21 一文字家
もう止まりません。
放課後 いつもの5人での下校だ。
壱はなんとしても 他の4人から宇宙を引き離し
2人で自宅に帰る必要があった。
最大の難関は 宇宙の家の隣に住む莉奈だ。
他の2人は途中で別れる事になるが 莉奈だけは最後まで宇宙と一緒に帰る事になる。
まずは 奈央と亜衣と別れた後からが勝負だと 壱は考えていた。 しかし。。。。
「壱の家に 大江戸ホテルのミルクレープがいっぱいあるらしいから 今日はみんなで壱の家に寄って行こう」
!!!!!
「ほんと〜! 僕 あのミルクレープ大好きなんだ〜」
「まぁ 行ってあげてもいいわよ」
「やったぁ〜」
宇宙の一言で 壱の計画は脆くも崩れた。。
まっまぁいいわ。。
壱は作戦Bに切り替えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
5人は壱の家の門までついた。
壱の家は まさに豪邸。
例えるなら戦国時代の城だ。
純和風の門は普段は閉じられており 一文字家以外の屋敷の使用人は横にある小さな扉から出入りしている。
幼馴染の4人はいつもはその小さな扉から壱の家に入っていたが 何故かこの日は 大きな正門が開いた。
ギィィ
扉を開いたのは 筆頭にあたる使用人 服部であった。
4人は 服部と面識があり会釈をして正門から中に入った。
服部は今日に限って まるで品定めするように4人を見ていた。
母屋は 門から更に数十メートル先にあり
玄関の前には十数人の使用人が並んでいた。
「? 何かあったのか?」
4人は普段とは、違う物々しさに身構えた。
すると奥から着物を着た割腹の良い男が現れた。
壱の父親であり 一文字財閥の現当主の一文字半である。
「4人共 久しいな。
今日は壱の晴れの舞台となる 大切な日だ。
ゆっくりしていってくれ」
晴れの舞台?
4人は何の事か分からないが
嫌な予感がしてならなかった。
「壱 どういう事?」
亜衣の質問に 壱は答えず上を向いて口笛を吹いて誤魔化していた。
しかも 口笛はアニソンだ。。
怪しすぎる。
4人の顔色は曇った。
その後 広大な広さの座敷に通された4人は
言葉を失った。
「なんだこの豪華な料理は?」
そこには 大名の家の正月を祝うような
豪華な料理が大量に出されていた。
「何かの祝い?」
亜衣が呟いた。
相変わらず壱はアニソンの口笛を吹いている。
その時 十二単衣のような衣装を纏った 壱の母親
一文字千と 妹の一文字百が現れた。
4人は余りの事態に 口をあけたまま固まった。
「百!どういう事?」
亜衣が百に話しかけた。
亜衣は百とは昔から仲が良いので 真っ先に百に問いかけたのだ。
「?? お兄ちゃんの 結納式に決まってるでしょ?」
時は止まった。。
一文字家の暴走は止まりませんが 時は止まりました。