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第十一話 絆

楽しい一日が終わり、また開けても暮れても部活動に忙しい。

廊下で茹りそうになりながらフルートを吹く。

タオルで何回拭いてもよだれのような水滴が湧き出る。

フルートを持つ手も汗だくで汚い、一度水に漬けて洗えないのかなこれ…。


「暑いよー美紀ちゃん…吹奏楽部早く辞めたい…」

「私も辞めたいよ…もう少しの辛抱…そろそろ本格的にマーチングの練習始まるね…」


ああ、とうとう地獄の日々が始まるのか…。



私達は重い楽器をみんなで力を合わせて、体育館へ運ぶ。

チューバやパーカッションの人は死んだ目をしている。



荻田先生の言う通り、曲を弾きながら、移動する。

少しでも点線から外れてたら、アウト。


「立花、位置もう少し前、どんくさい動きするな!」


と体育館の上から怒られてしまう。

みんな位置は夏休み前半の予習で見につけてしまったみたいだ。

私勉強はできるみたいだけど、こういう動きとか体育は本当無理。

運動という概念がこの世から消えてほしい。




一通り練習を終えて小休憩。


美紀ちゃんとため息をつく。

「大丈夫?小春ちゃん、マーチングほんま苦手なんだね」

「うん…私動きながら吹くなんて無理…吹くふりしてていいかな、ピューと吹くあれみたいな状態で、パーカッションの人とかトロンボーンの人とぶつかりそうでめっちゃ怖い」

「分かるよ…フルートはまだ身軽でよかったよね、ただ横に長いから人にぶつけないように進まなきゃいけないけどね」


少しの休憩の後、また練習が再開される。


「立花、そこ、歩幅はずれてる!」


また私のミスだ。申し訳なさそうにみんなを見つめるとみんなが苦笑いしながら、私を見つめてきた。


*


宿題は全部終わらせた。

マーチングはなんとか動けるようにはなったけど、まだまだ全然練習不足だ。

明日からまた学校と部活かー面倒くさいな。

もともと私は寝起きがめちゃくちゃ悪い。

いつも親に起こしてもらってるのに不機嫌そうに眼を覚ます。

そして実をいうと修学旅行のお泊りでは全然眠れなかった。

私の唯一の欠点。



…なぜか私は昔から、人と一緒の空間で眠ることができないタイプなのだ。



それがなんでなのか自分でも分からないけど。

気配やいびきが聞こえるだけで目がぎんぎんに冴えて次の日はふらふらになる。

もし将来好きな人ができて、一緒に眠れないなんて悲しすぎる。

どうか将来大人になったらぐっすり眠れるタイプにしてくださいと神に祈るしかできない。


まあでもまだまだ先の話だしなんとかなる!


教科書やノート、宿題の類をすべて鞄に入れて眠りについた。

明日の朝起きるのだるいな…と思いながら。


翌朝。

「春ちゃーん、時間よー」

お母さんの大きな声に不機嫌そうに返事をしながら、階段を降りる。


9月が始まる。

9月中旬ごろに体育祭が始まってようやくマーチングから解放される。

嬉しすぎる…ようやく高校受験の勉強に集中できる。


学校到着。

「はるちゃん久しぶりー!」

「はよっ春ちゃん!」

「おはよー!みんな夏休みどうだったよ」

みんなが夏休み何してたか聞いて笑いあう。

ふと異変を感じる。



颯太がいない。


*


今日は授業も部活もまったく身に入らなかった…。

颯太は多分風邪をひいて一人きりなんだと思うと居ても立ってもいられない。

早智子ちゃんに一緒に帰ろうと誘われた声を断って颯太のもとに急いでチャリを漕ぐ。

途中コンビニでレトルトのおかゆとゼリーと、アクエリアスを買った。


合鍵使っていいなら、もうチャイム押さなくていいよね…


ガチャリと音を立てると、ガタガタと音を立てて、颯太が出てくる。


「こはる…なにして」

「看病に来たよ、颯太」

「ただの風邪だってのに…」


ずかずかと部屋の中まで入る。

大量のティッシュくずと熱さまシートしかない。


「ご飯食べた?」

「いや…外出る力なくて、寝てれば治るから…」

「そんなんじゃ治るものも治らないよ」


まずはマンションの換気。思い切り窓を開けた。

トイレの掃除、お風呂掃除。

颯太が呆然と立ち尽くす中、黙々と作業を終えた。


「そこ、立ってないで、寝てて」


颯太が慌てて布団にもぐった。


お母さんが風邪の時よく作ってくれたお粥。

それの作り方が分からなかったから、狭い台所からお粥を袋から出して電子レンジでチン。

ロフトの下から聞いた。


「薬は飲んだの?熱は何度?」

「…飲んだ、多分38度ぐらい」

「結構あるね…食欲は?」

「少しは…」

「今そっちにお粥持ってくから待ってて」


お粥とアクエリアスをロフトの上に持って行って颯太に渡す。

渡した後下に降りて今日は帰ろうかと思ったら引き留められた。


「…まだ、ここに居てほしい」

「……さみしいの?」

「いや、違う」

「うっそだあー風邪ひいてるときって寂しいもんだよ、私お母さんにいつもそこに居てって言ってるよ」

「そっか…俺、」

ん?どうしたんだろう?

「お母さんが欲しかったのかもしれない」


そっか…颯太は今までずっと母親からの愛に飢えてたんだね…。

「じゃあ、今日から私、颯太のお母さん代わりになる!なんでも言って」

「いや…それはいい」

「え…?」

「こはるとは、ごほっ…血が、つながってないから…」


確かにそうだよね…他人だからお母さんの真似をして一緒によりそってあげえることしかできない…。


「違う関係にならなれると思うけど…」

「違う関係?お世話係??」

「……ちげーよ、バカ小春」


初めてバカって言われた。なんかムカつく。

「バカなのは颯太のほうだよ、一人きりでいないで、ラインでもなんでもして、私に頼ってよ」

「……前から思ってたんだけど」

「…ん?」

「なんで小春はそこまで他人に寄り添えるの?友達も所詮は他人だろ?」

「違うよ…大事な人だよ、確かに他人だけど、関わるうちにね、絆が生まれるの難しいかな?」

「絆なんてまがい物じゃねーの、結局は自分が一番大切なんだろ、そんな関係いらない」

「じゃあ、友達になろう颯太」


颯太が呆然としている。

え…また私間違えた…。


「なるほどね…友達から、か」

「どうかな?」

「いいよ、友達から始めようぜ」

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