃんの駄目だしだ。
「アンナちゃんもっと最後は意味深な感じで笑みを浮かべて!」
「す、すみません、小野さん」
「小池君はもう少したつのぶみが足りてない!」
「すみません!!小野さん!時間がなくて瞳★ロゼリエッタまだ熟読出来てませんでした!」
「白川ちゃんは大分よくなってきたね…!バリキャリになってるよ!」
「ありがとう…!佐紀ちゃん」
良かった…バリキャリを履修した成果はあった!
「榊君は台詞は完璧だから、白川ちゃんばかりみちゃ駄目だよ」
「すみません小野さん」
「神崎ちゃんはようやくRIDAの総長から抜けてきたね…おっちょこちょいの神崎が出てきていいいよ…!」
「ありがとうございます!」
「ヨッシーは、ここの台詞をもう1回読んでてみて」
「はい!おい、ちょっ…まっ! えーっと唯一国内だし三番?」
「そこはね、人の話を聞け、今どこに、お前まだ近くに居るんだなって切迫感を持たせて!」
「分かったよ佐紀ちゃん」
「新井君は、伊賀仁感で出てきたね、いい感じ…!」
「ありがとうございます小野さん…!」
そして
最終場当たりも終わり、いよいよ公演が始まる…!
舞監は京子ちゃん、小道具衣装は楓、私と颯太は一聖君指示のもと照明を吊りまくる。
制作はよっしーだ。
衣装はほぼみんな私服だけど、編集者の人たちはスーツを親に借りて着る。
颯太はもってなかったので一聖くんに借りたらしい。
音響操作はツッチーさん、照明操作は村田先輩が担当してくれるらしい。
台詞が多いキャラだから、心配になって眠れない。
颯太にLINEした。
「どうしよう、眠れない…」
「横になって目を閉じてろ、大丈夫だから。眠くなったら授業寝てろ、俺がなんとかごまかしてやるから」
「ありがとう颯太」
「ああ、おやすみ小春」
「おやすみ颯太」
*
翌朝。
やっぱり眠れなかったので数学の山中先生から喝を入れられる。
「ご、ごめんなさい…先生、演劇のことで頭がいっぱいで眠れませんでした…
「それは、甘えというやつだ、今は数学と向きあえ」
クラスのみんなにドッと笑われる。
なんで昨日の夜は眠れなくて今日は寝てしまうんだろう。
普通に眠れる演劇部のみんながうらやましい…
颯太がチッと舌打ちした。
そしていよいよ小説家は憂鬱であるの上演が始まる。
どうしよう、ドキドキする。
相方の榊は颯太だ、大丈夫だ。
颯太と会話すればいいんだ。
大丈夫、
私になら出来る…!
お母さんにもっと胸をはれ、猫背は駄目だと言われているし、胸を張って舞台上に立った。
公演は3日。
どの日も舞台は大成功!
大千秋楽にはまたみなとさきちゃんとゆうちゃんを呼んだ。
「春ちゃん!こんなすごい役よくできたね…感動したよ!!」
ありがとう、みな。
「立花ぁ…なんか疲れてるみたいだけど大丈夫?」
ゆうちゃん、気づいてくれたんだね。3徹だよ、私。
「春ちゃん、大丈夫?死にかけてない?」
さきちゃんもありがとう。早く家に帰って爆睡したいよ…




